小さな勇者
その小さな葉には
驚くほどの芳香と
勇気と大胆さを鼓舞する
不思議な力が宿っている。
芳しき立麝香草よ。
食欲の秋につき、
夏の沖縄旅最終盤リポートはちょっと週末休憩。
食卓に北海道の秋の味覚が登場する季節になりました。
昨日の金曜ごはんの主役は秋鮭とじゃがいもとかぼちゃ。
秋鮭もじゃがいもとかぼちゃも夫の知人からの産地直送。
北海道の豊かな恵みと夫の人脈に感謝の秋であります。
皆々様ご馳走様でございます。
「秋が旬の魚が不漁」。
日経新聞が心配するほど秋の魚の不漁が続いています。
サンマの漁獲量は前年同期と比べて5割減、秋鮭は4割減、
店頭価格も3~4倍に高騰、と伝えていました。
確かに鮮魚コーナーの秋鮭パックのお値段は
豊漁だった頃に比べると値上がりしているだけに、
新鮮な産地直送でいただけるのは本当に幸運。
大切な旬の味覚、大切にお料理させて頂きます。
北海道の川で生まれ、海へ下り、大きく成長し、
再び生まれた川へと戻ってくる鮭を
海に仕掛けた大型の定置網で獲る北海道の秋鮭漁。
水揚げのピークは9,10月、だから「秋鮭」。
天然の秋鮭は高たんぱく、ビタミンやEPADHAもたっぷり、
身はしっかりとして程よい脂がのったヘルシーな食材。
秋鮭鍋やムニエルやフライ、レシピは色々ありますが、
ほっくほくのじゃがいもが畑直送で届いたばかり。
我が家の秋の定番料理「秋鮭の香草オーブン焼き」に決定。
ル・クルーゼのオーバルグラタン皿に
厚めにスライスしたじゃがいもをたっぷり敷き詰め、
その上に綺麗なピンク色の秋鮭の切り身を並べます。
うふふ、野宮版鮭じゃが焼き、ポイントは香草パン粉。
香草はローズマリーでもオレガノでもバジルでも
もちろん美味しくできますが、色々試してみましたが、
秋鮭とじゃがいもには「タイム」が一番合うような気がする。
細めのパン粉に細かいみじん切りのにんにく、
フレッシュなタイムの葉を混ぜて香草パン粉を作ります。
乾燥タイムも売っているけど、
生のタイムのフレッシュで鮮烈な香りにはかないません。
ただ、タイムは葉っぱが小さいのがちょっと難点。
シソ科の常緑多年草ゆえ、華奢な小枝に穂のように
5~6mmほどのゴマ粒くらいの可愛い葉っぱがついていて
このちっちゃな葉を小枝から取るのがなかなか大変。
力を入れ過ぎると小枝が折れちゃうし、葉もつぶれそう。
時間がないときにはお奨めできない作業です(笑)。
美味しくな~れ、美味しくな~れ。
イライラ虫をなだめながら慎重に葉っぱをむしる。
そんなイライラ虫を大人しくさせてくれるのが
小さな葉っぱが放つ鮮烈な芳香です。
別名「立麝香草」と呼ばれるタイムの語源は
ギリシャ語で「防腐」を意味する「チモン」。
その清々しい香り成分「チモール」には殺菌、防腐作用があり、
古代ギリシャの時代から調理や薬用に利用されてきました。
さらに、その清々しい品のある香りには
人間の能力を高める働きがある信じられ、
「勇気」と「大胆」の象徴とされていたそうです。
ローマ時代には兵士たちが
タイムを浸しておいた水を浴びて勇気を鼓舞し、
中世ヨーロッパでは貴婦人たちが戦いに出る騎士たちに
タイムの小枝を縫い付けたスカーフを贈って励ましたと
いわれているそうです。
5mmほどの可愛い葉っぱは小さな勇者。
忍耐強く摘み取ったタイム入りの香草パン粉を
じゃがいもの上の秋鮭にたっぷり載せ
オリーブオイルをまわしかけたらオーブンへ。
後は高温で30~40分焼けば出来上がり。
2017年初物「秋鮭の勇敢香草パン粉焼き」の完成。
魚との相性がいいことから「魚のハーブ」とも言われるタイム、
清々しい香りが秋鮭の魅力を存分に引き出しています。
秋鮭の旨みが乗り移ったほっくほくのじゃがいもも抜群。
秋刀魚に秋鮭、夏のイカ。
海水温の影響なのか、魚たちの事情なのか、乱獲なのか、
旬の魚の不漁続きは心配なだけに
勇敢なるハーブ、タイムの香りをまとった秋鮭を頂ける幸せが
なお一層、しみじみ、しみじみ、心に沁みてきます。
色々事情はあるだろうけれど、ウチのキッチンに来てくれたら、
また一生懸命お料理して、美味しく美味しく頂こうと思います。
北海道の秋の恵みに
心から感謝の金曜ごはん、でした。
(写真は)
2017年初の「秋鮭の香草オーブン焼き」。
ちょっと焦げちゃったのはご愛敬。
鮭とじゃがいもとタイムさえあれば、
勇気をもって生きていける。
そんな気持ちになる秋の一品。

