花木の名
春だ。
ご近所のスーパーも春爛漫。
ひな祭りを前に桃の花がたくさん並んでいました。
いつものスーパーが春色に染まっている。

愛らしいピンクの桃の花。
POPには品種名も書かれていました。

「あけぼの」。
清少納言さんも喜びそうな素敵な響き。
ほかにも雅なお名前を持つ花桃がいっぱい。

「ハヤトガワ」に

「おとめがわ」。
どれも春の景色が浮かぶような品種名ですね。
花や木の名前にはそれぞれの物語があり、歴史がある。
沖縄にあるあのガジュマルにも名前があった。
「二-バンガズィマール」。
太平洋戦争末期の伊江島を舞台にした描いた映画を観ました。
「木の上の軍隊」。
終戦を知らずにガジュマルの木の上で2年間生き抜いた二人の兵士の実話を描いた映画で
その木は「ニーバンガズィマール」と呼ばれ、今も現存、台風で一度倒木しましたが、
土を入れ替え、支柱を強化し再建、今も戦争の歴史の象徴として語り継がれています。
「ニーバン」は木がある屋敷の屋号、「ガズィマール」はガジュマルという意味です。
沖縄戦末期の伊江島で終戦を知らぬまま、木の上で2年間生き抜いた二人に日本兵の実話は
井上ひさし原案の舞台劇として2013年に初演、2025年に映画化されました。
本州出身の厳格な少尉を堤真一、伊江島出身の純朴な新兵を山田祐貴が演じ、
戦争観や生存本能、それぞれの価値観がぶつかり合う二人の演技は壮絶で圧倒的でした。
1945年沖縄伊江島。
「あの日、俺たちはこの島に残された2人だけの軍隊だった」
広い平地があるために日本軍が重要拠点となる飛行場を建設した伊江島に米軍が侵攻、
激しい攻防戦の末に島は壊滅的な状況になり、2人の兵士がガジュマルの樹上に追い詰められました。
伊江島は沖縄戦の縮図と言われます。
1945年4月に米軍上陸、わずか6日間で島民の半数となる1500人と含む4700人以上が犠牲となり、
軍民一体となった激しい攻防、住民の集団自決、飛行場をめぐる攻防戦など
沖縄戦の悲劇的な要素が凝縮された島なのです。
昼間は樹上で息を潜め、夜は食料を探して彷徨う2人。
援軍が来るまで耐えるという上官に島出身の新兵も従っていましたが、樹上生活が長期化。
終戦を知らぬ2人は島に廃棄された米軍のゴミを漁り、飢えをしのぎます。
ある日、新兵はその米軍のゴミの中に、ある物を見つけます。
それは沖縄独特の大きな位牌。
亡くなった家族の名前が並んで記された位牌は沖縄の人にとって何より大切なもの。
彼ははじめて上官に逆らいます。
「なんで、なんで、この島だったんですか!」
島で生まれ、育ち、戦が始まり、兵士にされ、家族を失い、家を失い、帰る場所も失った。
なんで、この島だったんだ、なんで、この島で戦争になったんだ。
彼の叫びは、伊江島の叫びだった。
伊江島の風景が蘇る。
帽子を被せたような城山以外は平らな伊江島。
初夏にはユリが咲き誇る美しい島はのどかな農村風景が広がりますが、
沖縄戦の激しい銃弾や砲弾の痕がそのまま残る「公益質屋跡」などの戦争遺跡が残ります。
傷ついたコンクリートの建物を前に言葉を失ったことを覚えています。
映画のロケ中、木を植え替える作業をしていた時に、
沖縄戦で亡くなったと思われる人たちのご遺骨が約20人分見つかったそうです。
伊江島は、戦争の現場だった。
「木の上の軍隊」は今につながる物語だと思った。
花や木に名前がある。
美しい花桃の名前。
人間よりずっとずっと長く生きているガジュマルの名前。
二-バンガズィマールに会いたくなった。

