真なる聚楽

悦楽
歓喜
絢爛豪華とは
相反する
真なる聚楽

水無月京都菓子紀行in札幌。
先日の丸井今井「京都老舗まつり」で仕入れた京銘菓のご紹介、
本日は、創業1882年の老舗「塩芳軒」の代表銘菓、
本店でしか入手できない「聚楽」であります。

「御菓子司 塩芳軒」は室町時代から織物のまちとして栄えた、
京都西陣の堀川中立売に店を構える京菓子の名店であります。
京都を旅したときに訪れたことがありますが、
その風格ある町家を目にした時に感動は今も鮮明に覚えています。

歴史を感じる町家にすっきりとした墨染の長暖簾が掲げられた本店は
風格ある建物の多い西陣でもひときわ目を引く佇まい。
京都市の歴史的意匠建造物・景観重要建造物・
歴史的風致形成建造物に登録されています。

「塩芳軒」の墨染の長暖簾の前で写真を撮れば、もう、ザ・京都。
古都京都の中でも群を抜く、隠れた映えスポットだと思います。
着物姿で撮った日にゃ、もう、永久保存版の京都ショット、
こんな美しい京町家が現役のお菓子屋さんとして息づいていることが、
まさに京都の魅力だと思いますね。

墨染の長暖簾は「御菓子司」「煉羊羹」などお菓子の名が、
水引暖簾や外燈には屋号の「塩」の字を四つの「ヨ」で囲んだ意匠が
すっきりと染め抜かれ、お店に入る前から歴史と風格ある外観にノックアウト。
京の老舗って、こういうことよね、って感動しちゃう。

長暖簾をくぐって店内へ入ると、
これまた140年の歴史を感じさせる空間が広がります。
長年丁寧に使い込まれた木の水屋箪笥やガラスケースがお出迎え。
静謐な空間に一歩身を置くと、「キャー、映える―!」なんて、
絶対にはしゃげなくなります。誰もがおしとやかになる、はず。

西陣の本店を訪れた折には季節の上生菓子もいただきましたが、
先日の京都老舗まつりでも本店でしか入手できない代表銘菓をゲット。
それが「聚楽」であります。
初代から受け継がれる「塩芳軒」のアイコン的存在。

かつて豊臣秀吉が栄華を極めた時代に
「塩芳軒」のある一帯に築かれていた「聚楽第」にちなんだもの。
金色に輝やいていた絢爛豪華な城郭だったとされる「聚楽第」ですが、
「聚楽」という言葉は秀吉の造語だと考えられているそうです。

その由来は「聚楽行幸記」によると、
「長生不老の樂(うたまい)を聚(あつ)むるものなり」とされ、
フロイスの「日本史」には「聚楽(Juraku)とは、彼らの言葉で
悦楽と歓喜の集合を意味する」記されているようです。

秀吉の聚楽第にちなんだ銘菓。
黄金、絢爛豪華、悦楽、歓喜・・・
はたしてどれほど豪奢で華やかなお菓子かとおもいきや、
「聚楽」・・・それはそれはシンプルな焼饅頭なのでした。

聚楽専用に炊き上げたなめらかなこしあんを
和三盆の蜜を使ったしっとりした生地でんで焼き上げ、
「天正」の焼き印を押した焼饅頭は、金色の輝きというより
「塩芳軒」の町家の風情をそのまま映したような奥ゆかしさがあります。

「塩芳軒」は日本に饅頭の製法を伝えた林浄因の流れを組むお店。
必要以上に飾らない焼饅頭「聚楽」には素材や製法、技術に対する
老舗の誇りと自信が込められているように感じます。
真の「聚楽」とは何か。

悦楽、歓喜、絢爛豪華と相反する「聚楽」。
しっとりはんなりした焼饅頭を味わいながら、
真なる聚楽を思う初夏。
お菓子は、時に饒舌だ。

(写真は)
京都西陣の老舗
「塩芳軒」の代表銘菓
「聚楽」
シンプルな迫力