潔いミンタマ~沖縄夏旅2017・vol.6
健やかな白土。
端正な染付。
潔い工房ギャラリーは
陶芸家の作風そのもの。
赤いミンタマが見つめる沖縄。
梅雨明け夏本番の沖縄旅2日目。
やちむん(焼き物)の聖地読谷村を訪れています。
那覇からレンタカーでおよそ50分。
1970年代、軍用地だった自然豊かな丘陵地帯に
かねてより伝統工芸が寝付いていた読谷村が
ゆいまーる(相互扶助精神)のもと、
共同体であることを条件に「読谷村文化村構想」を本格化、
賛同した陶芸家たちが移住、登り窯を築いたのが
「やちむんの里」の始まり。
今では30以上の工房やギャラリーが集まり、
沖縄のやちむん好きにとってはまさに聖地。
旅人も毎年必ず真っ先に巡礼に訪れるのでした。
中心的存在である「北窯」の登り窯に挨拶した後、
やちむんの里のいちばん奥、緑の小道の先にある
沖縄陶芸界の巨匠大嶺實清氏のギャラリーを訪問し、
遊び心溢れる緑釉の大皿とペルシャ釉の青い鉢を購入。
實清氏の作品に出会え幸運に感謝。
やちむんの神様に愛されてる?
さてお次はお気に入りの急須のお直し(笑)。
島袋常秀氏の工房ギャラリー「うつわ家」へ。
数年前一目惚れして連れ帰った掻き落としの急須が
ヘビロテしたせいか竹の柄の部分が壊れちゃたんですね。
エアキャップに包んで手持ちで沖縄まで里帰り、
修理をお願いしにきたというわけ。
大事に大事に長く使いたものね。
「ああ、竹は水がつくとどうしても脆くなるんですよねぇ」
ギャラリーのスタッフがいたわしそうに急須を受け取り、
「新しい柄に取り換えましょうね~、200円ですけどいいですか?」と
遠慮がちに尋ねてきます。200円!?もちろん!ノープロブレム(笑)。
ほっと一安心してギャラリーを見渡すと、ああ駄目、器たちの誘惑。
沖縄県立芸術大学の教授も務める島袋常秀氏は
伝統的な手法を守りつつ、新しい色、斬新な形などに次々と挑戦、
常に使う人の視点に立った「用の美」を追求し続けています。
毎日の暮らしにすっとなじむ色使い、フォルムが本当に素敵。
特に常秀工房の赤絵の器は魅力的。
小さな器は幾つか揃えていましたが、
まずい(笑)大ぶりの7寸皿が旅人にウィンクしてくる。
華やかな赤絵唐草の大皿、食卓にあると映えるだろうなぁ。
急須のお直しを頼むだけのつもりでしたが、
器は、出会い。あなたもウチにいらっしゃい。
モダンな赤絵豆皿をも絵替わりでゲット、
まとめて札幌の自宅まで送ってもらうことにしました。
やちむん聖地巡礼の旅。
始まったばかりなのに、早くも興奮醒めやりませんが、
まだ再会したい器たちがいるのでした。
去年初めて訪れた「陶器工房 壹(いち)」。
京都出身の壱岐幸二氏は沖縄県立芸術大学を卒業後、大嶺實清氏に師事、
96年にやちむんの里から少し離れた東シナ海を望む丘に
モダンでシンプルな工房ギャラリーを設立。
旅人はその潔く端正な器たちにぞっこん、なのです。
しかし、問題は、カーナビではたどり着けないロケーション(笑)。
大嶺工房でもらった「壹さんの前にできたらしいマクロビカフェ」の
カードの地図とグーグルマップを頼りに慎重にハンドルを握る。
え~っと・・・銀行を過ぎて・・・○○マンションの前を左折?
