亜熱帯やんばる茶屋
360度亜熱帯の森。
濃密な緑のなかに
忽然と現れた小さな茶屋。
マイナスイオンに包まれて深呼吸
やんばるの緑にとけこんでいく。
夏の沖縄旅2017の4日目は本島北部ドライブ。
人を寄せつけないほどの亜熱帯の自然が広がるやんばるエリアは
中部、南部とはまたまったく違った未知なる魅力に満ちています。
本島を南北に縦断する沖縄自動車道の終点許田ICのある名護市から
本島最北端の辺戸岬へつながる北部地域には
東村・大宜味村・国頭村と三つの村がありますが、
ガイドブックの地図を広げてみるとそのほとんどは
与那覇岳など手つかずの亜熱帯の山々が連なる自然保護地域。
まさに「やんばる(山原)」。
ザ・ワイルドな原風景が残っているのです。
那覇から高速を使っても2時間以上のロングドライブ。
ほとんどのレンタカーは許田ICから美ら海水族館がある本部半島へ向かう中、
旅人の車は一路、北をめざして一人旅(笑)。
まずは重要ミッション、国産パインの最高峰「ゴールドバレル」を求めて、
本島北部の東海岸、東村の特産品加工直売所「サンライズひがし」へ。
生産量が限られているため、入手困難な超レアお宝パインを
事前情報&早朝出発が功を奏して、無事ゲット、
札幌の留守宅へ発送することができました。
フルーツやジャム、焼き菓子に特産の緑茶など
東村の特産物が並ぶ店内で、ほっと一息、ゴールドバレル100%の
超贅沢なフローズンドリンクを堪能しながら、
さあ、やんばるドライブの次の予定を考えましょう。
実はもうひとつのミッションが貴重な沖縄産コーヒー農園を訊ねること。
場所も電話番号もチェック済み、ほぼ開店時刻なので、
一応念のために、行く前に電話してみると・・・出ない(涙)。
コール音はするものの、誰も出ない。
困ったら、地元の人に聞くべし。
「あの、これからヒロコーヒーファームに行きたいんですけど
お電話、全然出ないんですよねぇ、閉まっているのかしら?」
サンライズひがしの女性スタッフさんに聞いてみると
「いやぁ、やっているはずですけどね~」と
親切にお店の電話から連絡してくれる、が、やはり応答なしのよう。
「この辺のお店、気分でお休みしちゃうことありますからねぇ~」と
苦笑まじりに大らかなやんばる営業事情を説明してくれる。
うふふ、南国らしくて微笑ましい。
そうかぁ~、じゃあ、これからどうしようかなぁ~。
思案顔の旅人に「お昼でしたら、この先のむーらんもいいですよ」と
おねえさんがナイス地元情報を授けてくれました。
「むーらん?」「そう、夢の蘭と書いて夢蘭(むーらん)。
おそばとかぜんざいとか、美味しいですよ」。
おおお、これは貴重な情報をゲット。自然豊かなやんばる地域、
人口2000人ほどのここ東村もスーパーやコンビニは一軒もなく、
ドライブ途中の立ち寄りスポットも
普通のガイドブックにはほとんど載っていないのです。
ガイドブックに載っていない地元おすすめのお店。いいぞぉ。
早速、許田ICの道の駅道路情報ターミナルで仕入れた
東村の観光ガイドマップを広げて、場所を確認。
地元自治体や観光協会発行の地図は旅のマストアイテム。
おっ、あった、ありました。
県道70号線沿い、謎の(笑)コーヒー農園を過ぎてすぐだ。
状況把握がてら、まずは現地へ行ってみよう。
「ありがとうございました」お礼を言って、
既に本日のゴールドバレルほぼ完売のサンライズひがしを後に、
再びレンタカーのハンドルを握る。
気がつけば、梅雨明けの夏空とは思えない曇り空。
薄い灰色の雲に完全に覆われ、湿った風がやや強くなってきた。
やはり先島諸島に接近中の台風3号の影響でしょう。
やんばるの緑が一層濃くなり野性味がさらに増してくるなか、
