僕らのカタチ
やちむんに惹かれて
沖縄に呼ばれて
家族になって
伝統と新しい感性が日々生み出す
暮らしに馴染む僕らのカタチ。
夏の沖縄旅4日目は本島北部ドライブ。
台風接近の影響でいささか雲行きが怪しい夏空のもと、
那覇から本島を南北に貫く沖縄自動車道を北上、
手つかずの亜熱帯の大自然がひろがるやんばる(山原)へ。
まずは高速の終点許田ICから山を越えて東海岸の東村で
国産パインの最高峰、超レアな「ゴールドバレル」をゲット。
地元スタッフお勧めの隠れ家茶屋でのんびりランチの後は
沖縄産コーヒー栽培の先駆け「ヒロ・コーヒーファーム」で
壊滅的な台風被害から再生しつつあるコーヒー畑を目の当たりにし、
あきらめない不撓不屈情熱コーヒーの味に感動しました。
湿った暖かい風は相変わらず強いものの、
今のところ曇り空から雨は降ってきていません。
FMラジオによれば台風は先島諸島を横切って台湾方面へ北上らしく、
どうやら本島直撃は免れそう、この曇天も今日までかな。
5年前の台風直撃から立ち直りつつあるコーヒー畑を見たばかり、
風に弱いコーヒーの木が心配ですもの、まずはほっ。
旅人も安全運転でやんばるドライブを続けましょう。
原始から生まれたままの姿をとどめる亜熱帯の森。
豊富な水を湛える川が縦横に走る東村のやんばる路は
人間の力を軽々と超える圧倒的な存在感に満ちています。
レンタカーは東海岸沿いの県道70号線から国道331号線に入り、
再び山を超え、西海岸の大宜味村へ。
美しい塩屋湾を超えると東シナ海が見えてきました。
さあ、やんばる第3のミッション目的地はもうすぐ、のはず。
海沿いから左折して再びやんばるの山中へ。
東シナ海を望む大宜味村津波の小高い丘の中腹に
あ、ありました。シンプルな工房が。
本日の第3の目的地「田村窯」であります。
田村将敏さん・麻衣子さん夫妻が2010年に開窯した陶房で
開窯して間もない頃からやちむん好きに注目されていて、
ず~っと気になっていた若手作家さんなのでした。
作品はもちろんのこと、ご夫婦のプロフィールにも
実は勝手に親近感を覚えていたのです。
お二人が出会ったのは読谷村の北窯。
旅人もやちむん聖地巡礼で必ず訪れる共同窯です。
20代の頃「BEAMS」で働いていた将敏さんは
店頭で扱っていたやちむんに魅せられ、
北窯の宮城正亨工房に29歳で弟子入り。一方、
愛媛出身の麻衣子さんは同じ北窯の松田米司工房で修行、
沖縄の器をこよなく愛する県外出身の二人が出会い、独立、
北窯の遥か北のやんばるに「田村窯」を開いたのでした。
お洒落なセレクトショップBEAMSは
早くから沖縄のやちむんに注目していますが、
沖縄のカタチ、デザイン、工芸の魅力に魅せられた若い二人が
沖縄へ渡り、修行し、家族になって大宜味村に陶房を開くなんて、
BEAMSも想像していなかった素敵すぎる展開ではないでしょうか。
人生をドラマチックに変えるやちむんの引力。
さあ、どんな器に会えるのでしょうか。
やんばるの小高い丘の中腹にぽっかりと開かれた敷地。
まわりを取り囲む鬱蒼とした亜熱帯の森から
時折、南国の鳥たちの鳴き声が聞こえてきます。
都会の真ん中のセレクトショップとはまさに別世界。
開放的に開け放たれた入り口には
「田村窯」と小さな看板がそっと掲げられています。
窯元訪問のマナー、事前連絡をしてあるので、
では、早速お邪魔しましょう。
「こんにちは、お邪魔します」
「はい、いらっしゃいませ、お電話頂いた方ですか?」
作陶の手を留めて、穏やかな声の男性が笑顔で迎えてくれました。
頭を真っ白なタオルで覆った姿はまさに陶芸家。
元BEAMSスタッフだったご主人の田村将敏さんです。
「いらっしゃいませ、お天気悪いですよね~」と
ろくろの前から聞こえた優しい声は奥さまの麻衣子さん。
ああ、とってもいい感じのご夫婦です。
いるでしょう、ご自宅に遊びに行くと居心地よくて
ついつい帰りたくなくなるようなご夫婦って。
自然でオープンマインドで押しつけがましくなくて、
でも、とても大切にしている芯がちゃんとあって、
生き方や暮らし方が心地良い空気感に満ちていて。
工房も、第一印象で不思議に伝わってくるんですよねぇ、
作品やお人柄や大切にしているものが瞬間的にびびびっとね。
「田村窯」。ここは大好き。
ご主人は造形の難しい急須の作陶中。
形を崩さないように急速に乾燥させる必要があるらしく、
こちらに笑顔を向けながらもドライヤーを握った手は休めない。
「お仕事中、お邪魔してすみませんね~」と恐縮すると、
「いえいえ、今日は台風が近づいていて湿度があるでしょう、
だからドライヤー使わないと、乾かないんですよ」と笑顔。
「ほんと、晴れるといいですよね~」と奥さま。
こんな感じのいいご夫婦がご近所さんだといいな~。
しかし、ここはやんばる大宜味村の丘の中腹。
まわりにコンビニもマンションもスーパーもない。
あるのは沖縄のカタチに魅せられた作陶への情熱。
工房の一角にシンプルな木枠で作られたギャラリーコーナーが。
点打ち、飛び鉋、唐草文様。
伝統的なやちむんの技法を受け継ぎながら
どこか伸びやかで新鮮でフレッシュな感性が感じられる。
懐かしくて、新しい。
大皿、中皿、マカイ(茶碗)に蓋物。
どれを連れて帰っても我が家の食卓に馴染みそう。
「どれも伝統的な技法なんですか?」と素人旅人が聞くと、
「う~ん・・・伝統的・・・ではあるんですけど・・・」と
語尾を笑顔でぼかす陶芸家の表情に揺るぎない自信を見た。
沖縄に惹かれ、家族になり、表現する僕らのカタチ。
決して饒舌ではないけれど、
作品が若き作家の誇りを物語る。
亜熱帯の工房では進行中の夢のお話は
また明日。
(写真は)
大宜味村の「田村窯」。
曇り空と逆行でお顔がよくわかりませんが、
とても優しい笑顔をご想像下さい。
ね?伝統的で新しい、器でしょ?

