運命の食堂

海の狩人。

糸満うみんちゅのDNAが

人とモノと町を

美味しい魚でつないでいく。

世界に自慢したい漁民食堂。

夏の沖縄旅2017、三日目は本島南部へ。

朝から祈りの地、糸満市摩文仁の平和祈念公園を訪れ、

沖縄戦で亡くなった24万余の名前が刻まれた平和の礎、

最初に米軍が上陸した阿嘉島と広島、長崎の火が合火された平和の灯、

折しも「ヒロシマ原爆展」が開催されていた平和祈念資料館を巡りました。

「戦争を起こすのはたしかに人間です。しかし それ以上に

戦争を許さない努力ができるのも 私たち人間ではないでしょうか」。

展示むすびの言葉を胸に刻み、摩文仁の丘を後にしました。

祈りの丘から泣けてくるほど美しい青い海を望む。

時計の針が止まったかのような旅の時間。

気がつけばすっかりお昼をまわっていましたが、

この夏も来て良かった。平和を祈らずに沖縄を歩けない。

ガジュマルの木陰で待っていたレンタカーに戻ると、

いつのまにか広い駐車場にたくさんの車が停まっていた。

レンタカーナンバーがほとんど。みんな祈りに来ている。

涼しい車内に戻って汗がひき、落ち着くと

ようやく、空腹だったことに気づきました。

お腹がすいてもすぐ食べられる現代の幸せに改めて感謝、

さあ、遅いお昼ごはんにしましょう。

糸満市は古くから誇り高き糸満海人(うみんちゅ)の町。

「行列覚悟だけど、絶対美味しいよ」。

沖縄在住の知人も絶賛のお店へ行ってみましょう。

平和祈念公園のある摩文仁の丘から国道331号線を北上、

ひめゆりの塔、喜屋武岬と沖縄戦を物語る地から糸満漁港方面へ。

平和な青い海は豊かな海の幸を誇る豊饒の海。

漁港近くの糸満市西崎町、水産会社や物流センターが立ち並び、

海の工業地帯といったエリアの一角に・・・予想通りの行列、発見。

ここだ。ここが噂の「糸満漁民食堂」。

お店の名前から公設市場内の超庶民的な食堂かと思いますが、

沖縄の古い港町の景観を思わせる琉球石灰岩の外壁、

フラットで開放的、モダンな建築デザインの建物と

南国の緑のコントラストが実に美しく、お洒落。

超ハイセンスな漁民食堂の佇まいには誰もが驚く。

さすが糸満うみんちゅは誇り高い。

緑のお庭まで伸びている行列を辿り、

入り口の受付ボードに人数と席希望を記入、後は待つだけ(笑)。

色々な国籍の観光客や地元の家族連れなどが

玄関テラスの日陰でのんびり和やかに順番を待っています。

椅子や冷たいウォータ―サーバーも用意されていて気遣い満点。

琉球石灰岩の美しい石積みなど眺めながらのひととき、

待つ時間も、ごちそう前の前菜だ。

待つ前菜時間(笑)の間に「糸満漁民食堂」誕生物語。

糸満で獲れた魚で新たな糸満海人文化を発信しようと

2013年オープンしたお店のオーナーシェフは

お隣の魚仲卸会社が実家という玉城弘康さん。

幼い頃から魚市場に連れていかれ糸満の魚は身近な存在、

大学卒業後、銀行員を経て、那覇市内で居酒屋を開業。

いつかは糸満に店を出そうと思っていたある日、

一冊の本に出会うのです。

糸満の海人の歴史を記した

「海の狩人沖縄漁民ー糸満ウミンチュの歴史と生活誌」。

法政大学沖縄文化研究所の加藤久子さんが著した本の中に

仲間3人で魚屋を営んでいた祖母芳子さんの名前を発見したのです。

28年にも及ぶ聞き取り調査をまとめた糸満海人の記録に

逞しく誇り高く働くばあちゃんの日常が綴られていた。

「運命的なものを感じた」玉城さんは

糸満で店を開くことを決意。

古くから漁民の町として栄えてきた糸満も

町の近代化に伴い、海人の文化も忘れられつつある。

俺が残さないで、誰が残す。

海人伝統の昔ながらの伝統料理や糸満の食材を使い、

新しく復刻した新糸満郷土料理を提供することで

地域の伝統や文化を残し、糸満の魚の美味しさを伝えていこう。

人とモノと町を、魚で結んで、未来へつなぐ。

こうして「糸満漁民食堂」が生まれたのでした。

運命に動かされて始まった店作り。

だから建物は古来から糸満漁師たちが手積みしてきた

琉球石灰岩の「野面雑積み」を用いた建築デザインに。

石積みのある街並み保全意識を共有しようと、

地域の子供から大人までのべ60人が参加し、

「石積みワークショップ」を開催、一つ一つ積み上げました。

糸満市民の愛着を深める「場」ともなった建物は

数々の建築デザインや環境保全に関する賞を受賞しています。

時代の波にもまれて段々消えていく伝統を

糸満海人の孫世代が今の時代ならではの方法で

地域を人をみんなを巻き込んで美味しく継承していく。

なんて素敵な「糸満漁民食堂」物語。

美しい石積みに貼られていた地元紙の記事などを読み、

「一人カンブリア宮殿」(笑)しているうちに

おっ!名前が呼ばれました。

さあ、糸満海人の誇り高きDNAが生んだ

魚の美味しさに目覚める絶品料理のお話は

明日へと続きます。

この一皿のために飛行機に乗ってやってくる、

そんな噂もホントに思えるイマイユ料理。

ああ~、糸満シズル~。

(写真は)

歴史ある港町に佇む

「糸満漁民食堂」。

名前とヴィジュアルのギャップに驚く。

ここでしか出会えないレストラン。

ここでしか食べられない魚料理。

その人気はボーダーレスだった。