車は県道70号線を辺戸岬へ向かって北へ北へと走ります。
東漁港、地域のオアシス共同売店、種苗管理センター沖縄農場かぁ、
もしかしてゴールドバレルの品種開発にも関係してる?などなど、
通り過ぎる車窓の風景もいちいち味わい深い。
やがて高江集落を過ぎたあたりに、
電話がつながらなかったコーヒー農園がありました。
う~む、やはり、閉まっているなぁ~。今日はあきらめるか。
まあ、しょうがない、これもご縁よねぇ~、なんて思っていると、
おっと、緑に囲まれた可愛い茶屋を発見。
南国の花々が咲き乱れる庭先には福シーサーがお出迎え。
なんとも亜熱帯的野趣味あふれるお店ではありませんか。
やんばる旅路の隠れ家オアシス「茶屋夢蘭」。
確かにカフェというよりは、茶屋と呼びたい温かさ。
駐車スペースに車を停めて緑あふれるお庭へ進むと、
「いらっしゃいませ~」と和風な装いの女将さんがお出迎え。
紅型作務衣風のいでたち白い姉さんかぶりに満面の笑顔。
ああ、ここは確かにほっとする。
県道を行くドライバーはもちろん、
地元の人のオアシスでもあるのでしょうね。
サンライズひがしのお姉さんがおすすめするはずだ。
「台風でね~、ちょっと風が強いけど、
特等席にどうぞ、お庭の方が気持ち良いですから」と
ずんずん緑と花々に囲まれたお庭を進み奥へ奥へ。
うわぁ~、これは、確かに、特等席。
お庭の小高いてっぺんにそれは可愛らしい東屋が。
ぐるり360度亜熱帯のワイルドな森が広がっている。
標高503mの与那覇岳をはじめやんばるの山々が連なる風景を
心地よいオープンテラスの東屋にいながら独り占め。
台風からの湿った風が揺らす亜熱帯の葉のざわめき。
虫たちの元気な協奏曲、たくさんの南国の鳥たちのお喋り、
庭のあちらこちらに置かれたバリ楽器が奏でる音色。
人工的な音や気配が一切しない緑の空間。
一瞬、自分がどこにいるのか、わからなくなる。
ここはハワイのヌアヌ・パリ?バリのウブド?
いやいや、ここは沖縄本島東村字高江のやんばる茶屋夢蘭。
「どうぞ、冷たいサンニン茶です」。
女将さんが月桃のハーブ茶と冷たいおしぼりを運んできてくれます。
「おそばか、ピザか、カレーか、
これしかメニューないんですけど、何にします?」と
申し訳なさそうに女将さんが仰いますが、これだけあれば充分幸せ。
「え~っとじゃあ、沖縄そばとピザとぜんざい、ください」。
「はい、ピザは少しお時間かかりますけど、東村のパイン使ってますから」
了解です。こんな絶景の中で待つ時間こそ、旅の贅沢。
本当にやんばるの山々に溶け込んでいるかのような
可愛い可愛い亜熱帯の森の隠れ家茶屋。
ガイドブックだけを頼りに旅していると、
見過ごしてしまうかもしれない小さなお店。
旅の最大の情報源はやっぱり地元の人よね~。
と独り言ちていると「お待たせしました、沖縄そばです」。
すっきりした鰹節と濃厚な豚骨のバランスが絶妙なおだし、
しこしこもちもちの麺、丁寧にほろほろに煮込まれた三枚肉。
これほど山深い茶屋でこの完成度。
「沖縄そばは、基本、沖縄のどこで食べても美味い」と
沖縄在住の知人が言っていましたが、確かに真実。
那覇の街中だろうと亜熱帯の山の中だろうと、一様にレベルが高い。
東村特産のパインを載せた自家製ピザもとっても美味しく、
沖縄のソウルおやつ、ぜんざいも金時豆の優しい甘さに泣けてくる(笑)。
きっと真っ青な夏空のやんばる風景も壮観だろうけれど、
台風接近の薄暗い曇り空もまた印象的な思い出になる。
やんばるの大自然に抱かれた
可愛い緑あふれる茶屋。
もしかすると白昼の夢だったかと思えるほど、
県道79号線沿いに忽然と現れます。
お腹がすいていたら、ぜひ寄ってみてください。
やんばる路を行く旅人の
小さなオアシス、です。

