憧れのあんこ
戦いすんで
日が暮れて
おなかすかせた
人々を励まそう。
憧れのあんこよ。
一雨ごとに木々の葉やナカマドの実が赤く色づき、
秋が深まる今日この頃、ますます和菓子が美味しい季節になりました。
甘党の我が家は札幌三越で開催中の「あんこ博覧会」にほぼ日参(笑)、
夫が仕事帰りに極上和菓子をお土産にゲットする日々が続いております。
本日ご紹介するのは「青柳正家」の看板商品。
こしあん好きを虜にする「菊最中」であります。
もうね、そのお姿を一目見たら、絶対に心を奪われます。
だって、最中の皮が・・・浮いている・・・!
宮内庁から使用を許された十六菊花御紋章を象った最中の皮の間には
もこもこっと腰がくびれたこしあんがこれでもかと盛られていて
上下の皮があんこによって宙に浮いたようになっているのです。
雪だるまのようなあんこが最中の皮をちょこんとかぶっているような状態。
こしあん好きにとっては、夢が現実になったような菊最中。
唯一無二のこのフォルムは初代の心が詰まったものなのです。
青柳正家の創業は昭和23年(1948年)の戦後間もないころ。
物がない時代、甘いものは憧れでした。
人々が少しでも豊かな気持ちにあってほしいと、
見た目を豪華に甘いあんこをたっぷり入れたこの形を考案したそうです。
戦争中は小豆もお砂糖も夢のまた夢だった当時の人々にとって
皮が宙に浮くほどあんこが詰まった菊最中は、
まさに憧れが形になったお菓子だったことでしょう。
菊最中の食べ方にはお作法(笑)があります。
手のひらに載せ、上の皮を持って真ん中でそっとひねると・・・
それは見事に上下二つに割れるので、それぞれの皮を下にして
たっぷり盛られたあんこと共にいただきましょう。
う~ん・・・涙が滲むほど・・・美味しい。
丁寧に晒された藤色のこしあんは甘く上品な深みがあり、
うるち米を使った皮はしっかり心地よい固さを保っていて香ばしく、
あんと皮との味、食感のコントラストが絶妙なのです。
甘さ控えめなスイーツがもてはやされる中、
青柳正家の菊最中は、ちゃんと甘い。
これ以上は甘すぎるギリギリを保つ絶妙な甘さを今も保っている。
それは、甘いものが、憧れだった時代に生まれたからなのだろう。
戦後間もない食べ物が乏しい時代、
この菊最中を口にした当時の人々の思いを想像する。
夢にまで見たあんこがこれでもかと盛られた姿、舌も心もとろけそうな甘さ。
・・・ああ・・・戦争は、終わったんだと、実感したのではないだろうか。
戦いすんで日が暮れて
おなかをすかせた人々を
とろける甘さと姿で勇気づけた
そんな最中が向島で現役なのだ。
憧れのあんこ。
青柳正家の菊最中。
今も人々を元気づけてくれる。
(写真は)
高々と盛られたこしあんの上に
菊の花が踊っているよう。
青柳正家の菊最中。
ヘラ一本で盛り付けるらしい。

