サカイを越えて
氷河期の
記憶を残す
美しい花
サカイを越えて
健気に咲く
今日は二十四節気の「小満」。
もともとは麦の穂が実り、満ちてきたという意味から転じて
すべてのものが次第に成長し、天地に満ち始める時節という意味。
草木も茂り新緑からさらにその色を深めていく季節ですね。
春先の萌黄色から若草色、若苗色へ。
さらに若葉色、若緑、苗色、深緑へと緑の深さも移り変わり、
美しい野山の緑のグラデーションに心も満たされる。
そんな「小満」の朝、素敵な写真を朝刊紙面で見つけました。
「氷河期とつながる色」という見出しの横に
愛らしい赤紫色のお花の写真が掲載されています。
花の名前は「サカイツツジ」
国内では根室市だけに生育するお花が落石岬の自生地で咲いたそうです。
サカイツツジはロシアのサハリン(樺太)など北半球の寒冷地に分布、
1915年に北大植物園の初代園長の宮部金吾らが樺太の北緯50度にあった
旧ロシア帝国との国境付近で見つけ報告したのが分布の南限とされたことから
国境に咲くツツジ=「サカイツツジ」の名がつきました。
このサカイツツジは樺太と北海道が陸続きだった氷河期の植生を、
本来の分布地から離れて示す「隔離分布」の貴重な例として
1940年に国の天然記念物となり、「氷河期の生き残り」とも呼ばれ、
遠い太古の記憶を留める奇跡の花なのだそうです。
桜前線の最終ゴールでもある根室市で、
小満の季節に岬の自生地でひっそりと花を咲かせるサカイツツジ。
赤系の日本の色の名前のひとつに「躑躅色(つつじいろ)」があり、
紫味のある明るい赤は紅花と紫根で染めて出されるようですが、
西洋的には陽の光に透かせた明るいワインレッドという感じでしょうか。
サカイツツジ。サカイ=国境。感染の収束が見通せない今、
国と国の境、県と県の境を越えることが難しい日々が続いているだけに、
氷河期の記憶を留めながら人間が引いた国境線を軽々と超え、
初夏の落石岬で美しい躑躅色、ワインレッドの花を咲かせるサカイツツジの花は
不安や緊張に疲れ気味の心をそっと癒してくれるような気がしました。
その赤紫色の花びらは
ロシア帝国の皇帝が愛した極上の赤ワインのようでもあり、
蘇芳と青打を重ねた平安貴族の艶やかな躑躅の襲(かさね)のようでもあり、
北海道と樺太が白い氷の陸続きだった太古の暁のようでもあり、
朝刊に載った小さな写真は様々なイメージがふくらんでいんでした。
いつか、
人々が自由にサカイを越えて行き来できる日が来ますように。
美しい氷河の生き残りの花の写真を見ながら、
静かに願う小満の朝、でした。
(写真は)
初夏のおやつ
苺のマリトッツオ
クリームの境に
苺の花が咲く♪

