冬小雨裏艋舺物語

台北の浅草。

「艋舺」には

冬の小雨がよく似合う。

雨と廟と夜市と裏通りと。

知らなかった裏艋舺物語。

年末年始野宮的美味台湾リポート。

初日の夜ごはんは1921年創業の老店「兩喜號魷魚羹」で

絶品名物イカスープや新竹産米粉炒めなどでノックアウト(笑)、

ふらりと偶然見つけた「龍都冰菓専業家」もまた

1920年創業のかき氷や温かいお汁粉が大人気の老舗。

地元客100%の愛される老店で心身満たされ、

冬の台北の夜をもう少しそぞろ歩き。

ホテルから徒歩圏のこの界隈は「萬華」地区。

台北最古の古刹龍山寺を中心に発展した門前町で

台北発祥の地といわれる下町情緒あふれるエリアです。

近くを流れる淡水河の交易によって栄えたことから

かつては「艋舺(バンカー)」と呼ばれ、

日本統治時代に音はそのままに「万華」と改められ、

台湾が中華民国となった後に繁字体の「萬華」となり、

音も中国語の「ワンファ」となったという歴史があります。

変化が激しい台北市内の中でも数少ない、

昔ながらの雰囲気を残したオールド台北とも言うべき場所。

「兩喜號」のある大通から角を曲がると地元色が濃い「艋舺夜市」が始まり、

その入口近くに夜の10時過ぎでも煌々と明るい「龍都冰菓専業家」があります。

地元の家族連れや仕事帰りのカップルなどが甘いものを楽しんでいて、

気取りのない素顔の台北に仲間入りできたようで嬉しくなってきます。

この夜市もガイドブックにはあまり載っていないよねぇ。

うふふ、旅は発見の連続、よね。

と、ここまでは、旅行者でも安心して歩けるエリア。

実は艋舺界隈は比較的治安の良い台北にあって、

場所によっては夜の一人歩きなどは避けた方が良いとされています。

昼間は龍山寺参りなど日本人にも人気の観光スポットですが、

夜の裏艋舺は、アマチュアにはちょっとハードルが高い場所。

70年代に全盛期を迎えた大繁華街にはあらゆる人々が押し寄せ、

その様子は「モンガに散る」という台湾映画にも描かれています。

黒社会の抗争と友情、淡い恋が湿っぽい裏艋舺の街の風景とともに描写され、

台湾映画ファンの間では名作、傑作とされている作品だとか。

「モンガ」とは「艋舺」の台湾語の発音。

ああ、台湾旅の前にチェックしておくんだったなぁ。

これから観て復習しようっと。

といっても、実際に歩いた艋舺夜市界隈は全く健全。

小さな子供連れや若者たちが小雨の中、屋台グルメを頬張っていて、

夜の浅草ホッピー通りという感じで最近は外国人観光客にも人気らしい。

意外に大丈夫っぽいよねぇ~と雨の艋舺夜市をそぞろ歩きしていると、

おっと、きらびやかな不夜城のような門に突き当たりました。

「華西街観光夜市」。

あ~、ここだ~。

台湾のガイドブックに必ず「個性派夜市」と

エクスキューズ付きで紹介されているあの夜市であります。

「龍山寺の西に西北に伸びる下町のくだけた雰囲気の夜市」と

「地球の歩き方」にも書いてあったっけ。

何が、どう、「くだけて」いるのだろうか。

ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、覗いてみましょう。

恐る恐る門をくぐり、そろりそろり歩を進める。

が、目つきの鋭い悪いお兄さんたちがガンを飛ばすようなことはなく、

人通りもあり、足つぼマッサージ店や薬草店などが軒を連ねていましたが、

きらびやかな門の割にはなぜかシャッターを閉めている店が多く、

見間違いなければその中には「蛇」的な漢字があったような。

実はこの夜市はかつて色街がそばにあったことから、

蛇、すっぽん屋など精力源となる食べ物屋が多いのだそうです。

あかん、アマチュアがのほほんと歩く場所じゃない。

入口付近から数軒先へ行っただけで即刻撤退。

安全を担保した上で貴重な社会勉強をさせてもらいました。

時代の波と共に台湾では2001年に公娼制度が廃止され、

「艋舺」も日本の歌舞伎町と同じような浄化作戦が展開され、

街の雰囲気は大幅に変わりつつあるようです。

艋舺夜市は若者に人気のスポットにもなっていますもんね。

ハードボイルドなかつての「艋舺」の雰囲気は

映画「モンガに散る」の画面にしか残っていないようですが、

骨まで湿りそうな台北特有の冬の小雨に濡れながら夜の艋舺界隈を歩くと、

明るい夜市のはざまにふと見える裏道や路地の哀し気な佇まいは

映画監督だったら絶対カメラを回したくなるような雰囲気に満ちています

ドラマティックな冬小雨艋舺物語。

台湾初日の濃厚な思い出。

街には色々な顔がある。

(写真は)

冬の夜の艋舺

個性派夜市「華西街観光夜市」。

治安の良い台北ですが、

ここは夜のお散歩はお奨めできません。

歌舞伎町の夜一人歩きしないでしょ。

旅は安全が第一。