ねえ読んで読んで

クマさんが

はらぺこあおむしが

ぐりとぐらが

呼ぶ声が聞こえる

ねえ、読んで読んで。

ほぉ~、700万部突破とは!

出版不況、本離れが心配される昨今ですが、

朝刊に興味深い記事が載っていました。

「『いないいないばあ』700万部 出版50年 日本の絵本初」。

0歳児から楽しめる赤ちゃん絵本の先駆けとして知られる

「いないいないばあ(童心社)」が累計339刷となり、

発行部数が日本の絵本で初めて700万部を突破することが、

わかったそうです。

1967年に日本初の赤ちゃん絵本として出版された「いないいないばあ」、

作者は児童文学者の松谷みよこさん、絵は画家の瀬川康男さん。

顔を隠したクマさんやネコさんがページをめくると・・・

「ばあ」と顔を出して現われる絵本です。

そうそう、赤ちゃんだった息子もページをめくると、

うきゃきゃ♪うきゃきゃ♪と、

毎回面白いようにウケてくれたことを思い出しました。

懐かしいなぁ~、久しぶりに見てみようかな~と

絵本を仕舞っている本棚を覗いてみました。

実は絶賛断捨離中の我が家、

先日、私の蔵書は泣く泣くかなりの量をブックオフへ(涙)

だって収納スペースには限りがあり、本は増える一方、

どこかで、誰かが、決断しなければならないわけで、

どうしても手放せない本以外は思い切って旅立たせたのです。

しかし、息子に読み聞かせた絵本、児童書は、無理、できない。

いまだに一冊も処分できず、そもそも処分するつもりは、はなからない。

だって、生まれた時、いや生まれる前から、コツコツ揃えてきたもの、

絵本の定期便で送ってきてくれたもの、プレゼントされたものなど、

我が家の絵本&児童書コーナーは思い出いっぱい過ぎるもの。

絵本用の書棚の扉を開ける。おお~、眺めているだけでほっこり。

大きい絵本、小さな絵本、縦長、横長、サイズも色も厚さも色々。

絵本は大人の単行本、文庫本と違って形状がまちまちなので

収納には苦労するのですが、でこぼこした書棚の様子が自由で楽しい。

朝刊記事では絵本累計発行部数ベスト10入りも紹介されていましたが、

「ぐりとぐら」「はらぺこあおむし」「しろくまちゃんのほっとけーき」

「てぶくろ」「おおきなかぶ」「ねないこだれだ」・・・

あるある、あるある、ほとんどあるよ。

あまりに冊数があり過ぎて、

肝心の「いないいないばあ」がなかなか見当たらず、

あれこれサイズの違う背表紙を見ているうちに、

あれ・・・?こんな絵本・・・あったかな・・・?

一冊の気になる絵本を発見しました。

題名は「エリカ 奇跡のいのち」。

著者はルース・バンダー・ジー、絵はロベルト・インノチェンティ、

訳はノンフィクション作家の柳田邦男さんです。

表紙の絵に描かれているのは貨車とドイツ兵と鉄条網。

絵本を開いた扉にはこんな文章が。

「わたしが1944年に生まれたことはたしかです。

でも誕生日がいつであるのかはわかりません。

生まれたときにつけられた名前もわかりません」。

第2次世界大戦中のナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺、

「ホロコースト」を題材にした絵本だったのです。

強制収容所に向かうすし詰めの貨物列車の中から

せめてこの子だけは生き延びてほしいと、母親が小さな換気用窓から

赤ちゃんを投げ捨てたことで助かった「奇跡の命」のお話でした。

絶望と悲劇の歴史と同時に

この絵本が訴えるのは、生きられる確率が1万の1、百万の1であっても

子供の未来と希望にかける本能的な母親の愛、人間の愛です。

奇跡的に町の人に救われた生まれたての女の子は「エリカ」と名付けられ、

自分が貨車の窓から投げ捨てられた瞬間のことをこう語ります。

「お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら 

わたしを「生」にむかってなげたのです」。

押さえた筆致と静かな挿絵で描かれたその絵本を抱え、

書棚の前でしばし言葉を失いました。

こんな絵本が我が家の書棚で眠っていたんだ。

「エリカ 奇跡のいのち(講談社)」は

小学校中級~一般向け、全国学校図書館協議会選定図書に選ばれ、

日本絵本賞翻訳絵本賞も受賞しているようですが、

我が家の書棚にありながら読んだ記憶がありませんでした。

小さな頃は寝る前になると

「ねえ読んで読んで」とお気に入りの絵本を持ってきた息子も

定期便でこの絵本が届いた頃は外で遊びたい盛りのわんぱく期、

せっかく届いた絵本も手に取られることなく

いつのまにか書棚にしまわれていたのでしょう。

絵本を引きずってきた小さな息子はすっかり大人になって、

しばらく開けていなかったけれど、

書棚の奧から色々な声が聞こえてくる。

クマさん、はらぺこあおむし、ぐりとぐら、かいじゅうたちに、

まだ読んであげていなかった主人公たちの声が。

ねえ、読んで読んで。

大人だからこそ、

絵本を読んでみよう。

エリカが、教えてくれた。

(写真は)

我が家の絵本&児童書書棚の

ごくごく一部。

少し大きめのエリカの絵本は

ひっそり横たわっていた。