時をむすぶ

あ・・・秋が来た?
朝、窓の外はほんのり薄暗く、ひんやりする風がカーテンを揺らしている。
夏と秋が空の上で静かに引継ぎをしたのだろうか。
蒸し暑さも一服、ようやくの秋の出番なのかもしれない。

ちょっと物憂げなグレーな空。
これはもう秋到来かもねぇ。
今朝のコーヒーはホットにしようかな~、
なんて思ったら、今度はグレーの雲の間からお日さまが顔を出してきました。

あら、晴れてきそうな気配。
よしよし、やっぱりまだアイスコーヒーにしようっと。
洗濯物も元気に外干し、朝刊を読んでいたら、空が暗くなり、雨が降り出した。
移り気な空模様、やっぱり秋、なのしれませんね。

今日は8月28日、80年前の1945年、ソ連軍が北方領土の択捉島に侵攻を開始した日です。
北方領土は今もロシアの実行支配が続いていますが、
昨日、コメンテーターとして出演させて頂いたHBC「今日ドキッ!」では
この問題を風化させまいと奮闘するお笑い芸人と若き社長の姿を特集しました。

北海道出身のお笑いコンビ「アップダウン」はM1グランプリやキングオブコントで
準決勝進出4回の実力派ですが、彼らが今取り組んでいるのは「北方領土漫才」です。
特攻隊や広島原爆などの歴史を伝える彼らの漫才を見た元島民で作る千島連盟の職員から
お笑いという形で北方領土問題を伝えてほしいと依頼されたのです。

元島民を取材し、歴史を踏まえ、前半はコミカルに島の文化や暮らしなどを絶妙な会話で紹介、
後半は芝居や朗読も取り入れて元島民が強いられたソ連軍の支配をシリアスに表現する40分間の漫才。
客席の元島民や2世、3世の皆さんは笑い、時に涙し、大きな拍手を送ります。
「笑いをね、悲しみを入れながら持っていくってところが素晴らしい。簡単なことじゃないですよ」
歯舞島元島民の方の言葉が北方領土漫才が持つ伝える力を物語っていました。

もう一人は元島民3世の久保歩夢さん。返還運動を続けるために20歳で自ら広告代理店を立ち上げた若き社長です。
2019年、ビザなし交流で訪れた択捉島で真新しいカラフルな住宅や舗装道路など、
実効支配によって確実にロシア化が進んでいる景色を目の当たりにしてショックを受ける一方、
返還運動に漂う諦めムードに強い危機感をおぼえ、北方領土問題で続けられるような事業、
お仕事として関わっていけるようにしないといけないとアルバイト貯めた200万円で会社を興したのです。

先週、根室で開かれた北方領土のフォーラムでその様子をYouTubeで配信、
北方領土関連で初めてのビジネスを請け負いました。
講師を務めるのは元島民の祖父、2世の父など久保さんの家族です。
そして、講演の後に配信したのがアップダウンの北方領土漫才だったのです。

「これからの領土問題、絶対風化させてはいけない、それはかなりヤバいなって思います」と語る20代の久保さん。
40代のアップダウン竹森さんは元島民の取材を通して「北方領土問題がどんどん風化していって、
自分一人しかこういうこと考えていないんじゃないか、社会は、周りの人はもう何も考えていないんじゃないかって
思うことが、一番つらいんだってわかりました」と語っていました。

戦争を直接知る人、語る人が、近い将来確実にいなくなってしまう。
じゃあ、誰が伝えるんだ? 僕だ、私たちだ。
20代の久保さんと40代のアップダウンのお二人が漫才とビジネスというこれまでにないアプローチで
現代の「当事者」として自分事として伝えようとアクションを起こす姿に引きこまれました。

戦争が起こし、今も解決できずに残る北方領土問題。
お笑いの作品に作り上げたり、お仕事にすることは、難しく、葛藤もあったと思いますが、
二つのアプローチには「無関心ではいけない」という共通するメッセージを感じました。
80年前の戦争。新たな表現、新たな方法で伝えることは、未来を作ること。

時を結ぶ。
人をつなぐ。
歴史を知る。
そして、今と地続きで考える。

戦後80年の暑い夏が終わろうとしています。
でも、考えることは、終わらせない。
秋の訪れを感じる朝。
コスモスが揺れていた。