いつでもどこでも

愛らしい木箱に

こめられているのは

感謝と敬いの温かい心。

いつでもどこでも

うーとーとー。

夏の沖縄旅・最終盤7日目リポート。

明日は札幌へ戻る前日は朝から買い物三昧。

首里にある琉球菓子の老舗「新垣カミ菓子店」を訪ねた後は

庶民のおやつ「タンナファクルー」を求めて、

迷いながらも長田の丸玉製菓の工場へたどり着き、

焼きたての黒糖焼き菓子をゲット。

その帰り道に通りかかったのが「仏壇通り」。

那覇の開南交差点と与儀交差点の間、

車やバスが往来する通りの両側には

かつて30軒以上の漆器店や仏具店、家具店が軒を連ね、

戦争で仏壇や位牌を焼かれてしまった人々が押し寄せ、

いつしか「開南仏壇通り」と呼ばれるようになりました。

道路拡張や後継者難などで今では6軒ほどに減りましたが、

「仏具は親の代から仏壇通りで」というお客さんも多く、

心の拠り所のような通りになっているようです。

そんな「仏壇通り」にあって

一際目を引くのが「照屋漆器店」の新店ビル。

長い年月を経ても変わることなく、

沖縄の暮らしに中に息づく祈りの心の一端に触れたくて、

お店の中にそっとお邪魔させてもらったところ、

「どうぞ、ごゆっくりご覧下さい」と若い男性スタッフが

こころよく出迎えてくれました。

一階フロアには

瑠璃色の花瓶や沖縄独特のお線香「ヒラウコー」など

さまざま祈りのためのお道具が揃えられています。

おや・・・?この愛らしい木箱は何でしょう?

美しい漆塗りの箱は長方形のお重のような形をしていて

かなり深く、二重構造になっているようです。

中には小さな仕切りがありますが、

まさか、お弁当箱なわけはないし・・・。

「これはですね、ビンシーです」。

「ビンシー?」

「はい、御願(ウガン)に使うお道具が収められて、

家の内外、持ち運ぶことができる携帯用の道具箱です。

沖縄のお家とってはとても大切なもので貸し借りはご法度、

家と天を結ぶ実印の役割を果たしているんですよ」。

美しく愛らしい木箱は沖縄の祭祀にとって、

唯一無二の存在なのだった。

ビンシー(瓶子)は本来は御願や婚礼に使われた

錫製や陶製の対瓶のことを指していましたが、

近世になって携帯用の御願道具箱が考案され、

この名前で呼ばれるようになったようです。

春の清明(シーミー)など、お墓に家族、親戚が集い、

先祖を偲び、過ごす際に欠かせないのがこのビンシー。

あ、忘れた、なんて、絶対あり得ないわけです。

何せ、家と天を結ぶ「実印」ですからね。

ビンシーの構造は実に合理的。

酒瓶が左右対称にすっぽり収まる深さになっていて、

上の仕切りごとに盃、塩、米が納められます。

二重構造の下にはお線香や打ち紙、賽銭などが

コンパクトに納められるという優れもの。

いつでもどこでも祈りの場所に持ち運びできるビンシー。

暮らしの中に祭祀が根づく沖縄の心が編み出した、

祈りの発明品だ。

ビンシーのお供え物にも細やかな決まりごとがあり、

たとえばお米は乾いた米と洗われた米の2種類を用意。

洗っていない米「アラミハナ」は種を意味し、

水で7回すすいだ米「アライミハナ」は収穫や

清らかな祈りを表しているのだとか。

アラミハナ、アライミハナ、

素敵な響きがする言葉。

沖縄の暮らしに根付いた

美しく愛らしい木箱。

ビンシー。

祈りの心を持ち運べる。

それは素敵な発明品だった。

(写真は)

祈りの心を

コンパクトに収めたビンシー。

いつでもどこでも

感謝と敬いを忘れない。