静かな文字

夏だから、

本を読もう。

静かな文字に

感謝を込めて

本を読もう。

悲しい・・・切ない・・・辛い。

「12万冊 悲劇」。

そんな見出しと共に朝刊に掲載されていた1枚の写真に

本好きの胸がぎゅっと締め付けられました。

豪雨被害を受けた岡山県倉敷市の市立真備図書館で

片付け作業が始まった様子を写したもの。

頑丈な書架が無残に倒れ、

泥水に浸かった夥しい数の本が瓦礫のごとく積み重なっています。

12万7千冊の本が被害を受け、廃棄するしかないそうです。

もう読まれることのなくなった本たちの悲鳴が聞こえるような気がした。

「真備の文化の中心がこんなことになって悲しい」。

館長さんのコメントが切なすぎる。

あまりに悲しい光景。

紙の本は泥水や火災にはひとたまりもありません。

だから電子図書・・・確かにその必要性も利便性もわかります。

が、やっぱり、どんな苦難があろうとも、どんなに時代が進もうとも、

紙の本はなくならない、なくしたくない。

そんな気持ちでめくった朝刊に勇気を得る文章が載っていました。

「スマホの文字 脳に緊張?」

生物学者の福岡伸一さんが書かれたコラムの見出しです。

科学論文もほとんど電子化されていて発表や保管、検索には便利だけど

福岡さんは読むことに関してだけは紙の上で読みたいそうで、

面倒でもいちいちプリントアウトして読んでいるとか。

新聞も本も紙の方が好きなのは

単なる「我ら年寄り世代の古い哀愁」だけではなく、

生物学的理由があると指摘しています。

生物の視覚は動くものに敏感。

敵や獲物に対して反射的に行動するため、身体は緊張状態に入る。

一方、じっくり観察、分析、思索するためには

対象物がじっと止まっている必要があるのだそうですが、

スマホやパソコン画面の文字は止まっているように見えて、

実は電気的な処理で高速に明滅されているので、

脳にサブリミナルな刺激を与えているらしいのです。

そうか、そうだったのか、福岡先生。

だから、アタシは、どうしてもいまいち電子図書に手が伸びなかったのか。

新聞も雑誌も小説も、やっぱり、紙がいい。

仕事の資料もいちいちプリントアウトしなくてもいいはずなのに、

色々思考をまとめたり、進行、構成を考えるには、

机の上に紙の資料を広げて検討しないと落ち着かなかったのは、

デジタルの文字が、実は止まっているようで動いていたからか。

確かに大量の資料を詠み比べる時などは

デジタル画面をスクロールする方が仕事効率は良いのですが、

考えをまとめる、深く考察する、思索する時には

紙の上で静かに止まっている文字がいい。

デジタルネイティブ世代はどうかわかりませんが、

「生物の特性はそう簡単に変わらないはずだ」と福岡先生も仰っていました。

思索する人間の脳は、静かな文字が好きなのだ。

図書館がいつも静かなのは

利用する人間のマナーもさることながら

書架に収まっている紙の本の文字がじっと動かず静かだから、なのかもしれない。

豪雨災害に見舞われた図書館にも

また新しく、静かな本たちが、たくさん並びますように。

本好きとして、心から願う、夏でした。

(写真は)

勇払原野の奇跡の果実

ハスカップのお菓子たち。

苫小牧の三星ご自慢のスイーツ。

夏の読書の合間にいただきます。