晩秋のリーフ
今日で10月もおしまい。明日から11月。
晩秋から初冬へと静かに季節のバトンが渡されていきます。
少し前までほんのり色づいていたナナカマドの葉も
10月最後の日、すっかり真っ赤に染まっていました。

Autumn Leaves オータム・リーヴス
・・・枯葉よ~♪・・・
JAZZのスタンダードナンバーのフレーズが浮かんできます。
秋、枯葉、リーヴス・・・リーフ・・・リーフパイの季節だ(笑)
折よく、タイミングよく、リーフパイの名品を夫のお知り合いから頂戴しました。
銀座ウェストのリーフパイ。
大きな木の葉型のパイは職人の手によって1枚ずつ折りたたまれ、
265層も繊細な生地が織りなす芸術品のようなパイ菓子です。

サックリしたパイの食感、シャリっと歯触りを感じる白ザラメ糖の甘さ、芳醇なバターのコクと香り。
一口ほおばれば、その繊細な味わいに思わずうっとりしてしまいます。
天使の羽のような軽さ、パリンと縦にも横にも割れる心地よさ、
銀座ウェストのリーフパイは、すべてにおいて佇まいの美しい名菓であります。
お菓子とともに美しいのは、銀座ウェストの本店。
1947年に創業した銀座本店はまさに正統派の喫茶店、いや喫茶室と呼ぶべきでしょう。
青い上品な看板が掲げられた正面には美しい洋菓子が並ぶショーケースがあり、
その奥のノスタルジックな木の扉を開けると、
タイムスリップしたかのようなクラシックな喫茶室が広がっています。
入口のキャビネットには昭和20年代に演奏されていたSP盤のクラシックレコードがぎっしり、
外の銀座の賑わいとまったく違う落ち着いた空気と空間には訪れるたびに感動します。
静かに音楽が流れる店内には座り心地の良いマロン色の椅子とテーブルがゆったりと配置され、
真っ白なテーブルクロスと椅子に掛けられたクロスに一流のおもてなしの心が宿ります。
静謐な店内を無駄のない動きのスタッフがキビキビと、かつ、あくまで上品に行きかい、
丁寧に注文を訪ねて、それは丁寧にコーヒーや洋菓子をテーブルまで運んでくれます。
銀ブラで疲れた足も、ちょっとした悩みも、この店内でひとときを過ごせば消えていくような
魔法のような、奇跡のような喫茶室かもしれません。
銀座に行くときは、必ずウエスト本店に足を運んだものです。
銀座ウェストは船旅全盛時代の郵船からシェフを招き、コーヒー1杯10円の当時、
1000円のコース料理を出すレストランとして始まりましたが、開店半年で都条例により
75円以上のメニューが禁止されたため、やむなく製菓部門を残して喫茶に変身。
翌昭和23年からクラシックレコードを流す「名曲の夕べ」を始めたことから、
文化人が集うサロンとしてこ知られるようになっていったのでした。
今でも、銀座ウェスト本店の木の扉を開けると、
往時の文豪が編集者と談笑しているような、「文化」の香りを感じます。
スマホよりも万年筆と皮の手帳が似合うような喫茶室。
晩秋のリーフパイをほおばりながら、あの空間を思い出す朝でした。


