優しいしーぶん

看板ものぼりもない。

フツーのビルの2階が

イルクルーな玉那覇さん考案の

庶民派おやつの故郷だった。

こりゃ、迷うよね~(笑)。

夏の沖縄旅リポートも終盤に差し掛かってきました。

明日は札幌へ帰る7日目は朝からお買い物三昧。

朝一番で首里にある琉球菓子の老舗「新垣カミ菓子店」へ。

王朝時代からの製法を手作りで守り続ける工房も見学でき、

雅な「花ぼーる」「くんぺん」絶品「ちんすこう」を無事ゲット、

首里城の鎖之間のお茶セットか工場を訪ねなければ入手できない、

超レアな琉球菓子を大事に抱えて、レンタカーへ戻る旅人。

さあ、午前中にもう一軒、甘いミッションが。

素朴で懐かしい沖縄のおやつ「タンナファクルー」入手作戦です。

黒糖と小麦粉、卵、ふくらし粉だけで作られた焼き菓子で、

色々なメーカーから売りだされているようですが

考案者の直系一族が営む「丸玉製菓」のものがピカイチ、

そのしっとり感、優しい甘さにぞっこんなのでした。

で、いつも那覇中心部の沖映通りの小さな直売店で

我が家のおやつ用に大量購入していたのですが、

今回の旅の途中に訪れてみると、

何とシャッターが閉まっているではありませんか。

「都合により休みます」的な簡単な張り紙があるだけ。

お隣の呉服屋さんによると「売り子さんが辞めちゃって、

臨時休業しているみたい」とのこと。

う~む、沖縄も人出不足なのか・・・?

地元スーパーにも丸玉製菓のタンナファクルーは売ってますが、

欲しい数だけあるとは限らないしな~、とまずは工場へ直接電話。

「あ~、すみませんね~、今は直売店閉めてましてね~、

工場まで来て頂ければお分けできますけど・・・」と

工場長らしき男性が恐縮しながら対応してくれました。

「わかりました、長田・・・ですよね?何とか探して行きます!」

「はいはい、女子短大の近く、○○建設の2階ですから」

ん?・・・○○建設の・・・2階?

電話の向こうの説明にいささか首を傾げましたが、

まあ、那覇の街中ですもの、何とかなるよねぇ、

お菓子の工場だもの、看板やのぼりがあるでしょう。

な~んて思ったのが甘かった。はい、案の定、またまた迷子(笑)。

ったく、沖縄で何回迷えば気がすむのだ、我ながら笑えてくる。

まずカーナビに「目的地に着きました、案内を終わります」と

ドヤ顔(?)で連れてこられた場所は、なぜか保育園。

絶対違うよねぇ、と、保育園の人に聞いてみても、

「丸玉、製菓・・・?この辺にはありませんねぇ」とのこと。

もうカーナビなんて当てにしないぞ、と今度はグーグルマップを頼りに

何とか説明された長田の女子短大までたどり着きましたが、

似たようなビルやマンションが立ち並ぶ界隈、

ぐるぐるぐるぐる、うろうろうろうろ走り回っても

一向にそれらしき看板ものぼりもない。

どこだ?どこなんだ?丸玉製菓。

もはや最終手段。車を停めて、もう一度工場へ電話。

現在地点を告げると、先程と同じ男性が

「ああ、もうすぐそばです。○○建設って見えませんか?

そこの2階です」とのこと。

「あの、丸玉さんの看板とかありますか?」

「あ~、すみません、何もないんですよ、○○建設・・・です」

「あ、あああ~っ、わかりました~!ありました~!」

車を停めた通りの向こうにようやく発見。

建設会社が入っている何の変哲もないフツーのビル。

丸玉製菓の「ま」の字もない。

まさかこの2階にお菓子に工場があるなんてわからない。

こりゃ絶対迷うよぉ、と半泣きになりながら

ビルの横の外階段を上がるとようやく甘いお菓子の匂いが漂ってきた。

ほっ。

「あ~、すみませんねぇ、迷ったでしょ~」と

白い制服の男性が2階の扉を開けてくれた。

中は薄暗く、しんとしていて人の気配もない。

「早朝から製造していて、今日の分の出荷も終わってますが、

幾つご入用ですか?」とのこと。お昼前に製造終了かぁ。

朝いちばん早いのは、パン屋さんだけじゃなかった。

本当に昔ながらの町工場という雰囲気。

年季に入ったオーブンが長年焼き続けてきたのね。

「じゃ10個入りを四つください」。

「はい、それと、これ、ちょっと焦げたりしてますが、

焼きたてですから、よかったら食べてください」と

後から思えば三代目社長と思われる男性が

アウトレット的(笑)タンナファクルーをおまけしてくれました。

ほわん・・・手渡された袋からまだ温もりがつたわってくる。

工場だからこそ、出会えた焼きたてタンナファクルー。

迷子もまた楽し。

お菓子を考案した玉那覇(たんなふぁ)さんが

色黒(いるくるー)だったから、

「タンナファクルー」の名前がついたという素朴なお菓子。

その昔、胡麻餡入りの王朝菓子「くんぺん」は

庶民には手の届かない高価な存在だったため、

餡の入っていない黒糖入りの焼き菓子を考え出した、

と言われています。

そして考案者直系の丸玉製菓の「10個入り」袋には

正確には「11個」入っていて、その1枚は「しーぶん」。

「しーぶん」とは沖縄の言葉でおまけという意味。

ユニークな名前と言い、生まれた理由と言い、

10個に1個しーぶん入りの袋と言い、素朴な味わいと言い、

どこまでもタンナファクルーは庶民の味方だった。

初めて食べても

なぜか懐かしくなる。

イルクルーな優しい甘さは

老若男女みんな大好き。

(写真は)

おまけにもらったタンナファクルーと

長田の丸玉製菓工場。

看板ものぼりもない建物の2階で

変わらないレシピが守られていた。