春色のパレット

白い雪が解け、

山や森に緑が芽吹き、

花々のつぼみが膨らみ、

色彩があふれだす季節に

春色のパレットを食す。

豊かな大地の恵みを引き出す北海道フレンチ。

昨日に引き続き、うりずん沖縄プチ旅リポートはちょっと休憩、

ミシュラン三つ星に輝く「モリエール」の春色ランチのお話を。

先週末、母の米寿のお祝いで久しぶりに訪れましたが、

最高に幸せな時間を過ごさせて頂きました。

母娘ともども、ますます寿命が延びちゃいます(笑)。

北海道の食材の美味しい瞬間を見逃さず、

最高の技で仕立て上げ、最高のタイミングで、

温かくフレンドリーなおもてなしで提供されるお料理の数々。

序奏から終奏まで完璧に奏でられた感動のメニューを

記憶の限りご紹介いたします。

幸せの序奏は小さな前菜たちから。

スターターは牛蒡のスープ。

小さなデミタスカップに注がれた大地の色のポタージュ。

カップを持ち上げた瞬間、牛蒡の香りが華やかに立ちのぼる。

「見た目よりずっと、物凄く熱いので、お気をつけ下さいね。

特に二口、三口目も油断されませんように」。

メートル・ド・テールの方の警告(笑)は大げさではなかった。

確かに熱い。小籠包並みの注意を払って、大地の恵みを堪能。

二品目は萌え出る新芽のような鮮やかな緑が印象的。

爽やかな香草風味のバターソースをからめたニョッキです。

新緑の風のようなバジルの香りと柔らかなニョッキの組み合わせが最高。

このニョッキが赤ちゃんの耳たぶよりも柔らかい優しい食感でいながら、

ちゃんと北海道のじゃがいもの力強い味わいが感じられるのです。

ああ・・・真狩村のじゃがいも畑の真ん中にワープしたみたい。

小さな前菜の3品目、まさに、春が来た。

「ふきのとうの、てんぷら、でございます。はい、本当にてんぷら」と

サービスされたお皿は、まるで懐石料理か、現代アートのよう。

山葡萄の蔓のような枝の上に、ふきのとうのフリットがちょこん。

摘みたてのふきとうに帆立のムースを詰めて太白胡麻油で揚げた一品。

確かに「てんぷら」。お奨め通り、手づかみでパクっ。

ふきのとうの野趣味あふれる香りとほろ苦さと帆立の甘みと旨みが

春の輪舞曲を奏でてくれる。

小さな前菜たちにすでにノックアウトされそうですが、

ここから、前菜のお皿が始まるのでした。

前菜一皿目が、これぞ、ザ・モリエール。

30数年前の開店当時からこだわり続けている自慢の温野菜料理。

季節の野菜やハーブ20数種類が真っ白いお皿のキャンバスに

春色の美しい景色を描き出しています。

ほぉぉぉぉ・・・印象派の絵画のよう。

モリエール的温野菜、食べ方には正しい手順があります。

まず野菜全体を下に隠れた爽やかなバター風味のソースごと、

さっくりさっくり2度かき混ぜ、

つぎにお皿を彩る赤や緑の美しい野菜ピューレ、金色の胡麻などを

一緒にさっくりさっくりさっくり3度混ぜたら、はい召し上がれ。

うわぁ・・・春の喜びがお口の中でダンスを踊っている。

香り、味、食感、20数種類、すべてが絶妙に完壁に調理されていて、

お野菜ひとつひとつのお喋りがはっきり聞こえてくるようだ。

もうこのあたりから陶然としてきた。

次の前菜「鰊の燻製仕立て」はもはや美術品のようだし、

お魚料理の「毛蟹のリゾット」は悶絶する旨さ、

お口直しの洋梨のソルベでまた別の夢を見て(笑)、

メインのお肉料理、ほろほろ濃厚な「牛頬肉の煮込み」には、

熱々焼きたてのモリエール名物じゃがいものグラチネが

そぉ~っと添えられています。

桃源郷に誘われたような夢見心地の席に

それは美しいチョコレートケーキが運ばれてきました。

華奢な蝋燭には火が灯され「祝 米寿」と書かれたプレートまで。

何と嬉しいお心遣いでしょう。

88歳の母がお見事な肺活量でふっ!一気に火を吹き消す瞬間を

写真はもちろん、動画でも撮ってくださった給仕長さん、

もうプロフェッショナルでハートフルなおもてなしに

最後まで感激いたしました。

ヘーゼルナッツとショコラが何層になった特製の「オペラ」。

そして、この日のデザートは「クレーム・ダンジュ」。

天使のクリームという名の通り、ふわふわの天使の羽のような味わいは

北海道の健やかな牛乳の底力を存分に感じさせてくれました。

う~ん・・・どう書いても、私の筆力では、

この日のお料理のすべてを伝えきれない・・・。

モリエールを語るにはまだまだ修行が足りない。すみません。

大きな窓から円山公園の緑を臨む、

それはそれは居心地の良い祝祭空間。

モリエールのお料理を味わえば、

北海道の森や畑や川や海へ瞬間移動できる。

豊かな大地を丸ごと体験できるフランス料理店。

大切な人と、ぜひ、どうぞ。

(写真は)

「モリエール」

前菜の温野菜は

春色のパレット。

季節ごとに絵が替わる。

秋色、冬色も鑑賞したいな。