一粒一粒の言葉

翡翠色

秋の夕陽色

美しい季節の恵みが

そっとささやく

一粒一粒の言葉

「『感染爆発』40都道府県に」

朝刊一面の見出しに改めて緊張と不安が増す晩夏の朝。

国内の昨日の新規感染者数は2万3千人超えの過去最多、

重症者数も1716人と過去最多、いずれも第4波を大きく超え、

まさに「災害級」の感染爆発に歯止めがかからない状況です。

北海道も旭川が明日まん延防止等重点措置に追加され、

混雑しやすいデパ地下やショッピングセンターなどに

入場制限を求めるなどさらに対策が強化されるようですが、

さらに気を引き締めて感染対策を続けていこうと思う朝です。

出口の見えない感染状況を伝える朝刊を読んでいると

ついつい知らぬ間に眉間にしわが寄り、肩に力が入ってしまいますが、

ラジオから聞こえてきたお喋りに、ほっと心がなごみました。

「今日8月19日は、819=はいく=俳句の日、なんだそうです」。

ほ~、そうでしたか、8(は)1(い)9(く)で俳句の日へ♪

正岡子規研究で知られる俳人坪内稔典らが提唱し、

1991年に制定されましたが、夏休み中の子どもたちに

俳句に親しんでもらいたいという願いがこめられているそうです。

季節や自然や暮らしのあれこれを五七五のリズムに載せて読む俳句。

折しもちょうど昨日、それは美しい季節の恵みが届いたではありませんか。

佐賀県伊万里市の「いのうえオーチャード」の宝石のような葡萄が

知人から送られてきたのです。

ぶどうの多品種栽培50年に及ぶ「いのうえオーチャード」は

開園以来有機物と有用微生物を利用した健やかなぶどう栽培にこだわり、

オリジナルの新品種を含めて50品種以上のぶどうを生産している葡萄園。

もぎたての新鮮なぶどうが伊万里から札幌までやってきてくれました。

まさに翡翠のような美しい緑系の「シャインマスカット」、

「マスカサーティーン」「瀬戸ジャイアンツ」、

初秋の夕陽色のような赤系の「バイオレットキング」の4品種、

箱の中は晩夏から初秋の美しいパレット、見惚れてしまいました。

そうだ、今日は俳句の日だった。

正岡子規は秋の葡萄をどんな風に読んでいるのかしら?

と、高浜虚子選の子規句集を調べてみると、あらら、

食いしん坊の子規さんですが、意外にブドウの句が少ない。

句集で見つかったのは、たった一句。

「黒きまでに紫深き葡萄かな」

明治35年秋に詠まれた作品です。

そうか、この当時の葡萄といえば、紫ですよね。

今でも巨峰やピオーネなど黒系と呼ばれる紫の品種はたくさんありますが、

デパ地下の高級フルーツコーナーで燦然と輝いているのは

シャインマスカットに代表される緑系、翡翠色の品種が多いような気がします。

子規さんが現代の緑系の葡萄を食べたら、いったいどんな一句が生まれるのか、

想像すると、ちょっと楽しくなってきます。

時代と共にさまざまな品種が生まれ、

秋の葡萄園はまるで宝石箱のような美しい色とりどりの葡萄が実ります。

一粒が大きくて皮ごと甘い果汁をそのまま味わうことができる品種も多く、

一粒口に入れるたびに、いちいち余りの美味しさに感動するばかり。

「葡萄食ふ一語一語の如くにて」

俳句の日、中村草田男のこんな一句を見つけました。

ニーチェなどの西洋思想の影響を受けたとされる草田男らしい

みずみずしい感性と思索に満ちた秋の句ですね。

葡萄の一粒一粒をいとおしむように

言葉の一語一語を大切にする気持ち。

困難な時代だからこそ、言葉の大切さが身に沁みる。

一粒一粒の言葉を味わう晩夏。

(写真は)

季節の宝石箱

伊万里のいのうえオーチャードの

美しい葡萄たち。

一粒一粒が言葉を持っているよう