スローな一杯

雨や嵐に見舞われても

みんな吹き飛ばされても

また一歩一歩。

ここからゆっくり再生していく。

スローな一杯は情熱の香りがした。

夏の沖縄旅4日目は本島北部ドライブ。

手つかずの亜熱帯の大自然が広がるやんばる(山原)エリアは

底知れない魅力にあふれ、訪れる度に旅人を魅了します。

那覇から本島を南北に縦断する沖縄自動車を北上し終点許田ICへ。

さらに国道58号線から331号線を通って山越え、東海岸の東村で

まずは第一のミッション、国産パイナップルの最高峰、

「ゴールドバレル」をゲットしたのち、隠れ家茶屋でランチ、

そして、第2のミッションである沖縄産コーヒーのパイオニア、

伝説のコーヒー農園へやってきました。

台風接近の影響で少し薄暗い曇り空も忘れてしまいそう。

濃密な緑に囲まれたピンク色のカラフルな建物、

そこらを自由に散歩するコッコ(鶏)さん、

開放的なカフェに漂う薫り高いコーヒー。

ここはハワイか中南米かアフリカか。

どこか熱帯のコーヒー産地に迷いこんだような錯覚を覚えるのが

「ヒロ・コーヒーファーム」。

ハワイでコーヒー栽培を学んだ先代が20数年前、

コーヒー栽培に最適な土地を探して辿り着いたのがここ東村高江。

亜熱帯の森を耕し無農薬による自家栽培でコーヒーを作り続けてきましたが、

2009年に他界、以降、娘の朋子さんがその遺志を継ぎ、

沖縄産コーヒー栽培の先駆けである農園とお店を切り盛りしています。

若き日の夏木マリ似の朋子さんの明るいお人柄と笑顔も魅力的。

ピンク色のカフェの小窓の向こうで丁寧にコーヒーを淹れながら、

「そこにコーヒーの木がありますよ~」と教えてくれます。

熱帯のコーヒーの木を見る機会などほぼない北海道人、

興味津々で建物の脇に行くと、おおお~、リアル・コーヒーの木。

艶々した元気そうな葉っぱの中心に、可愛いコーヒーの実、発見。

「冬には真っ赤に実って収穫、まだ緑で可愛いでしょ」と朋子さん。

コーヒー栽培の北限地沖縄ですくすく育つコーヒーの実。

けなげだ。愛おしい。

見学用のコーヒーの木から、さらに建物の脇を奥へ進むと、

亜熱帯の小さな谷間に黒い遮光ネットに覆われた畑らしき場所が。

ここがヒロ・コーヒーファームの農園。

昨日のタイトル、不撓不屈の情熱コーヒーの畑、なのです。

実はお父さんから引き継いだコーヒー畑は2102年の台風でほぼ壊滅。

丹精したコーヒーの木は根こそぎ台風に吹き飛ばされ、

「カフェの建物もぜんぶ飛んでっちゃったの・・・」とのこと。

台風銀座の沖縄、毎年5月から10月の間に何度も大型台風が襲来、

コーヒーの木は風に大変弱く防風対策をしていても、

大きな被害を受けることが多々あるのですが、

5年前の台風は農園に致命的なダメージを与えました。

しかし開拓者DNAを父から受け継いだ朋子さんはあきらめなかった。

こつこつ、こつこつ、倒れた木を一本一本剪定、杭で支え、新しい苗木を植え、

あせらず、ゆっくり、スローに農園再生に取り組んだのです。

オズの魔法使いのように飛んでいったカフェの建物も、

廃材を利用して、父の元で研修していたスタッフと二人で手作りで再建、

2012年以降も何度も台風被害に見舞われながらも、

ようやく農園が少しずつ復活、少しずつ収穫ができるようになったとか。

沖縄の気候風土に適したアラビカ種。

濃い目の焙煎ストロングをアイスでいただきます。

うわぁ・・・なんて芳しい香り。

アイスなのに飲む前から芳醇な香りに魅了される。

まろやかで穏やかで優しい味わい。

沖縄やんばる、花も嵐も踏み越えたコーヒー。

「今はね、まだウチの豆は10%、なんですけどね」。

なにしろスローに復活途中、収穫量も限られるため、

残り9割はブラジル産のアラビカ種が助っ人したブレンドとか。

それでも旅人には人生で忘れられない一杯だ。

マイナスから立ち上がったコーヒー農園の姿が脳裏に刻まれる。

強風に当たらないように低い谷間に作られた畑。

強い直射日光を遮るために張り巡らされた黒い遮光ネット。

冬の北風にも負けないよう様々な工夫が施されているのだ。

いつか自家農園産100%コーヒーが提供できる日をめざして。

風も雨も台風も踏み越えて、

あきめないハートと仲間と自由なコッコさんと

コッコさんの卵のコーヒープリンもけなげに協力、

コーヒーを愛する不撓不屈の情熱が結集して

いつの日か100%ヒロコーヒーファーム産の一杯が飲める日が

きっと、必ず、やってくる。

飛行機に乗って、高速走って、山超えて、

その香り高い一杯を

いつの日か味わってみたい。

がんばれ、沖縄やんばる産コーヒー。

コッコさんに別れを告げて、レンタカーに戻る。

やんばる旅はまだ続く。

(写真は)

ヒロコーヒーファーム。

緑色の可愛いコーヒーの実に感動。

白いジャスミンのような花をつけた後に実をつける。

冬には真っ赤に熟し、コーヒーチェリーと呼ばれる。

「一緒に休みましょう」。

コーヒーの花言葉をふと思い出す。