海のチャンプルー

海の恵みを

あるがままに

味の決め手はおばぁの愛。

小さな港町食堂で

世界一のイカ料理を食す。

一雨ごとに空気が澄み渡り、

空の青さと高さが増していく。

爽やかな秋晴れを愛でながら、季節をちょっと巻き戻し、

夏の沖縄旅2017・終盤6日目リポートを続けましょう。

青い海と聖地と工芸の街、本島南部南城市をクラフト散歩、

手染工房「Docatty」「陶房 眞喜屋」「宮城陶器」と巡り、

アーティスティックな陶器が人気の「器 bonoho」へ。

遅いおひるごはんは造形作家佐藤尚理さんお奨めの

「今のうちに行っておくべき」超レア食堂を訪ねました。

個性的な工房が点在する佐敷地区から知念半島を南下、

国道331号線を海側へ入ると小さな漁港がありました。

セリも漁も終わった昼下がりの具志頭の港川漁港は

人影もなく、干したイカや魚がのどかに揺れています。

静かな青い海に向かってぽつんと佇む一軒の食堂。

年季の入ったコンクリート作りの建物には暖簾もなく、

ただ外壁に大らかなペンキ文字でこう書かれていました。

「南国食堂」と。

なんとストレートな店名。超ノスタルジックな雰囲気。

小さな港で地元の人に愛されて続けてきた南国食堂。

昔ながらの食堂が再開発や後継者不足で

どんどん姿を消しつつある中、

沖縄好きにとっては世界遺産級に希少な存在であります。

来世紀に残したい沖縄の宝のひとつ。

入って、食べて、存続に僅かでも貢献せねば。

旅人はほとんど前のめりで

昭和の映画のワンシーンのような味のある建物に向かう。

今にも健さんか寅さんがふらりと出てきそうな扉を開けて店内へ。

テーブル席と小上がりと角のテレビと壁にぺたぺた張られた手書きの品書き。

そうそう、食堂はこうでなくちゃ。気さくな庶民的雰囲気がたまらない。

「はい、はい、いらっしゃい」。

カウンターの向こうの厨房で中華鍋をふるいながら、

小さなおばぁが声をかけてくれた。

お昼どきはとっくに過ぎていましたが、

地元の漁師さんらしきおじさんが沖縄そばをすすり、

海が見えるカウンター席には観光客らしき夫婦連れの姿。

え~っと・・・どこに座ろうかなぁ・・・新参者が迷っていると

「ここ、ここ、涼しいから」と真ん中のテーブルにどんと座った

ジャージ姿の迫力あるお姉さんが、雑誌をどけてくれる。

港町のお姉さん、見た目と違って(笑)めちゃ優しい。

ロケーション、建物、おばぁ、お客さん、もう最高のキャスティング。

山田洋二監督の映画の中に迷いこんだようだ。

「あ、ありがとうございます」と

お姉さんがすすめてくれたクーラー前のテーブルに座る。

さ~て、何にしようかって、メニューには迷わない。

南国食堂に来たからにはコレしかない!

「あの、イカチャンプルー定食、お願いします」。

厨房を一人で切り盛りするおばぁに声をかけて、

さあ、あとは、名物料理を待つだけ。

と、その時「ごちそうさまでした~」と先客のご夫婦が席を立つ。

おっと!海が一望できる小さなカウンター席が空いた。

「すみません、あっちに移りますね」と

お姉さんの好意に感謝しつつ、特等席へ移動。

4人座ればいっぱいの海に向かった小さなカウンター。

目の前に広がるのはとことん青い海と

真っ白な午後の日差しに照らされる昼下がりの港の風景。

窓越しの港の風景が、南国食堂の前菜だ。

やがて「はい、お待ちどうさまぁ~、イカチャンプルーねぇ」。

白い長靴姿のおばぁが熱々の定食料理を運んできてくれた。

近くの糸満漁港がセーイカの漁獲量日本一で知られるように

美味しいイカが獲れる沖縄南部では

この「イカチャンプルー」が名物料理となっているのです。

たまねぎともやしとぶつ切りのイカがどっさり豪快に炒められ、、

ほかほか美味しそうな湯気を立てています。

さあ、いっただっきま~す!。

少し赤みを帯びたイカとたまねぎともやしを一緒に頬張る。

う・・・うんまぁ~~~い!

イカは柔らかく、甘く、旨みが濃く、野菜と相性も抜群。

北海道のスルメイカとはまた違う食感と旨みがあります。

「このイカ、何イカですか?」食器を下げに来たおばぁに聞くと

「ん?今日はね、ミズイカ」との答え。

ミズイカ?セーイカじゃないんだ。初耳でしたが、

どうやら九州以南の海で獲れる「アオリイカ」の別名らしい。

甘みがあってイカ類の中で最も美味ともいわれるミズイカ。

大きく3種類に分かれるそうで、沖縄の漁師さんはその体色から

「シロイカ」「アカイカ」「クワイカ」と昔から区別して呼んでいようです。

してみると、本日の南国食堂のイカチャンプルーはアカイカかもね。

イカにはうるさい北海道人もびっくりの旨さだ。

目の前の港で揚がったばかりの新鮮なイカを

豪快に炒め合わせる「イカチャンプルー」。

南部の港町でなければお目にかかれないレア料理。

これって、あれよね、お肉が貴重だった昔、

北海道の港町では海で獲れるホッキカレーや

ツブカレーがごちそうだったのと同じことよね。

地域の食材を美味しく食べる暮らしの知恵。

ここではみんなイカチャンプルーで大きくなったんだろうね。

畑のゴーヤー、台風が来ても大丈夫な乾物の麩、

毎日売りにくる島豆腐、そして港で揚がる新鮮なイカ。

チャンプルーには沖縄のあるがままの暮らしがぎゅっと詰まっている。

先代のお母さんから継いた2代目のおばぁが切り盛りする南国食堂。

60年以上、地元の人々に愛されてきた郷土食「イカチャンプルー」、

これも来世紀に残したい世界遺産級名物料理だ。

絶品、海のチャンプルー。

青い海を眺めならぜひご賞味を。

初めてなのに懐かしい。

泣きたくなるほど美味しい。

おばぁの味だ。

(写真は)

南国食堂名物「イカチャンプルー」。

北海道のイカソーメンも負けない。

南国のイカは甘く柔らかい。

ご飯がすすむよぉ。