甘い置手紙
ひそかに
心に秘めた
恋心
くるり巻いた
甘い置手紙
初夏だから、そうだ、京都へ行こう。
札幌丸井今井の「京都老舗まつり」のポスターに誘われ、
飛行機に乗らずに行ける最短京都旅に行ってきました。
京都の伝統と革新を伝える57店舗が集結した9階催事場は
開店直後からあちこちで長蛇の列の大賑わい。
さっそく、沖縄好きの京都好きもお目当ての老舗に向かいましたよ。
享保3年(1803)創業の京菓子の老舗「鶴屋吉信」です。
「ヨキモノ創る」という家訓を守り続けている京菓子は
洗練された京都ならでの感性を今に伝えています。
なかでも芸術品の域にまで到達しているのが上生菓子。
「鶴屋吉信」のブースでは京都からやってきた職人さんが
季節の上生菓子を作る様子が間近で見られました。
・・・なんど・・・美しい。
草の葉を映したような浅緑色のこなしに
淡い色合いのこなしをさらに加えて丁寧に丸めて、
匠の手が木の葉の木型に載せてしなやかに滑らせると・・・
うわぁ・・・葉の筋まで自然のままの木の葉が生まれた。
その木の葉にこしあんをくるりと巻き込むと
ほぉ・・・美しいお菓子の芸術品が出来上がりました。
菓銘は「落とし文」。
初夏を代表する上生菓子のひとつです。
「落とし文」はオトシブミ科の小さな虫が楢やクヌギの葉っぱを
器用に巻いてその中に卵を産み地面に落とすその様を模して
平安時代の「落とし文」に重ねて和菓子に映したもの。
秘かに想う恋心を伝えるためにその想い人の近くに落とした置手紙と
くるりと巻紙のような姿の葉の形をなぞらえたのですね。
「鶴屋吉信」の「落とし文」。
繊細な葉脈、葉先に向かっておぼろなグラデーションとなり、
くるんと愛らしく丸まった葉の上には小さな白い真珠のような粒が。
これは小さな虫さんの命、卵を表したともされますが、
新緑の葉の上に宿る朝露のようにも見えます。
平安時代、想い人の近くにそっと落とした置手紙。
落とし文の中にはどんな恋心が綴られていたのでしょうか。
メールもSNSもない。確実に秘密を守る通信手段もなかった時代、
きっと、かの人は、気づいてくれるはず、拾ってくれるはず・・・
あえかな思いを込めて「落とし文」を置く恋心よ。
いや~ん、「光る君」のまひろと道長さまが浮かんでくる=。
あふれる恋心を「文(ふみ)」にしたためて送りあう二人。
手紙かぁ、もう、直接告ればいいのに、と
ドラマで見ていると、現代人はもどかしくなったりもしますが、
まさかの置手紙作戦、「落とし文」とは、もう平安の恋、ゆかし過ぎる。
そんなゆかしい恋心作戦があったと京の上生菓子が教えてくれた。
春夏秋冬、映りゆく季節、人々の営み、秘めた恋心まで
美しいお菓子に昇華する和菓子の文化に心からリスペクト。
「落とし文」甘い置手紙をゆっくり味わい初夏なのだった。
(写真は)
「鶴屋吉信」の初夏の生菓子
「落とし文」「長春」「紫陽花きんとん」
甘い最短京都旅、京の初夏が目に浮かぶ


