美ら海よ

逞しい海人が

手製のもりを手に

エメラルドグリーンの海へ

身を躍らせて潜ったそのとき、

画面に速報が流れた。

しとしと雨が降る週末。

撮りためていた番組録画を観ていたときのこと。

あまりの象徴的なタイミングに驚きました。

NHKで8日に放送された「美ら海旅ドローン大航海」。

シーカヤックの旅人が八重山諸島を大航海する旅を

ドローンが空中や海中から撮影した番組であります。

旅は北半球最大クラスの石垣島の白保のサンゴ礁からスタート。

シーカヤックが滑るように美しいイノーの浅瀬をゆく様子を

ドローンならではの鳥の眼でとらえた雄大な映像が続きます。

太陽の光線や海底の構造やサンゴ礁の群落によって

あらゆる美しい青のヴァリエーションを繰り広げる沖縄の海。

まさに美ら海。

さらに旅は石垣島と西表島の間に広がる石西礁湖へ。

東西20km南北15kmの広大なサンゴ礁海域には400種超の造礁サンゴが分布、

その美しい景観と豊かな生態系は沖縄の海のサンゴ幼生の供給源です。

シーカヤックは石西礁湖の中にある小浜島に上陸。

この島で今も伝統漁を続ける海人を訪ねるのでした。

小浜島の漁師が続けているのが八重山でも珍しくなった「ティール漁」。

ティールと呼ばれる籠の仕掛けを海底に沈めておき、

かかった魚を手製の竹のもりで一瞬で仕留める素潜り漁です。

まあ、その62歳の海人の見事なボディといったら半端ない。

ライザップでもなんでもない「仕事」で出来上がった筋肉は海人の勲章だ。

エメラルドグリーンの石西礁湖の海の上を

もりもり盛り上がった上腕と引き締まった体幹の筋肉を駆使して

小さな船を高速船並みに自在に操りビュンビュン飛ばし、

やがてある地点で船がぴたりと止まりました。

地図も目印も住所表記もないサンゴ礁の海の上なのに、

海人は仕掛けたティールの場所がピンポイントでわかるのです。

逞しい肉体をドライスーツに包み、ゴーグルやフィンを着け、

島の竹で作った手製のもりを手に、

海人が底まで見通せそうな美しい青い海へ身を躍らせた瞬間、

再生された画面の上方に「ニュース速報」の字幕テロップが。

「沖縄県 翁長知事が死去 67歳

 すい臓がんの手術を受け治療中」。

ああ・・・そうだった。

番組が放送された8月8日、

沖縄県の翁長雄志知事が亡くなったのでした。

美しい沖縄の海に基地はもう要らないと満身創痍で戦ってきたリーダーが

入院中の病院で息を引き取りました。67歳でした。

同世代の海人が美ら海からの恵みを頂こうと海中へ潜った瞬間の映像に

その美ら海をオール沖縄で守ろうとした人の急逝を報せる速報が入る。

62歳の海人が真っ直ぐ迷いなく美しい海を素直に潜っていく。

美しく豊かな海と一体となった海人の姿は

辺野古の海に暮らすジュゴンと重なってみえてくるようだった。

ジュゴンが暮らし、ウミガメが産卵する美ら海を守らねば。

67歳で急逝した翁長知事の言葉が蘇ってきます。

魚体を傷つけないように海人は正確に頭だけをもりでつき、

大きな大きなアラミーバイやイラブチャーを次々と船に揚げる。

さらには一抱え以上もある巨大なシャコガイまで。

船上でクーラーボックスの蓋をまな板にして

ささっと獲れたての鮮魚「いまいゆ」をさばく海人。

純白のシャコガイの器にして

イラブチャーやシャコガイの豪快な刺し身が盛り付けられた。

ああ・・・沖縄の美ら海は、これほどまで豊かで美しい。

海と暮らし、海に育まれて、海と生きてきたのだ。

沖縄の美ら海よ。

昨日11日、台風接近で雨が降る中、

那覇市の奧武山運動公園には7万人の沖縄県民が集まりました。

辺野古NOを訴える県民大会では参加者全員が翁長氏を悼んで黙祷を捧げ、

その壇上には翁長氏がかぶる予定だった帽子が置かれていました。

大会カラーのブルー。

それは何としても守りたかった美ら海の色、なのでした。

心よりご冥福をお祈りします。

(写真は)

平成最後の8月。

さまざまに心が揺れる季節。

北海道の畑から晩夏の恵みがまた到来。

美しいバイカラーのトーキビ。

品種名は「マーガレット」。

美らトーキビ、です。