ワンスアポンアタイム・イン・艋舺
切ない。
傷ましい。
壮絶な青春ドラマ。
台北の一番古い街を駆け抜けた
ワンスアポンアタイム・イン・艋舺。
年末年始野宮的美味台湾旅リポート、今日は番外編。
ずっと気になっていた台湾映画をようやく入手。
「モンガに散る」昨夜、観ました~!
旅の拠点だった「萬華」=「艋舺(モンガ)」が舞台となった映画。
ご近所のツタヤにお取り寄せを頼んでおいたのであります。
名作とは聞いておりましたが・・・最高だった。
「モンガに散る」は2010年公開の台湾映画。
1980年代の台北一の繁華街「艋舺」を舞台に
黒社会に翻弄される5人の若者たちの友情や絆、そして哀しすぎる運命を
鮮烈な映像と疾走感溢れる表現で描いた作品で、
アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされています。
「僕たちはなぜ戦うんだ。その意味がわからない」。
主人公の台詞がいつまでも頭の中にこだまする。
マフィアの世界を描いたハリウッド映画の名作、
「ワンスアポンアタイム・イン・アメリカ」の台湾版ともいうべき、
平和な日常と表裏一体の裏社会から描く人間ドラマでありました。
物語は1986年の艋舺。この街に越してきた高校生"モスキート”は
校内の争いをきっかけに艋舺を仕切る親分の息子”ドラゴン”と
幼馴染で頭のきれる”モンク”が率いるグループの5人目の仲間となります。
当時の艋舺を仕切っていたのはゲタ親分とマサ親分の二つの組織。
ドラゴンはゲタ親分の息子、つまり繊細な高校生モスキートが
生まれて初めてできた友だちは極道のジュニア組織だったわけ。
最初は極道の世界に抵抗を感じていたモスキートですが、
固い義兄弟の契りを交わした5人の仲間たちと
喧嘩に明け暮れる青春の日々を送ります。
この辺りのスピード感あふれる描写のセンスが秀逸で
台湾極道版スタンバイミー的な爽快感があります。
しかし4年の歳月が過ぎ、彼らの青春の日々に陰りが。
艋舺に「大陸」からの勢力が流入するという噂が流れ始め、
やがて二人の親分が暗殺され、若者たちに動揺が走ります。
誰が誰の命を何のために奪うのか・・・。
疑い、背信、裏切り、粛清。
輝いていた青春の日々は無残で哀しすぎる運命へと転がっていく。
この作品は単なる極道映画に留まらない凄みがあります。
大陸側の誘惑に乗ったのではと疑われた親分が
「北京語も話せないのに」と言い返す台詞がありました。
そうだ・・・この映画は・・・台湾語で展開されているのです。
艋舺を守ろうとする古い親分と「大陸」からの新勢力が対立する構図は
第2次大戦前から台湾に居住する「本省人」と
それ以降にやってきた「外省人」との微妙な関係、
台湾社会の複雑な一面を暗喩しているようにも見えます。
アジア映画に詳しい比較文学者、四方田犬彦氏の著作「台湾の歓び」に
「モンガに散る」に触れたこんな一節がありました。
「この作品は本省人のもつ共同体意識が外省人、さらに中国から最近になって
到来する本格的なヤクザによって危機に陥ろうとしている状況を
ヤクザという周縁的な存在を通して描こうとしている」。
なるほど・・・極道という装置を用いて
台湾人のアイデンティティに肉薄した作品ともいえるのですね。
もちろん娯楽作品として出色の出来。
旅したばかりの龍山寺も出てくるし、赤レンガの剥皮寮の路地や
歌舞伎町みたいな華西街夜市の艶っぽい通りを若者たちが疾走し、
モスキートがおつかいにいった屋台の屋号はなんと「兩喜號」!
名物のイカスープをビニール袋に入れてもらった屋台こそ、
そう、旅の初日の晩御飯を食べた艋舺の老舗「老店」のルーツ。
「あー!兩喜號!あー!あのイカスープ~!」。
思わず画面を見ながら叫んでしまった(笑)。
またまた台湾旅へのモチベーションが高まる。
モスキートたちがたむろしていた「清水厳祖師廟」も行ってみたいし、
定休日じゃない(笑)「剥皮寮」もリベンジしたいし、
今度は美食+「モンガに散る」聖地巡礼旅もいいですねぇ~。
艋舺の街角に彼らの幻影を探しにいきたいなぁ。
青春映画であり、
極道映画であり、
台湾社会を考察する映画でもある
ワンスアポンアタイム・イン・艋舺。
邦題は「モンガに散る」。
原題は「艋舺」。
オープニングから
もうカッコいい。
(写真は)
小雨に煙る龍山寺。
熱心に祈る人々の姿と
映画の最期の台詞が重なる。
「極道に入ることは、
大凶のおみくじを引くことだ」。
切ない。

