千年の大恋愛コミックス
王朝を彩る
千年の恋物語。
美しい絵物語が
尾張名古屋で
現代に蘇る。
名古屋ビジネス旅の最終日、夕方の飛行機までの半日街歩き。
朝は老舗「コンパル大須本店」で名古屋の喫茶店文化を楽しんだ後、
地下鉄名城線に乗って天下の名古屋城に参上。
平成の復元工事が完了した本丸御殿、木造復元が進められる天守閣を見学、
再び名城線で「大曾根」駅からタクシーで念願の「徳川美術館」へ。
大空襲による焼失を奇跡的に免れた「黒門」をくぐって、
近世武家文化を堪能しました。
徳川美術館は尾張徳川家に伝えられた数々の重宝、
「大名道具」をそっくりそのまま収め、昭和10年(1935)に開館。
収蔵品は徳川家康の遺品など歴代藩主や家族が実際に使用した物ばかり、
1万件余りに及び、世界的に有名な国宝も含まれています。
それが「源氏物語絵巻」。
日本美術史を代表する最も有名な絵巻ですが、
原本の展示は極めて短期間に制限されているため、
通常は複製、映像を展示している・・・のですが、
何と!訪れたその時期が幸運にもその「極めて短期間」だった!
11月3日から12月16日まで
「特別展 源氏物語の世界~王朝の恋物語」が開催中だったのです。
ありがとう!尾張徳川家&光源氏さまぁ~♪
歴史の教科書や資料でおなじみの「源氏物語絵巻」。
まさか尾張名古屋で本物にお目にかかれるとは何という幸せ。
平安時代後期に紫式部が執筆した源氏物語は印刷技術のなかった当時、
書写によって広められ多くの人々に愛読されました。
成立後まもなく絵画化され、中世、近世と各時代ごとに
様々な絵画作品が製作され続けましたが、
国宝「源氏物語絵巻」は現存する最古の絵画例として極めて重要な作品です。
そりゃあ、めったにお目にかかれないはずよねぇ。
しかし、さすが尾張徳川家。
江戸時代以来、メガトン級の国宝「源氏物語絵巻」3巻が
巻物の形で伝わっていたのであります。凄いお宝が名古屋にあったのね。
その後、紙の痛みや絵具の剥落など損傷が激しかったため、昭和7年(1932)に
保存を目的として、糊で繋がれていた紙の継ぎ目をはがして
巻物装を解き、額面装に改装されました。
しかし、額面装は本紙が常時空気にさらされ、台紙や箱の反りもあり、
貴重な原本の本紙にテンションがかかった状態となっていたため、
後世にまで保存するには適さないと判断され、徳川美術館では
平成24年(2012)から国庫の補助金による支援も受けながら
最新の修復技術による保存修理に取り組んでいるのです。
額面装を巻物装に戻し、絵一場面ごとにその場面を説明する詞書と共に
一巻の巻物に仕立て変えていて、作品の保存にも適し、
詞書と絵が響きあう巻物本来の姿が蘇った、というわけです。
特別展ではその最新の修理過程が詳細にわかりやすく紹介されていました。
12世紀に製作された絵巻物の本紙は千年もの時の流れのなかで
まさにかすかなため息がかかっただけで霞のごとく消失しそうな傷みよう。
長い間、固い台紙に貼りつけられたために無残な縦じわがいくつも走り、
絵具の色は褪せ、いたるところで剥落し、女房のお顔もよくわからない。
息も絶え絶えの本紙を細心の注意を払って丹念に丹念にはがし、
本来の色や描線を細心の研究や科学的データから割り出し、
千年前の絵巻物の姿に戻していくプロフェッショナルなお仕事に感嘆。
さあ、いよいよ現代に蘇った国宝「源氏物語」とのご対面。
今回特別公開されているのは絵と詞書の修復が終わった場面と
来年度修理予定の作品のようですが・・・。
う・・・わぁぁぁ・・・。
現代の名古屋から千年前の王朝へタイムスリップ。
目の前に美しくもはかない王朝の恋物語が蘇った。
国宝「源氏物語絵巻 竹河(二) 詞書・絵」。
夕暮れ迫る春三月の玉鬘の屋敷。玉鬘の娘の大君と中君が
壺前裁の桜を賭けて碁を打つ様子を訪ねてきた蔵人少将が垣間見る場面。
十二単の緋色や萌黄色が色鮮やかに蘇り、碁を楽しむ楽しそうな表情が
活き活きと伝わってきます。春うらかなひととき、本当に楽しそう。
国宝「源氏物語 宿木(三)詞書・絵」は
匂宮と夕霧の娘の六君との婚姻三日目の朝の情景。
恥じらう六君を匂宮があやすように抱いている場面、
袖で口元を覆う六君にそっと差し出された匂宮の左手・・・
その優しい描線、温かな色調に新妻を大切に思う気持ちが溢れています。
さらに来年に巻物装へ修復予定の「宿木(二)」も展示されていましたが、
絵の修復は完成した額装の作品と、上記の二点の巻物を見比べてみると、
源氏物語が長く人々の心を捉えてきた理由のひとつがよくわかりました。
魅力的で複雑で長大でドラマティックな物語を絵画化し、
絵と詞書をセットになった巻物にしたゆえの大ヒットだったのでしょうなぁ。
絵と台詞が一体化し登場人物たちが生きているように躍動する。
つまり、これは、日本最古の大ヒット漫画、大恋愛コミックスだ。
そうだ、日本人は千年の昔から恋愛コミックが大好きだったんだ。
超貴重な国宝「源氏物語絵巻」とともに
平安時代から江戸時代に至るまでの写本や注釈書、絵画作品、、
蒔絵や桐の美しい絵書物箪笥なども展示されていましたが、
これって、超豪華な全巻物特製ボックス、なわけで。
「ねぇねぇ、この次の段、どうなるのかしら~」なんて
尾張徳川家のお姫様たちが絵巻物をさながらコミックスのように
はしゃぎながら回し読みしている様子が浮かんできました。
世界で一番貴重で雅な大恋愛コミックス
国宝「源氏物語絵巻」。
現代に蘇った絵巻物の本物に出会える希少な機会。
今月16日まで、名古屋においでの節はお見逃しなく。
(写真は)
もちろん国宝は撮影禁止ゆえ、
お隣の徳川園の初冬の景色を。
平安時代から江戸時代まで。
超豪華なタイムスリップ。

