冬の用の美

お~、そうか、もうそんな季節になったのですね。
ご近所のお蕎麦屋さんの店先に
早くも歳末気分をかきたてる看板を発見。
何事も準備は早めがいいのかしら。


「年越しそば 受付中」。
まあね、今年も残すところひと月と半分になっていますものね。
そういえば、雑貨屋さんには早くも祝箸などお正月用品もお目見えしてました。
クリスマスの計画もまだぼんやりだったので、妙に焦る(笑)

11月の街中は着々と冬モードに向かっていますが、
すっかり雪景色になる前のこの時季ならではの美しい風景があります。
それは「冬囲い」。
樹木を雪の重みや寒さから守るためのやさしいお手入れすね。

竹や藁など自然素材を使って樹木の特性に合わせて行われる冬囲いには色々な種類があります。
松などの高い木の中心丈の支柱をさし、その先端から放射状に縄を張り巡らす「雪吊り」は、
和製クリスマスツリーみたい。金沢の兼六園の雪吊りは有名ですね。
竹を三角形に地面にさして中低木を守る「「三ツ又しぼり」もよく見かけます。

我が家の周りの樹木も冬へ衣替え。
マンションの植栽をやさしく守る冬囲いの美しさにうっとり。
見惚れてしまって、思わず写真を撮りましたよ。
初冬を彩る伝統工芸品ではないでしょうか。


丸竹を格子状に組んで樹木を雪から守る「竹棚」と呼ばれる冬囲い。
幾何学模様のように整然と組まれた竹、その結び目の一つ一つが見事に揃っていて、
ピンとした切れ端すらも美しいのですよ。
これは、本当に職人技ですね~。

樹木を雪や寒さから守る方法は世界にも色々あるのかもしれないけれど、
日本の北国、雪国が昔から伝え続けてきた「冬囲い」の機能美は素晴らしいと思う。
民藝運動の中心となった柳宗悦は名もなき職人たちが日々の生活の中で作る素朴な工芸品に
美の本質を見つけ出し「用の美」と名付けましたが、
日本の冬囲いもまた、用の美と言いたくなります。

日常の暮らしに寄り添う実用性と美が矛盾せずに共存する素敵なもの。
床の間や豪華な応接間に飾っておくような豪奢な美ではなく、
北国や雪国の自然に寄り添うなかでにじみ出てくる静かな美しさ。
厳しい冬から樹木を守るために丁寧に紡がれてきた「冬囲い」は美しい。

冬の用の美。
冬囲い。
優しくて温かくて美しい。