近世大名文化体感美術館

勇壮な黒門。

緑に囲まれた石畳。

その向こうに広がるのは

美しい庭園と美術館。

近世大名文化をまるごと体感。

名古屋ビジネス旅の最終日、夕方の飛行機まで半日街歩き。

朝は老舗「コンパル大須本店」で名古屋喫茶店文化を堪能後、

地下鉄名城線に乗って、天下の名古屋城へ参上。

平成の復元工事が完了し400年ぶりに蘇った本丸御殿、

木造復元が勧められている金鯱輝く天守閣を仰ぎ、

再び地下鉄名城線「市役所」駅へ。

今回の名古屋プチ街歩きのメインイベント、

長年行ってみたかった「徳川美術館」へ向かいます。

名古屋城本丸の東3kmの地にある徳川美術館へは

JR、バス、地下鉄などを使って行けますが、時間が限られているため

名城線「大曾根」駅で下車、徒歩15分の距離をタクシーでGO。

名古屋のタクシー運転手さんはおしなべて愛想が良いのですが、

入り口をいささか超えた場所で降ろされちゃいました(笑)。

う~ん、多分・・・こっちだよねぇ~。

広大なお屋敷の存在を感じさせる外塀に沿って来た道を戻ると、

おおお~、風格ある立派な通称「黒門」が見えました。

かつての尾張徳川家の名古屋別邸の表門であります。

ここが「徳川園」&「徳川美術館」の入り口。

ザ・大名屋敷という感じの黒門をくぐると・・・

緑に囲まれた石畳の向こうに

庭園「徳川園」と隣り合う「徳川美術館」の建物がありました。

お庭と美術館が一体化し近世武家文化を体感できる歴史文化拠点です。

徳川美術館は御三家筆頭62万石、尾張徳川家に伝えられた数々の重宝、

「大名道具」をそっくりそのまま収め、昭和6年(1935年)に開館。

収蔵品は徳川家康の遺品を中心に、歴代当主の遺愛品、

その家族が使用した物1万件に及びます。

国宝9件 重要文化財59件、重要美術品46件を含み、

その収蔵品の種類の豊富さ、質の高さ、保存状態の良さは極めて高く、

近世武家文化、大名文化、サムライ文化を体感できる美術館として

世界に類を見ない唯一無二の存在。ず~っと来たかったのよねぇ。

城郭を思わせるような帝冠洋式建築の建物自体も国の有形文化財、

美術館を取りまく環境、空間全てが伝統文化を味わえるのでした。

さあ、胸の高鳴りを抑えつつ、いざ美術館内部へ。

三連休初日の休日とあったそれなりの人出なのですが、

しん・・・最初の第一展示室内は静謐で緊張感のある空気が漂っています。

それもそのはず「武家のシンボル 武具・刀剣」のエリア。

かつて大名家で行われていた具足飾りが再現され、

江戸時代の名刀たちが醸し出す沈黙があたりを支配しています。

武家の魂、ここにあり、ですね。

将軍自身の名刀や臣下が賜った数々の名刀は

後世の砥ぎ直しを一切行っておらず、江戸時代の刃紋のままだそう。

時代劇のアップでおなじみのドラマティックな模様とは違う、

名刀の内側の奧底から放たれる無言の圧力が凄い。

「本物」の持つ圧倒的な迫力にたじろぎそうになります。

続く第2展示室は「大名の数寄」。

名古屋城二の丸御殿にあった「猿面茶室」が復元され、

武家の公式行事となった茶の湯「御数寄屋」の接待の様子が再現。

第3展示室は「室礼 書院飾り」二の丸御殿の広間と鎖之間が復元、

第4展示室は「武家の式楽 能」二の丸御殿の能舞台が再現されるなど、

名品コレクションをただ展示するのではなく、時代考証に基づいて

美術品とそれらが使われた空間との一体的な体系展示がされているのでした。

美術品単体の美に留まらず、日本の伝統美の特徴でもある

「構成の美」「取り合わせの美」が鑑賞できる空間構成に感動。

本当に尾張藩主の公的生活の場であった名古屋城二の丸に

「ごめんください」とお邪魔しちゃったみたい。

もう、これは、いくら時間があっても足りないよぉ。

朝から閉館まで丸一日は軽く過ごせる充実ぶり。

尾張徳川家、さすがです。

武家の故実に則った格式高い書院飾りも

原寸大の能舞台に展示された美しい能衣装も

すべてが素晴らしくて、美しくて、近寄ったり、遠目で観賞したり。

ああ、もう、いくら時間があってもたりないなぁ。

なかでも大名ファミリーのプライベートを感じさせる第5展示室には

微に入り、細に入り、見入ってしまいました。

「大名の雅 奥道具」と名付けられた空間には

大名や婦人たちが私的な生活の場「奧」で使用したり、身の回りを飾ったり、

教養を深めるために用いた「奥道具」が展示されていて、

御髪を整えるためのお道具類などはさしづめ江戸版グルーミングセット、

漆の豪奢な箱に眉を整える化粧道具などが整然と収められていて、

熱心に鏡をのぞくお大名や正室のお顔が想像できて微笑ましくなりました。

「奧」のメイクが江戸の流行発信地だったのかな~なんてね。

な~って鑑賞していたらあっという間に2時間経っていた。

そうだ、そうだ、今回のもうひとつのメインイベントが待っていた。

徳川美術館所蔵、世界的にも有名な国宝「源氏物語絵巻」が

なんと、めったにない、期間限定、絶賛特別公開中、なのでした。

近世武家文化の拠点で王朝の恋物語にお目にかかれるなんてラッキー。

名品コレクションに後ろ髪惹かれつつ、さあ、次へ。

源氏物語の世界は

明日へと続く。

(写真は)

徳川美術館の入り口「黒門」。

尾張徳川家の邸宅の遺構で

昭和20年の大空襲による焼失を免れた

武家屋敷の面影を伝える数少ない貴重な遺産。

総けやき造りの三間薬医門。

黒門をくぐって江戸時代にタイムスリップ。