差されなかった手
大切なことは
目に見えないんだよ
心で見なければ
よく見えないもの
差されなかった手
「藤井七冠 最年少名人」
朝刊一面トップに大きな見出しが躍っていました。
20歳の快挙に興奮する世の中を物語るような大きな活字、
だよね~、将棋はさっぱりわからない私も(笑)テンションが上がる。
藤井聡太竜王が20歳10か月の最年少で初の名人位を獲得、
さらに史上2人目の七冠も最年少で達成しました。
進化した将棋AI研究から最善手を学び、対局で差した手の評価を
さらに追求し続ける棋士は「AI時代の新名人」なのか。
朝刊はさらに特集記事でその点を深堀しています。
藤井新名人自身はAIについてどう考えているのか、
彼がこれまで語った言葉が紹介されていました。
その言葉に、もうね、朝からね、ただただ感動。
「AIより人間の方が深く読める局面はあると思う」とし、
「自分はAIの強さを知っていますが、将棋が難しいことも知っているので」
どうだ、聞いたか、参ったか、将棋AI!
将棋もAIもわからんくせに、なんだか胸がすっきりする(笑)
さらに深いのは次の言葉。
「対局に現れるのは差した手ですが、差されなかった手も存在します。
それぞれに意図があり、重なり合って一局の将棋になる。
意図をもって差し手を選ぶという人間ならではのことを大切にしたい」
AIが人間の知性を超えるシンギュラリティが迫っている?
AIに仕事が奪われる日も近い?などその脅威が語られる今日この頃ですが、
20歳の新名人の言葉はAI時代に生きる人類にとっての羅針盤かもしれない。
そうだ、AIには「差されなかった手」は、わからない。
あくまで人間が学習させた膨大なデータから最適解を導き出すAI、
学習させなかったデータはAIの「頭脳」には存在しない。
しかし、人間の「頭脳」には、差した手と差されなかった無数の手があり、
差されなかった手、つまり、見えなかったものからも学ぶことができるのだ。
「心で見なければ、ものごとはよく見えないってこと。
大切なことは目に見えないんだよ」。
サン・テグジュペリの「星の王子様」に登場する名言が重なります。
大切なことは、目に見えない。でも、確実に、存在する。
昨日、コメンテーターとして出演させて頂いた
HBC「今日ドキッ!」の特集VTRの場面が蘇ってきました。
札幌のある小さな町中華、夫婦二人で切りまわす人気店でしたが、
50代の主が突然の急逝、ホテルで修業中だった30歳の息子さんが
悲しみも癒えぬ間に後を継ぐことを決心、厨房に立ちます。
しかし、中華料理人のスキルはあっても、
亡き父からレシピはもちろん盛り付け方すら教わったことはありません。
彼は厨房でたった一人、父が残した自慢の叉焼のたれを舐めて
父の味を想像し、再生し、自分の味と重ねていったのです。
本当だったら仲良く厨房に並んで教わるはずだった父の味。
今となっては、それは、心で見なければよく見えないもの。
だから、息子は、料理人の心「舌」で舐めて、理解しようとした。
大切なことは目に見えないんだよ。でも、わかる。
急速に進化するAIにいたずらに怯えているヒマはない。
人間は、見えないものから学ぶことができるんだ。
棋士の「頭脳」、料理人の「舌」は、AIにはない。
教わらなかったレシピ、差されなかった手に、真実が宿る。
(写真は)
初夏にお似合い
「トマトとオレンジのサラダ」
我が家の定番サラダのレシピ、
だれか継いでくれるかしらん


