七月飛雪
まさか
こんな季節に
白い雪が舞う
あってはいけない
七月飛雪
今朝の天声人語で、ある中国の四字熟語を知りました。
「六月飛雪(リウユエフェイシュエ)」。
無実の罪で処刑された人の怒りが苦しみが天を突くとき、季節は狂い、
雪が風に舞うという意味で、「冤罪」を表す言葉だそうです。
52年前の一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審公判で
検察側が有罪立証する方針を決めました。
弁護側は年齢などを踏まえ早期の無罪判決を求めていましたが、
検察と弁護側が争うことになり審理が長引く可能性が高まったのです。
刑事訴訟法では再審開始について
「無罪を言い渡す明らかな証拠があった時」と規定されており、
再審では87歳の袴田さんに無罪が言い渡される公算が大きいのに、
なぜ検察は有罪立証にこだわるのか。
「組織のためか、メンツか目的はわからないが、がっかりした」。
弁護団の思いをそのまま表すような四字熟語が「六月飛雪」。
検察の有罪立証方針が決まった7月、真夏日の暑さが続く夏、
降るはずのない雪が舞う。袴田事件は七月飛雪なのか。
「六月飛雪」の六月は旧暦の六月、ちょうど今頃の季節に当たります。
元の時代に隆盛した歌舞音曲である元曲の名作「竇娥冤(とうがえん)」が語源。
夫に先立たれた竇娥が姑殺しの罪を着せられて死刑を宣告され、
「もし私が冤罪なら、真夏に雪が降り、三年間干ばつが続くでしょう」と
最後の言葉を残し、彼女の処刑後、これらの言葉が現実になりました。
その後、竇娥の父が科挙官僚として赴任すると
彼女は亡霊となって現れ、自分の冤罪を晴らすよう懇願、
その結果、裁判がやり直され、真犯人が処刑されたというあらすじ。
降るはずのない夏に雪が降ってきた、つまり尋常ではない冤罪を
神様も認めたということから「六月飛雪」という言葉が生まれたのです。
「冤罪」の「冤」という字は
兔(ウサギ)が覆されて走ることができないで屈むことを表し、
それが転じて無実の罪を受ける、うらむ、あだの意となったとか。
「六月飛雪」の主人公の名前、竇娥冤にも「冤」の字があります。
元の時代から令和の夏。
竇娥冤の父のように袴田さんの無罪を訴え続け、支え続けた、
90歳の姉の秀子さんの強靭な言葉に胸を打たれました。
「(支援を)57年やってきたんだから、
2,3年延びたって、どうということはない」。
七月に雪が降る。
あってはいけない冤罪。
再審公判が迅速に進みますように。
(写真は)
朝の曇り空から
涙のような雨が降った後
今度は青空が見えてきた
七月の空から雪は降らない


