市場スロージュース
「ありがとうね~、
ゆっくりしてってね~」。
小窓からレモン水と共に
おじさんが声をかけてくれる。
市場の片隅の癒しオアシス。
夏の沖縄旅2017・最終盤7日目は朝からお買い物三昧。
首里の老舗で伝統の琉球菓子、
長田の丸玉製菓工場で焼きたてタンナファクルーを入手、
開南「仏壇通り」の漆器店で沖縄の祈りの心に触れ、
公設市場奥のお気に入り食堂で遅いランチで元気チャージ、
いよいよ、沖縄食材買い出しの始まりです。
那覇市民の台所である牧志公設市場。
「上原ミート」で沖縄伝統の保存食「スーチカー」をゲットし、
荷物の少ないうちに立ち寄ったのが「コーヒースタンド小嶺」。
戦後まもなく市場ができた頃から入り口のすぐ片隅で
お客さんを迎え続けて半世紀以上。
年季の入ったレトロな木造スタンドは
今も昔も市場の癒しスポットなのです。
小窓の向こうには青いシャツ姿の柔和な笑顔。
父親から店を引き継いで30年以上という店主の小嶺さんです。
店名はコーヒースタンドですが、
お客さんの大半が注文するのは1杯120円の「冷やしレモン」。
沖縄で「ヒラミレモン」と呼ばれるシークヮーサーのジュースは
地元の人が「懐かしい、子供の頃を思い出す味」と絶賛、
観光客にも大人気の爽やかドリンク。
さあ、旅人も乾いた喉を潤すとしましょう。
スタンドの小窓の向こうにいる小嶺さんに
「冷やしレモン、ひとつ下さい」と早速オーダー。
「はい、冷やしレモン、ひとつね」。
にっこり笑ってグラスにタンクからレモン水を注ぎ、
「ありがとうね~、ゆっくりしてってね~」と
優しい言葉をかけながら小窓から手渡してくれた。
じわぁ~~~ん・・・癒されるぅ~・・・。
おじさんのこの言葉こそがオアシスだ。
スタンド前の小さなベンチにおじぃやおばぁが
ちんまり座ってくつろいでいるわけがよくわかる。
じわっと目頭が熱くなるような温かさがこもった声色。
優しいお人柄の小嶺さんが作るレモン水が
これまた絶品!たまげるほど美味しい。
爽やかな香り、程よい甘み、
酸味は柔らかく、苦みなどまったくない。
ングング、ゴクゴク、うひょー、旨い!
余りに美味しくて一気に飲み干してしまった。
こんな絶品シークヮーサージュースは初めて。
何が違うんだろう?
空っぽになったグラスを返しながら
小窓の向こうの小嶺さんにさっそく取材開始。
「すっごく、美味しかったです。ここで作っているんですか?」
「はい、ここでね、私が全部手搾りするんです、これをね」と
小嶺さんが可愛い実物を手に説明してくれました。
「10月終わり位のこれくらい黄色く色づいたシークヮーサーを
この機械でね、ひとつひとつ手搾りするんです」と
ピカピカに磨きこまれたレトロな搾り機を
これまたいとおしそうに見つめる。
一度に大量に搾れる電動機械を使わず、
ひとうつひとつ、加減しながら丁寧に手搾りするため、
種や皮の苦み成分や雑味のない爽やかな果汁が搾れるのだそうです。
毎年秋、黄色いシークヮーサーの収穫期にどっさり仕入れ、
小さなスタンド内でコツコツコツコツ手搾りし果汁を冷凍ストック、
「ほら、これね」と冷蔵庫からレモン色の果汁を見せてくれました。
まさに沖縄コールドプレスジュース。
低速回転のジューサーで材料に熱を加えず、
強い圧力をかけて絞った昨今注目のジュースと
優しい原理はほぼ同じではなかろうか。
ヒラミレモンに余計な負荷をかけずに
おじさんがひとつひとつ丁寧に手搾りた冷やしレモンは
那覇の台所、公設市場名物のスロージュース、なのだ。
しかも一杯120円。どこまでも庶民の味方だ。
コーヒースタンド小嶺の朝は早い。
まだどの店も開いていない朝7時過ぎから開店準備、
小嶺さんはスタンドの銀の部分を「チャー磨き」する。
癒しの一杯を求めてくるお客さんのためにとにかくピカピカに。
やがて氷屋さんが持ってきた大きな氷を
レモン水とコーヒーのタンクにセットして準備完了。
一旦家に戻ってひと休み、昼に小窓を開いて開店。
ありがとうね~。
ゆっくりしてってね~。
賑やかな市場の片隅で今日も誰かが
レモン水とおじさんの言葉に癒されている。
那覇牧志公設市場の一階入り口すぐ。
スローなジュースはいかが?
(写真は)
説明用にとってある
黄色いシークヮーサー(ヒラミレモン)を手に
一生懸命優しく教えてくれる小嶺さん。
小窓の向こうの笑顔は
市場の宝物。

