時と竹
初冬の青空がご機嫌だ。
この季節には珍しいくらい明るいブルーに白い黒。
11月最後の週末、この青空を眺めているだけで
何かいいことがあるような気がしてきます。

空に向かって背伸びするかのようなビル群は都市の象徴でもありますが、
まさか、あんな光景を画面越しに目にしようとは。
香港の高層マンションの大火災の映像には言葉を失いました。
真っ赤な炎が巨大な火柱となって天を衝く壮絶な大火災の要因は
築40年の建物の大規模修繕工事にあるとみられているようです。
竹で組まれた足場、防火基準を満たしていなかった防護ネット、火災報知器の不備などが指摘されています。
香港では伝統的な竹の足場は返還前に旅した時も街中でよく見かけたもので
旅人の目からは香港らしい風景だなぁとカメラを向けていたのですが、
まさか、火災につながる危険性が高いとはその時は意識していませんでした。
乾いた竹は油分を含んでいるため引火するととても燃えやすいのだそうです。
竹は日本文化にとっても大切な素材です。
香港のように建築の足場に使うことはありませんが、
工芸品や家具、民具など様々な用途で使われてきました。
なかでも関係が深いのが「茶の湯」の文化です。
先日のNHKスペシャル 新ジャポニズム第6集「茶の湯の求道者」では
千利休の時代から茶の湯の神髄を追い続ける職人集団「千家十職」を長期取材。
茶碗、棗、炉や表具など茶道具を数百年作り続ける営みを記録した番組の中で
「竹」も登場しました。
茶の湯の中で最も象徴的な素材のひとつが竹。
真っすぐに伸び、節を刻み、清らかで素朴な竹を千利休はこよなく愛し、
人の生き方や自然との調和を重ね合わせ、
茶杓や花入れ、柄尺といった茶道具の素材として用いました。
「千家十職」の一つである竹細工・柄杓師の黒田家は
室町時代から代々千家の茶道具を作ってきた名門で現在14代目黒田正玄氏が継いでいます。
その仕事は自ら竹林に分け入り、美しい竹を選ぶところから始まり、
選ばれた竹は炭火で燻され、水分を徹底的に抜く作業に入ります。
その場面を見ていて、驚きました。
炭火でじっくり燻された竹の表面からぶつぶつ、ぶつぶつ小さな泡が吹き出ています。
それこそが竹の油。吹き出してきた油を丁寧に表面に塗り広げ、天日にさらし、
数年もの間寝かせておくことで、竹林では10数年で朽ちてしまう竹は静かに呼吸を整え、
数百年という時を重ねる素材に生まれ変わるのだそうです。
竹を知り尽くした京都の伝統を担う職能集団の凄みを感じました。
一本一本の竹が持つ節、油分、硬さ、わずかな曲がり具合、どれ一つ同じものはなく、
竹の性格を読み取る黒田氏は「竹の声を聞く」と表現します。
その言葉には自然への敬意と畏怖を感じます。
竹には油がある。丁寧にその油をまとわせて、じっくりと何年も寝かせることで
竹は美しい茶道具に生まれ変わる。
時と竹。
自然との向き合い方を静かに教えてくれるようです。

竹も木も草も花も
その姿には
きっと意味があるんだね。
時と竹に、学ぶ。


