たどりつけない場所②

選ばれし者だけが

たどりつける場所。

美し過ぎる絶景は

神が宿る聖地だった。

記憶のアルバムにそっとしまう。

夏の沖縄旅2017の5日目は本島北部本部半島をドライブ。

朝早く那覇を出発、最重要ミッションをクリアすべく、

フクギ並木で有名な沖縄の古き良き雰囲気が残る備瀬地区へ。

息をのむほど美しい絶景中の絶景ながら

神に選ばれた者しかたどりつけないといわれるパワースポット、

「備瀬のワルミ」をめざしています。

「ワルミ」とは割れ目のことで、

太古からの巨岩の割れ目から真っ青な海を臨む絶景地らしい。

そこは神が降りたったとされ、ウミガメの産卵地でもある場所は

地元の人々が大切に守り続けてきた聖地。

前日に許田の道路情報ターミナルの地元ガイドさんから

詳しい事前情報を収集、守るべき節度とマナーを忘れずに

最も美しい瞬間といわれる干潮時刻の9時27分めがけて、

教わったルートを慎重に走ります。

夏空の下、東シナ海に面する美ら海水族館を過ぎ、

青い海に突き出す本部半島北端の備瀬地区に差し掛かりました。

地元ガイドさんがGPS画像を駆使して指南してくれた詳細なルートや

目印を確認しながら車は幹線から地元の生活道路へ入ります。

何せ下調べをして行っても入り口がわからずに

たどりつけない人が続出するという奇跡の場所。

確かに・・・サトウキビ畑や叢の中へ続く小道のどれかが

入口につながるはずなのですが・・・これは・・・迷う。

え~っと・・・そろそろ・・・だよね・・・あれ?

ガイドさんが教えてくれた目印の建物もうっかり通り過ぎていた。

貴重な地元情報を聞いていても迷ってしまう。ハードルは高い。

あわてて引き返して、なんとか、多分ここだろうという小道を入る。

車一台がようやく通れる細い細い小道は完全に地元の人のためのもの。

観光客が入り込むことなどまったく想定いない道幅ですから、

運転は慎重に慎重を極めます。

ガイドさんがくれた詳細な地図を頼りにゆるゆる進みますが、

ほとんど畑と叢のなかに張り巡らされた迷路のようで、

海に向かっているのか遠ざかっているのか方向感覚がわからなくなります。

神様に試されているのだろうか。厳粛な気持ちがいよいよ強まります。

多分・・・きっと・・・おそらく・・・こっち・・・?

最後は不思議な何かに導かれるように細い道を曲がると・・・

ぽっかりと行き止まりのような狭い空間が。

あった!ここが入り口だ!

時刻はちょうど9時25分。

まもなく干潮時刻に差し掛かろうという時間。

午前の早い時間にもかかわらず、すでに人々の姿があり、

レンタサイクルやレンタカーが停められていましたが、

幸い1台分のスペースが空いています。

やった、よかった、神様のお許しが出た?

細い道の通行に邪魔にならないように慎重に駐車し、

神聖な気持ちでワルミの入口へ向かいます。

鬱蒼とした亜熱帯の茂みに囲まれた入口を入ると

昼間でも薄暗い細い道が海へと続いているようです。

慎重に下を確認しながらそろりそろり・・・。

ゴツゴツしたサンゴ石灰岩としっとり濡れた下草に

思わず足をとられそうになります。

これは聖地へ向かう地元の人々が通うことでできた道。

観光地用に整備されているわけではありません。

歩きにくくて当たり前なのです。

それにしてもこんなわかりにくい場所なのに、

気がつけば前も後ろも人が連なっています。

ガイドブックにはほとんど載っていませんが、

沖縄の絶景パワースポットとしてSNSで話題になっているようで

日本人はもちろん外国人観光客の姿もずいぶん多いようです。

なかなか行けないと聞くと、行きたくなる心理は万国共通か。

両手両足を使ってそろりそろり茂みを進んでいくと・・・

う・・・わぁ・・・・・・・・・!

本当に、息を、のんだ。

これが「備瀬のワルミ」だ。

太古の地球がぽっかり割れて青い海が生まれた。

そんな地球が生まれた瞬間のような絶景が目の前に。

そそり立つような巨岩の割れ目から

真っ白い砂と真っ青な海が広がる。

割れ目の真ん中には岩がひとつ、

白い砂浜から突き出しています。

海へ向かって捧げられた祈りの灯のようだ。

ここは、間違いなく、聖地だ。

太古の巨岩の間から

夏の太陽の光が7色のシャワーのように降り注ぐ。

けがれない純白の砂は羽布団のように優しく足を包み

どこまでも青く、青より青い海を見ていると

一瞬、自分がどこにいるのか、わからなくなる。

時間も空間も超越した、これが神秘というものか。

しばし、動けなくなる。

ここは神様が遊ぶビーチだ。

人間が生まれるずっと前から

神様の専用プライベートビーチだったんじゃないか。

幸運にもたどりつけることができたけど、

余りの美しさにたどりつけて良かったんだろうかと

なんだか恐縮してしまった。

そんな言葉にならない感覚は、今思えば

ある予感だったのかもしれない。

実はその後、7月14日から「備瀬のワルミ」は何と立ち入り禁止に

ゴミ捨てや私有地への無断侵入など一部観光客による問題が発生、

対応に苦慮した地元住民がやむなく立ち入り禁止を決定。

陸側からワルミに至る唯一の小道が私有地にかかっていて、

現在は金網と立ち入り禁止の看板が設置されたと

地元紙が伝えています。

昔からの御願所(ウガンジョ)でもあるワルミ。

地元の人たちにとって大切な場所を守るためには

いたしかたない処置だったのだと思います。

節度とマナーを守ってお邪魔したつもりですが、

沖縄を愛する旅人の一人として自戒もこめて

心痛む後日談でありました。

神様が遊んでいたのに、

お邪魔してしまってごめんなさい。

たどりつけない場所の美しさを

記憶のアルバムにそっとしまった。

(写真は)

美し過ぎる「備瀬のワルミ」。

今はもう、本当にたどり着けない聖地。

神様、見せてくれて、

本当にありがとうございました。