つま先のその先
長靴のような
イタリア半島の
つま先の
その先の
美味しい一皿
札幌の街中のとあるビルの2階にある
「人に教えたくなる隠れ家」イタリアン、
「RICCI CUCINA ITALIANA(リッチ・クッチーナ・イタリアーナ)」
質量とも大満足の「前菜たっぷり盛り合わせ」も凄かったが、
パスタも凄かった♪
その日は食いしん坊が3人揃っていたので、
アンティパストに続くプリモピアット(第一の皿)には
2種類のパスタをチョイス、色々食べてみたいもんね♪
メニューを開き真っ先に目に飛び込んできた一皿が、
本当に凄かった。凄かったの連発ですが、ホントなの。
その名は「シチリアの鰯のパスタ」。
長靴のようなイタリア半島のつま先のその先、
シチリア島を代表する伝統的な名物料理であります。
「Pasta con salde(パスタ・コン・サルデ)」。
RICCIのシェフはシチリア島でも修行されているそうで、
この鰯のパスタは本場仕込みのほんまもの、でありました。
(てか、現地行ったことないけど・笑)
香ばしくフリットされて鰯とレーズンと松の実が
アルデンテのパスタによ~く絡んで濃厚な旨みを醸し出し、
爽やかなフェンネル(ウイキョウ)の香りが鼻をくすぐります。
数あるイタリアのパスタの中でも
この「Pasta con salde(鰯のパスタ)」はちょっと特別。
イタリア半島のつま先のその先のシチリア島の歴史と深く関わっているのです。
その地理的地勢的条件から歴史的に幾多の民族の標的となってきたことが、
シチリア島の食文化に多くの美味しい影響を与えてきたのですね。
フェニキア人にはじまり、ギリシャ、ビザンチン、アラブ、ノルマン、
フランス、スペインの支配を受けてきたシチリア島。
オリーブオイルやオレガノ、バジル、ワイン造りはギリシャから、
強い塩味はビザンチンから、クスクスはアフリカから、
サフランやドルチェはアラブから、
スパイスの活用や料理技法はフランスから、
トマトやナスなどは新大陸の産物、つまりスペインから。
シチリアの豊かな食文化は複雑な歴史の物語から生み出されたものなのです。
鰯のパスタに欠かせないレーズン、松の実もアラブからもたらされたもの。
この美味しさは、シチリア島の複雑で重層的な歴史、そのものの味、なのですね。
また、今では超人気のこの一皿、かつては
「cucina povera(貧乏料理)」と呼ばれていたとか。
もともと安かった鰯の売れ残りを使って生まれたパスタだそうで、
鰯の臭みを消すためにシチリアの山道にいっぱい生えている、
野生のフィノッキオ(フェンネル)、フィノキエットをたっぷり使い、
仕上げに絡めるのが「モッリーカ」。
貧しかった昔は十分にチーズを買うことができなかったため、
パンの切れ端を2,3日棚で乾燥させすりおろしたものを
粉チーズ代わりに使ってきたのだそうです。
それが「モッリーカ」別名「貧乏人のチーズ」。
この「モッリーカ」の食感はパルメザンチーズに似ていて、
ソースの旨みをたっぷり吸収する超優れもの食材で
チーズ以上に鰯のパスタに深い味わいをもたらしていて、
レストランではカリカリパン粉を使うことが多いようです。
濃厚で複雑で重層的な旨みがたまらないシチリアの鰯のパスタ。
歴史を物語る一皿をペロッと完食、大満足。
そして思った結論、
貧乏人はグルメである。
逆もまた真なり。グルメは貧乏人である。
目の前の地中海で獲れた鰯の売れ残りを道端の野草で臭み消し、
他民族からもたらされたレーズンや松の実をどん欲に活用、
チーズが買えなくても乾燥パンでなんちゃってチーズを作って、
世にも美味しい一皿に仕上げてしまう。
貧乏人はお金がなくても想像力と創造力があるんだ。
いや貧しいからこそ、暮らしを工夫するんだ。
「cucina povera(貧乏料理)」
貧乏料理、上等!
最高の称号ではないか!
長靴のようなイタリア半島の
つま先のその先。
歴史ごと、島ごと美味しい島がある。
いつか行きたい、シチリア島よ。
(写真は)
シチリア伝統料理
「Pasta con salde(鰯のパスタ)」
RICCIの一皿はほんのりトマトが入る、
「in rosso」仕立てでした。