静かな読谷村の住宅街の小道をアップダウンするうちに、
自由奔放な緑の間からぽかっと真っ青な東シナ海が見えてきた。
方向は間違っていない。おっ?「壹」!ちっちゃな木の案内板発見。
沖縄の案内板は小道の角の路面にちっちゃくあるんだよねぇ。
雪が降る北海道では考えられない。迷子もまた面白い。
小さな「壹」に導かれて、着いた~!あった~!
1年ぶり、「陶器工房 壹」に到着。
大学生の息子への仕送りが大変とお互い親の愚痴で
笑いあった楽しい思い出が蘇る。
壱岐さんにも器たちにも再会するのが楽しみです。
そしてここでも大きな使命がひとつ。
赤いミンタマ、再び。
壱岐さんらしいきりりとした雰囲気のギャラリーには
小さな男の子を連れた家族連れの先客が。
「ちょっと騒がない、触らない、ああ~やめてぇ~」。
陶器と子供、こんな危険な組み合わせはない(笑)。
わかる、わかる、男の子を育てた母として他人事とは思えません。
でも暮らしの中で使われる器たちは子供の明るい声を歓迎しているようだ。
難しい顔をして鑑賞されるより、嬉しいかもね。
沖縄のあるべき器の姿を追求し続ける壱岐さんのギャラリーには
古陶の影響を受けながら現代に生きる色とカタチが佇んでいる。。
健やかな白化粧、繊細で美しい藍やコバルトの染付。
そしてレアメタルを釉薬に使うことで出現した赤いミンタマ。
沖縄の言葉で「目玉」を意味するミンタマシリーズに一目惚れ、
去年買った中サイズのミンタマを先日、
あろうことか、うっかり、割ってしまったのですぅ。
「去年もお邪魔したんですけど」
「あ~、はいはい、またようこそ」。
お髭がワイルドな芸術家壱岐さん、笑顔で迎えてくれた。
「赤のミンタマ、中くらいのサイズ、割っちゃったんです(泣)。
でも、大きいのと小さいのしかないみたいですよね~」と
ダメもとで気鋭の陶芸家に泣きつく旅人。
「う~んと、あ~、ちょっと待っててね~」。
奥に引っ込み、まもなく赤い器を手に戻ってきた。
「このサイズ、ですよね?ひとつだけ残ってました」。
やったぁ~~~!
良かったぁ~~~!
アタシを待っててくれたのねぇ~。
赤いミンタマ再び。使いやすくて食卓のアクセントになるのよ。
あとは・・・葛唐草の伸びやかな浅い大鉢と
藍の染付の湯呑茶碗、唐草と点打模様がドットみたいでキュート。
「じゃあ、これ全部送って下さい」。
郵送の手続きをしているとき、
壁面の展示スペースに目が吸い寄せられた。
鈍い銀色の飛行物体に見覚えがありますが、
特徴的な大きなプロペラがひとつしかない。
機体は無残にひしゃげてもう一つのプロペラは視認できない。
「あの・・・これ、クラッシュしたオスプレイ、ですか?」
「そう、ほんとに落ちちゃったよね、綺麗な海にね」。
伝票を書きながら淡々と答える壱岐さん。
沖縄に導入された12機のオスプレイを陶器で制作、
去年、個展で展示された実物をこのギャラリーで見たのですが、
クラッシュした機体まで作っていたとは。
沖縄の伝統と現実と未来を透徹して見つめる芸術家の眼。
「ひしゃげたのを焼く方がずっと難しかったね」。
さらりとこともなげに呟いた言葉が旅人の脳裏に残った。
「息子たちがサッカーしていたグラウンドに
米軍の枯葉剤が見つかったんだよね、ついこの間ね」。
声を荒げることもなく、
淡々と誠実に静かな情熱を燃やして
沖縄の色と形を追い求める求道者。
赤いミンタマは過去と現在と未来を見つめている。
この原始の眼には嘘はつけない。
強く真っ直ぐな眼差しよ。
(写真は)
12機のうちの1機。
クラッシュした鈍い銀色。
ずしんと重いやちむんだ。

