3枚の看板
田舎道の道路に
突如現れた真っ赤な広告。
3枚の看板がつきつける
強烈なメッセージ。
その現実にたちすくむ。
アカデミー賞主要6部門ノミネート、
ゴールデングローブ賞最多4部門受賞などなど
映画界の大注目作品「スリービルボード」を観てきました。
エンドロールが終わってもなかなか席を立てない。
ずっしり重い何かがのしかかっているんだけど、
不思議にどこか爽快でもあり、
自分の心をどこにおいていいのか戸惑った。
こんな映画は、はじめてだ。
登場人物の誰に共感していいのかわからない。
いや、もしかすると、誰にも共感できないようで、
実はすべての人物にどこか共感しているのかもしれない。
怒り、絶望、愚かさ、不寛容、差別、暴力・・・。
大切なものをまもるために、人間は予想もつかない道を選ぶことがある。
スクリーンのこちら側で傍観して観客に鋭く問いかけられたようで、
なんというか、まいった、席を立てなかった。
映画の舞台はアメリカのミズーリ州の田舎町エビング。
「道に迷った奴か、ぼんくらしか通らない」ような片田舎の道路沿いに
ある日、3枚の真っ赤な広告看板が出現する。
地元警察を痛烈に批判するメッセージを出したのは
7か月前に娘をレイプ殺人事件で亡くした怒れる母ミルドレッド。
何の進展もない捜査状況に業を煮やし宣戦布告をしたのだ。
広告に名指しで責任追求されたウィロビー署長は人情味あふれる家庭人、
町の人に敬愛されていたが、末期がんを患い、
人生の終止符のつけ方に人知れず悩んでいた。
その部下であるディクソン巡査は強烈な人種差別主義者だが、
彼もまたどうにもならない自分の人生に行き詰まっている。
そう、登場人物みんながどうにもならない何かを抱えているのだ。
町の平穏をかき乱すようなミルドレッドの言動に人々は反発を示すが、
彼女は怒りをエネルギーにブルドーザーのように反感を蹴散らしていく。
つなぎの労働着に身を包み、バンダナで頭を覆ったミルドレッド、
したり顔の神父に対しても「少年愛を見過ごすようなあんたたちに
説教する資格などない」と木っ端みじんに論破していく。
やがてとんでもない行動に突っ走っていく彼女だけれど、
ユーモアさえ感じさせる爽快な毒舌に観客は引きこまれていくのだ。
怒っている。
ミルドレッドは、怒っている。
最愛の娘を惨殺した犯人に、捜査が進まない警察に、したり顔の神父に、
無理解な町の人に、19歳の恋人に走った暴力夫に、
そして、何より、思春期の娘に最後にかけた自分の言葉に、
彼女は、怒っている。
舞台はミズーリ州の田舎町で、
残忍な事件がきっかけになっているけれど、
思春期の我が子を育てた親なら、誰しもはっとする場面がある。
車を貸す、貸さないと言い争ったあげく、母は言うことを聞かない娘に
つい感情に任せて、言ってはいけないある一言を投げつけてしまい、
それが生前の娘へかけた最後の言葉になってしまったのだ。
その後の娘の悲劇を予告させるような一言を。
ミルドレッドの暴走とも思える怒りの矛先は、
もしかすると、その一言を放った自分自身なのかもしれない。
どこにも持って行き場のない、怒り。
誰にも癒しようがない怒り。
そして差別主義者とも思えたディクソン巡査が抱えた怒りとも
どこかで通底していたのかも・・しれない。
映画的にはこれほどすっきりしない結末はないし、
同時に、これほどすっきりした結末もない。
ぽんと、アメリカ南部の田舎道に放り出されたような感じ。
エンドロールを茫然と眺めていると、
ふと、しわがれた声が聞こえたような気がした。
「あんたはさ、どう思うのさ?この現実」
つなぎ姿のミルドレッドに無言で問われたような気持になった。
原題は「THREE BILLBOARD OUTSIDE EBBING MISSOURI」
町はずれの3枚の広告看板。
今のアメリカの縮図は
強烈で、容赦がなかった。
(写真は)
見応え200%の映画のあと。
おやつでリカバリー。
もりもとの新製品。
プティ・シナモン。
美味しいよ、ミルドレッド。

