虫の歌

暗く

静かな

蔵の奥の奥

幾首食べたか

虫の歌

2024桜前線、白熱のラストスパート?

昨日18日午前に札幌で。午後に函館で桜の開花が発表されました。

いずれも観測史上最も早かった昨年に次ぐ2番目の早さでしたが、

函館と札幌の同日開花レースもなかなか見応えありました(笑)

仲良く、春爛漫ですね。

札幌、函館で桜が開花した昨日、京都発の驚きのニュースが。

今日の朝刊の見出しは「定家の自筆 古今和歌集注釈書の原本」。

国内初の勅撰和歌集「古今和歌集」の代表的な注釈書で、

鎌倉時代初期の歌人・藤原定家自筆の「顕注密勘」が京都の冷泉家で

見つかったと冷泉家時雨文庫が昨日18日発表しました。

「顕注密勘」の写本は重要文化財に指定されたものなど複数ありましたが、

原本は失われたとされていて、専門家は「国宝級の発見」と評価しています。

藤原定家を遠祖とする冷泉家は代々宮中で和歌を教えてきた家柄で歴代当主は

「顕注密勘」で和歌を学んできましたが、江戸時代以降は書物を箱に入れて保管。

約130年間開けられず、1980年代から収蔵品調査が開始され、

2022年秋から箱を調べていた過程での世紀の発見だったらしい。

見つかった「顕注密勘」は上中下の三冊で上は写本、中と下が定家の自筆と確認。

源氏物語にも大きな影響を与えた古今和歌集成立から300年以上経った当時、

歌人で古典研究の大家だった定家がその意味を確かめようとした集大成の書、

平安末期の僧顕昭の解釈に定家が注を加えたものです。

顕昭の解釈への同意や批判が細かない筆致で加えられ、足りなければ、

さらに別紙を付け足してぎっしりと書き加えられたりしているそうです。

天皇や貴族の教養の基礎として重んじられてきた古今和歌集に対峙する

実践的な文学研究者定家の情熱と思考の一部始終を物語る、

まさに国宝級、超一級の資料の発見であります。

定家自筆の「顕注密勘」が発見されたのは京都冷泉家の蔵。

「文書の正倉院」とも言われる書庫に飾り気のない木箱に納められ、

暗い蔵の奥でひっそりと静かに眠っていました。

縦約18cm、横約17cmの書物には推敲の痕や考えを記した貼り紙も残され、

巻末には承久3年(1221年)に書かれたと記されています。

定家センセイが、今でいうマーカーを引いた痕や

ポストイットをぽちっと貼った箇所までそのままっていうことですよねー。

和歌に懸ける強い思い、思考をトレースできる書物、ですが、

暗い蔵の中で130年以上封印されていたため虫の害などで傷みもひどく、

まずは修復の上で詳細な分析が行われるようです。

朝刊に「顕注密勘」の実物の写真が載っていましたが、

確かに虫食いの痕がトンネルのようにあちこちにあって痛ましい。

古文書の宿敵、古い紙が大好きな虫たち、

国宝級の貴重な書物をわしわしわしわし、食べていたのね。

おもに古文書の虫食いの犯人とされるのは、

和紙を好み「紙魚(しみ)」の別名もある「ヤマトシミ」や

トンネル状に穴を開けて食害する「シバンムシ」などだそうですが、

彼らは暗く湿った場所と古い紙が大好き、小さいのに厄介な存在。

しかし、国宝級の和歌の研究書、定家自筆の「顕注密勘」を食べた虫たちは

考えてみれば、超一級の和歌を食べていたということでもあり、

もしかすると、歌の心が、小さな体に宿っていたかもしれない・・・?

なんて妄想にかられたりする。だって、食べたの、タダの古い紙じゃないもの。

暗く静かな京都冷泉家の蔵の奥で

いったい幾首食べたのか。

誰にも知られぬうちに

小さな虫が世紀の歌人となっていたりして・・・。

耳を澄ませば

蔵の奥の奥から

かそけき声が聴こえる?

虫の歌。

(写真は)

見上げれば

開花したばかりの桜

地面を見れば

クロッカスが笑っていた

定家センセイならどう詠むかしら