素顔の朝

赤いビロードの椅子。

直角の背もたれ。

ネルドリップで淹れた

濃いコーヒーの香り。

名古屋の素顔の朝よ。

名古屋ビジネス旅最終日、夕方の帰りの飛行機まで半日名古屋を街歩き。

まずは名古屋名物、老舗喫茶店の珠玉モーニングを体験しようと、

ホテルから徒歩圏内の食べ歩き天国「大須商店街」を朝散歩。

赤い「大須」大看板をくぐり目覚めたばかりの万松寺通から新天地通へ。

信長ゆかりのゴージャスな万松寺を過ぎてすぐの粋な脇道に

目指すそのお店はありました。

名古屋喫茶店文化を牽引する「コンパル大須本店」です。

名古屋には「3大喫茶」と呼ばれる「コメダコーヒー」

「支留比亜(シルビア)」「コンパル」の三つの名店がありますが、

他の二つが愛知県外にも出店しているのに対して、

「コンパル」は名古屋市内にしかお店がないため、

名古屋に行かないとその味わいは体験できないのであります。

名古屋市内にいくつか店舗がありますが、

昭和ノスタルジックな昔ながらの喫茶店文化を残しているのが大須本店。

「コンパル」の看板の文字もガラスのショーケースもレトロで泣ける。

ちょうど開店時刻の8時をちょっと過ぎたばかり。いざ入店。

う~ん・・・濃いコーヒーのいい香りが店中に漂っている。

「いらっしゃいませ!お好きな席にどうぞ」。

ベテランの店員さんが気持ちよく迎えてくれる。

年季の入った赤いビロード張りの椅子。

律儀に直角な背もたれに低めのテーブル。

控えめな白色灯の暖かな照明。

落ち着く、心底落ち着く。

初めてなのに懐かしい。

ここは昭和の昔ながらの喫茶店文化の本丸御殿だ。

一瞬で恋に落ちる。

さあ、何を食べましょうか。

メニューを眺めているうちに続々とお客さんが入ってきて、

ものの10分もたたないうちに店内はあっという間に満席。

しかも観光客よりも圧倒的に地元の人が多いのです。

朝の一仕事を終えた大須の大旦那っぽいおじいさんが朝刊を広げていたり、

車椅子のおばあさんと一緒の孫娘さんやご近所ルックのご夫婦連れなどなど、

「朝はコンパルで」が当たり前のリアル名古屋感が満載。

本当に長く長く愛されてきた老舗なのねぇ。

「コンパル」の創業は昭和22年(1947年)。

戦争中の名古屋空襲で壊滅的な被害を受けた中心部にあって

戦後間もなくの頃から長く長くこの地で商いを続けてきたのですね。

レトロでノスタルジックな店内は掃除が行き届き、

はじめてのお客さんも行きつけの常連さんも変わらぬ温かい接客。

お店に入った瞬間から、コンパルが70年以上愛されるわけがわかる。

ちなみに「コンパル」という名前は

創業者が戦争で中国へ行ったときに

繁盛していた飲食店「金春」にあやかって名付けたのが由来とか。

昭和は戦争の世紀でしたが、名物喫茶店の歴史にも無関係ではないのですね。

朝一番、普段着でコンパルまでお散歩してモーニング。

平和な名古屋の素顔の朝に出会える貴重なお店。

コンパル大須本店。

名物メニューのお話は

明日へと続く♪

(写真は)

名古屋の朝は

「コンパル大須本店」で。

地下鉄に乗ってでも

早起きしても

行くべきおすすめの名喫茶店。