苔色の至福

美しいお寺の庭。

古都を流れる清流。

しっとり潤うその色は

世界に自慢したい日本の色。

苔色のぞっこんの一皿。

短い帰省はあっという間。

昨夜は翌朝進学先へ戻る息子との最後の晩餐。

秋イカのフリットなど初秋の北海道の味覚に

この夏の極上到来物を一挙に放出しました。

美味しい物を頂けば子供に食べさせたい、

いじらしい親心はいつの時代も万国共通(笑)。

はこだて和牛の特上サガリは

とびきり立派なキングもやしを添えて。

そして夏の間冷蔵庫で待機していた夏の逸品登場。

京都の川魚問屋・七條鮒定の絶品鰻であります。

創業120年の老舗が京都の水で最高の状態で活かした

国産鰻の白焼きと蒲焼の垂涎セット、

満を持して初秋の食卓に登場です。

真空パックされた鰻を食べやすい大きさに切り、

上等のお酒を少々振りかけて、レンジで1分間加熱。

ラップをはずしたと途端、鼻腔をくぐる香ばしい匂い。

白焼きはワサビと沖縄・久高島のマース(塩)とともに

蒲焼はゆめぴりかの上に載せ、プチ鰻丼で頂きました。

はたしてそのお味は・・・?

う・・・うんまぁ~い・・・!

家族一同、悶絶感動の美味しさでありました。

鰻本来の味を楽しむ白焼きに驚愕。

上品な脂がのった身はふっくら、旨みと甘みが凄い。

ただただ、うっとり深い滋味を味わう。

う~ん・・・白鷺が佇む京都鴨川の清流が目に浮かぶ。

清らかなせせらぎを賞味しているようだ。

こんな鰻には苔色の皿がよく似合う。

夏の沖縄旅で手に入れた大嶺工房の緑釉平皿。

沖縄の陶器なのにどこか京都を感じる色彩は

寺院の庭を覆うビロードのような苔を思わせます。

愛知県三河一色産、京都育ちの鰻に良く似合う。

極上鰻を苔色の器で食す至福。

京都盆地は実は水の都。

地下深層からの湧水が豊富でその水瓶は琵琶湖ほどもあるとか。

七條鮒定では今もなおこの清らかな湧水をくみ上げた生け簀で

鰻を活かしながら泥を吐かせて臭みを取り除いているそうです。

取り扱うのは生育1年未満のいわゆる「新仔」。

皮が柔らかく新仔は関西鰻に欠かせません。

背開きの関東とは反対に

腹開きにした鰻を皮ごと香ばしく焼きあげるの関西の特徴。

皮が分厚いものやしっかりしている鰻は不向き、

清らかな京都盆地に湧水で大切に活かした新仔でなければ

京のはんなり上品な白焼き、蒲焼にはならないのです。

確かにふっくらした身はもちろん、

色白で柔らかい皮にも驚きます。

極上京鰻にはこれまた到来物のヴーヴクリコ。

冷えたシャンパンと苔色が似あう京都の鰻。

ああ、こんな贅沢、バチが当たりそう(笑)。

「美味しいものは家族そろって食べるのが一番だね」。

珍しくシャンパンをお代わりしした夫が

赤くなった顔をほころばせてしみじみ呟く。

同感です。

美味しい幸せは家族みんなで分かち合いたい。

勉学に忙しい息子、今度いつ帰省できるのかわかりませんが、

美味しいものは冬眠前のクマさんのように

夫婦していそいそとっておく日々がまた始まります。

いくつになってもお腹いっぱい食べさせたい、んだよね。

ナナカマドの実が

いつのまにか真っ赤に色づいている。

成長した息子の背中を見送りながら

またひとつ夏が過ぎていった。

さあ、食欲の秋だ(笑)。

(写真は)

京都は七條鮒定の鰻白焼。

清らかな湧水で活かされた鰻には

沖縄生まれの苔色の平皿が似合う。

秋の苔色の至福。