雪解けの季節

真っ白な

銀世界も

いつかは

春になる

雪解けの季節

あ・・・春の匂いがする。

今朝、窓を開けて深呼吸をした瞬間のことだった。

冬の間のあのキーンと張りつめた凍れた空気とは明らかに違う。

かすかにほこりっぽいような、土の匂いのような、

そうだ、これは、春の匂いだ。

長い冬を過ごした北国の人間の鼻センサーだけが感じる匂いかもしれない。

降り積もった雪が解け始め、少しずつ温まってきた大地の匂いだろうか。

湿った土と乾いたほこりに日なたの匂いが混じったような、

何とも表現しがたい、心を浮き立たせてくれる、ほっとする匂い。

ようやく雪と寒さから解放される喜びに満ちた春の匂いだ。

人には、言葉にできない思いを言葉にできる場所が、必要なんだ。

東日本大震災から昨日で13年が経ちましたが、

復興が進み、インフラが戻ってきても、心の復興は半ば。

新聞各紙は心身の不調や悩みを抱える被災者の今を伝えていました。

原発事故が起きた福島県には7つの市町村に帰還困難区域が残り、

全国で約2万9千人がいまだに避難を余儀なくされています。

岩手、宮城、福島の各県に設置された被災者の相談を受け付ける

「心のケアセンター」への相談件数は、2012年度が計2万3914件、

2021年度は1万7302件と、今も多くの人が心に苦しみを抱えています。

当時幼かった子どもたちの柔らかい心に震災は大きな影を落としています。

故郷に住めなくなって何度も引っ越し、転校を繰り返したり、

再開した学校での給食がパン1個と牛乳だけ、みんなが「お腹がすいた」と

言うので先生が「禁止用語」にしたり、テレビの取材が来たら、

「『支援に感謝してます』って言ってね」と促されたり。

世の中には「絆」や「がんばろう」の言葉が飛び交う。

小さな心は不安や不満がいっぱいだったのに、

まわりの大人も大変な様子を察して、

「あのころ、ずっと我慢ばかりして無理が積もった」。

13年間心に積もった痛みが、今も影響しているのではないか。

転校先で保健室登校に。高校、大学では友人に恵まれ、順調に回復したところに

コロナ禍が起き、不安な気持ちがぶり返したという23歳の女性は、

能登半島地震でも子どもたちが避難せざるを得ない状況を見て

「つらい時は『つらい』と口に出せるようにしてあげてほしい」

そう、新聞取材に答えていました。

被災地では役場も学校も保護者もいっぱいいっぱい。

子どもは大人の大変さを敏感に察して、自らも知らず知らずに我慢を重ねる。

つらい、しんどい状況にあっても、その痛みにふたをしてしまうことがある。

言葉にできないでいるうちに、心に痛みが石灰化したように積み重なってしまう。

つらい、怖い、イヤだ、帰りたい、淋しい、不安だ。

言葉にできないもやもややいらいらも、そのまま口に出せる場所が必要なのだ。

子どもにも、大人にも。

言葉にならなくても安心できる誰かに話せることで、言葉になることもある。

固く凍りついた雪も、

春が来れば、いつかは、ゆっくり解けていく。

陽だまりの縁側のような安心できる場所がありますように。

雪解けの季節に、震災を思う。

(写真は)

3月の日差し

春を待つ和菓子が笑う

桜に鴬

ほっとする