追憶の君影草

老いも若きも

男も女も

晴れの衣装に身を包み、

初夏の花を求めて連なる行列。

追憶の君影草。

今日も札幌は朝から爽やかな青空。

予想最高気温は25度、今年初の夏日になりそうです。

ライラックの花もまさに見頃、美しい季節を迎えました。

そして我が家のマンションの敷地内にも

初夏の訪れを告げる花がつぼみをつけていました。

芝生の隅にひっそりと一列に並んだスズランの花。

いつ、誰が植えたのかもわかりません。

あまりにひっそり咲いているので、

存在すら気づかれていないかもしれません。

でも、毎年、健気に咲くのを、楽しみにしていたよ。

厳しい冬、雪に耐え、今年もつぼみをつけてくれて、ありがとう。

スズランの花言葉は「純粋」「純潔」「謙遜」、

そして、「再び幸せが訪れる」。

母の故郷、旧早来町はスズランの群生地と知られ、

町の花にも指定されていました。

私も幼い頃スズラン狩りに連れて行ってもらったものです。

なだらかな緑の丘陵一面が広がる真っ白なスズランと

うっとりするような高貴な香りははっきりと覚えています。

去年、大きな地震に見舞われた旧早来町。

冬や雪に耐え、初夏の訪れを告げるスズランの花は

勇気やエネルギーを与えてくれる存在なのかもしれません。

昔から人々は季節の花に元気づけられてきました。

すずらん山へ向かう人の波。

「駅からず~っと行列が続いていたもんだよ」。

母から聞いた戦前の初夏の早来の風景です。

スズランの季節になると群生地である通称「すずらん山」をめざし、

駅から小高い丘陵まで、晴れ着でめかしこんだ行列が続いていたそうです。

「へっ?晴れ着?着物に草履で?」

「そう、一張羅でめかしこんで何キロも歩いてたねぇ~。

お洒落していくところなんて、そうなかった時代だもんねぇ」。

なんか、ちょっと素敵な話だ。

冬に耐えて咲く美しいスズランを愛でようと

人々も晴れの衣装に身を包み、精一杯お洒落してでかける。

お花への深い敬愛と、季節の行事を楽しむ気持ちが伝わってくる。

晴れ着を着てでかけるくらいだから、

赤飯やおはぎを詰めた重箱なども携えていたかもしれない。

今みたいに舗装もされていない道を晴れ着の裾を気にしつつ、

草履や下駄で歩き続けるのはさぞや難儀だったと想像しますが、

いやいや、大河ドラマの「いだてん」の金栗四三くんだって

足袋でストックホルムオリンピックのマラソン走っていたものね、

可憐なスズランめざして、すっすっ、はっはっ~、

老いも若きも男も女も、みんな健脚だったんだろうなぁ。

スズランの別名は「君影草」。

恥ずかし気にうつむくように咲く白い小さな花は

初恋の君の面影をうつしているようだ。

追憶の君影草には和服が似合う。

ちょっと素敵な昭和の風景。

(写真は)

令和の君影草。

マンションの芝生の隅で

ひっそり健気につぼみをつけた。

もうすぐ咲くね。