綿と人と

冬の嵐がようやく去ったようです。
等圧線がぐるぐる巻きになった低気圧に伴う前線が通りすぎ、
大荒れの雪、風、吹雪が収まり、
今朝の札幌はブルーグレーの冬の曇り空が広がっています。


特に大荒れだったオホーツク地方や太平洋側では
いまだに停電が続いている地域もあるようで、
真冬の寒は厳しく、酪農も電気がないと搾乳もできません。
一刻も早い復旧を願うばかりです。

白い雪景色は見ている分には美しいものですが、
時に人の暮らしを直撃する怖さがあります。
ホワイトアウト、湿った雪による停電、物流の混乱、
これに地震などの災害が重なったらと思うと、日ごろの備えは本当に必要ですね。

そんな冬の日々、
通りかかったご近所の花屋さんの店先で思わず足を止めてしまいました。
雪・・・じゃない・・・
真っ白な幻想的なお花・・・?


雪のように白いふわふわ。
「コットンツリー」と名前が書かれていました。
コットン=綿、「コットンフラワー」とも呼ばれるアオイ科のワタという植物。
そうだった、ワタ=綿=コットンって、こういう風に実るのでしたね。

ワタは本来多年草ですが、果実を収穫するために栽培されているものの多くは一年草。
夏にフヨウやハイビスカスに似たクリーム色の花を咲かせ、
秋に熟した実が弾けた白い綿毛が「コットンフラワー」=「綿花」、
果実が花のように見えることから綿花と呼ばれるようになりました。
この綿花が木綿、コットンの材料となるのですね。

白い雪のようなふわふわしたヴィジュアルが切り花として人気となり、
特に秋冬のフラワーアレンジメントやウェデイング、インテリアにもよく使われています。
お洒落なカフェや素敵なホテル、バーのアレンジメントなどで見かけますよね。
熟した実がぽんと弾けた白い綿毛は人の心をほっと和ませてくれる魅力があります。

綿、綿花、木綿、日本ではワタにまつわる言葉がたくさんありますね。
ちなみに「真綿」は蚕の繭から作られる動物繊維で、植物繊維の綿花とは異なるため、
絹の「真綿」と区別するために「木綿(もめん)」と呼ばれているそうです。
そうか、そうだったか、確かに、植物繊維だから、木の綿で木綿なんだね~。

綿は人類にとって最も身近で最もよく使われている繊維です。
紀元前5800年ごろのメキシコの遺跡から綿の果実が発掘されており、
古代インド、エジプト、中国などで栽培され、コロンブスの新大陸発見とともにアメリカ大陸に伝来、
産業革命によって大規模栽培が始まり、大量生産されるようになりました。

白人の入植者が黒人奴隷を労働力として単一の商品作物を栽培する大農園、
プランテーションの代表的な作物がまさに綿花でありました。
アメリカの独立を支える産業となる一方で、人道的な問題をはらんだ綿花プランテーションは
映画「それでも夜は明ける」「風と共に去りぬ」ドラマ「アンテベラム」などで描かれ、
象徴的で印象的な場面として記憶に残っています。
真っ白なコットンフラワーを摘む作業は自由を奪われる労苦にほかならなかったのだ。

冬の花屋さんでみかけた雪のようなふわふわのコットンツリー。
美しさに見惚れると同時に、
綿花と人間の歴史をも考えさせる秋冬の花でありました。
綿と人と。