日本一の美ら松
亜熱帯の島で
すくすく育つ美しい木。
王朝時代から愛されてきた
琉球特有の松は
日本一の美らさんだった。
夏の沖縄旅2017の三日目は本島南部へ。
朝一番で糸満市摩文仁の丘にある平和祈念公園を訪ね、
青い海を臨む平和の礎や平和の灯に祈りを捧げ、
折しも「ヒロシマ原爆展」が開催されていた資料館を見学、
訪れるたびに平和を希求する沖縄のこころを五感で体感、
広く美しい祈りの地を後にしました。
レンタカーは国道331号線を北上して糸満漁港エリアへ。
誇り高き糸満海人(うみんちゅ)の伝統を
食文化を通じて未来へつなごうという画期的なレストラン、
「糸満漁民食堂」で遅いランチを堪能。
昔ながらの「魚汁」をモダンにアレンジした「土鍋で食べる魚汁」、
沖縄独特のバター焼きを更に進化させた
「本日のイマイユバター焼き~アーサバターソース」、
特製しびれ醤油で頂くお刺し身サラダもさんぴん茶プリンも絶品。
飛行機に乗ってきてでも食べにきたい糸満式温故知新魚飯に感動、
地域の人と石積みした美しい琉球石灰岩の建物を後にしました。
さあ、お腹もいっぱいになりました。
南国の午後の日差しはまだまだ元気。
海と緑が美しい本島南部気ままドライブを続けましょう。
自然と神々の聖地に見守られたアート&クラフトエリア南城市へ。
クリエイティブな活動を刺激する場の力があるのでしょうか、
陶器や木工、紅型などなど個性豊かなギャラリーがたくさん。
海カフェ巡りもいいけれど、こんな午後はクラフト巡り。
ちょっと小さな旅の目的がありました。
それは沖縄の木で作ったサーバーを見つけること。
沖縄詣での旅に買い集めてきた沖縄の焼き物「やちむん」の器、
今では貴重な野宮コレクション(笑)となりつつあるのですが、
大きな器から料理を取り分ける時に金属製のサーバーだと
かちっと陶器に当たる音が気になってどうにも具合がよろしくない。
以前、那覇で買い求めたアカギのサーバーがあるのですが、
もう一本、大きめサーバーがあればなぁ~って思っていたのです。
意外にあるようで、ないのよ、これが。
というわけで車は糸満市から南城市へ。
絶景海カフェや超素敵な隠れ家ホテルが点在する知念半島を南へ。
美し過ぎる百名ビーチなどが連なる青い海を背に山側に入ります。
小さな御嶽や拝所などの史跡があちらこちらにあって、
昔から神々に守られてきた土地柄を感じさせます。
細く入り組んだ坂道を上がったり下がったり、
ナビは先程から沈黙(笑)、王朝時代からの古い小道だもの、
ピンポイント表示できないのよねぇ。
ここかと思えば行き止まり、ほぼあきらめかけた頃、
急な坂道をグインと登った先に緑に囲まれた建物を発見。
ここだ、着いた、「木彫屋(きぼりや)」だ。
沖縄の木を使った家具からアクセサリーまで
ぬくもりある作品を作っている工房です。
小さな建物は南国の自由な緑に覆われて森の一部にさえ見える。
美しい自然と溶け込むアート&クラフトを体現しているよう。
しかし、静かだ、開け放たれた建物に人の気配がない。
南国らしい大らかさ・・・でがはありますが、
恐る恐る入り口から中に入り、そっと声をかける。
「ごめんくださぁ~い・・・」しばしの沈黙ののち、
「はぁ~~~い!」奥から農家のお母さん風の女性が現れる。
「あの、こちらの作品、見せて頂いてもいいですか?」
「あ~、はいはい、どうぞ、今アタシしかいないんですけど、
ゆっくり見て行ってください」と笑顔のお答え。ほっ。
南城市の丘の上にある可愛い一軒家「木彫屋」は
元は公民館だった建物の舞台があった場所がショールーム、
その奥が工房、作業場になっています。
「ウチはね、親子3人で作っているんですよ。
主人が大きい家具、私が小物、娘がアクセサリー担当、
それぞれが自由にお互いの作りたいもの作っているんです」。
ということは、小物担当の工房のお母さん、だったのですね。
親子さん3人で自由に創作活動、なんか素敵。
奥の方でどっしり重厚な存在感を見せているのが
お父さんの森長武一さんが作る家具。
黒檀や琉球松など沖縄の木の特性を生かしたテーブルや椅子は
大らかでゆったりしたフォルムで、
安心して身を任せたくなる温もりと安らぎがあります。
「この食卓セットと同じものは○○さんのお宅にありますよ」
沖縄好きで知られるあのネジネジの有名俳優さんが
ふらりと工房を訪れ、気に入って注文、東京まで運んだそう。
「たまたま見たテレビ番組でご自宅の様子が映っていて、
ウチの家具に座ってらして、嬉しかったです」。ですよね~。
奥の大型家具ゾーンから手前の小物エリアへ。
お母さんの幸子さんが作った時計や花器などが並んでいます。
お家のように見えるティッシュケースやカトラリー入れなど
温かで遊び心あふれるデザインに心が和みます。
あ・・・あった、大きなサーバー。
手に馴染むようにあえて持ち手を小さく作ってあります。
「それはね、琉球松。本土の松と違ってヤニがないから
食器にも加工できるんです。木目がキレイでしょ?」
本当。柔らかいベージュ色に美しい木目が流れている。
「これ、素敵、これ、ください」即決の旅人に
「え~っとね、同じデザインでも全部木目が違うから、
お好きなのを選んでください」と
引き出しのストックから兄弟サーバー全員集合させてくれた。
確かに同じデザインなのに、木目も色合いも持ち加減も重さも
ひとつひとつ微妙に違う。木は生きているんだな。
全部手に取って、一番軽くて、一番色白の子に決定。
琉球松のサーバー君、札幌に行こうね。
琉球松は沖縄県の木、県木。
トカラ列島以南南西諸島、沖縄全島に広く分布し
琉球王朝時代からの防風林や防潮林としての松林も多く、
美しい樹冠が特徴的な景色は古くから沖縄の人々に愛されてきました。
天然記念物に指定されている推定300年を超える名木もあり、
風致観光に寄与する一方でその経済価値も高く評価されています。
それはお母さんの幸子さんの言葉にもあった美しい木目。
2015年全国木材フェアの「日本全国木材くらべアンケート」で
「木目の美しさ」部門で沖縄の琉球松が堂々の一位を獲得。
ヒノキやスギといった本土の銘木を抑えて
木目の美しさナンバーワンに輝いたのです。
琉球松は日本一の美ら松、ということですね。
さらに「肌触りの良さ」や「好きな木」、
「自宅に使用したい木」部門でも2位にランクインするなど
あらゆる部門で高い評価を得ているのです。
沖縄の木。沖縄の木工。
その潜在的魅力はまだまだ無尽蔵。
沖縄の工芸の魅力は陶器やガラス、紅型だけじゃないんですね。
琉歌にも歌われた美しい琉球松のサーバーに
沖縄クラフトの新たな魅力を再発見。
旅するたびに惚れ直す。
沖縄への恋は、醒めない。
(写真は)
おおらかでゆったりしていて、
身も心も温かく包んでくれそう。
南城市玉城「木彫屋」の家具。
お父さんは家具、お母さんは小物、
娘さんはアクセサリー。
素敵なアート役割分担だ。

