原始の記憶〜沖縄夏旅2017・vol.4

赤々と燃える薪火。
頬を照らす炎には
不思議な力がある。
遠い遠い原始の記憶が蘇る。
食べることは生きること。

沖縄夏旅2017、初日のディナーからクライマックスの予感。
那覇中心部から車で40分ほど、
サーファーやダイバーに人気の北谷町砂辺海岸。
夕陽が美しい海岸沿いのビーチホテルの1階に
沖縄を夢中にさせた料理人がすんごいレストランをオープン。
「Retaurant ARDOR(アルドール)」。

那覇で大人気のピッツァ店「BACAR」の店主仲村大輔氏が船頭となり、
イタリアン、フレンチ、スパニッシュ、スイーツの精鋭シェフ軍団が
沖縄食材、日本、世界のおいしいものを絶品料理に仕立てるのですが、
その空間全てが嬉しい驚きに満ちた仕掛けにあふれているのです。
金色の鋳物の蛸のドアハンドル、芸術的な赤い前室、
小型ボートに並ぶ本日の新鮮食材、開放的なオープンキッチンには
真っ赤な薪火が燃え、炭火オーブンが赤々と熾きている。

前菜盛り合わせで期待度マックス、
薪炭火焼きの沖縄いまいゆ(鮮魚)「トガリエビス」に度肝を抜かれ、
ほぼ放心状態の(笑)旅人の前に、これまたとんでもない絶品が。
「山原島豚の薪火焼き」
骨付きのがっしりした肉塊が目の前の薪火でジュウジュウ・・・、
脂と肉汁を滴らせながら焼きあがるのを目の当たりにするうちに
何だか肉体の奥の奥の方で何かが点火したような気がしてきた。
遠い遠い・・・原始の記憶・・・?

ドカンと白いお皿に横たわる熱々の山原島豚。
骨付き400グラム超えの肉に鋭いナイフを入れる。
肉と骨の間に容赦なく。
じゅわぁぁぁぁぁ〜滴る肉汁・・・光る脂。
もはや無言でフォークに突き刺し、口へ運ぶ旅人。
「食べる」のではない、「食らう」のだ。

どひゃぁぁぁぁ〜、旨ぁぁぁぁぁ〜い!
なんじゃ、こりゃ〜、突如、松田優作が蘇る(笑)。
薪火で炙られた島豚の香ばしさ、香り、旨み、
はっきり言って、これは事件です。
心地よい噛み応え、舌と歯と顎が喜んでいる。
肉を食らう。旨い。生きている。
シンプルで永遠なる快感。

人間が暗い洞窟で暮らしていた時代。
ひ弱な肉体を知恵と勇気で鼓舞し、
仲間と協力して大きな獲物を仕留め、
真っ赤に燃える炎で炙り、その命を食らい、
私たちの祖先は生きてきたのだ。
普段はすっかり忘れているけれど、
最先端の食空間の薪火の前で思い出した。

私たちは、食べて、生きてきた。
肉体の奥底から食への感謝を体感する一皿だった。
「日常を忘れておいしいものに身を任せてほしい」。
仲村氏のそんな思いがダイレクトで伝わってくる。
本当においしいものは原始の記憶につながっている。
不思議な仕掛け、抜群の食材、気鋭のシェフ軍団、
ハートフルなサービス、勇壮な薪火オープンキッチン。
空間の全てに感動する誰もが虜になるレストラン。
「ARDOR]。是非一度。

(写真は)
原始の記憶が蘇る
「山原島豚の薪火焼き」。
山原(やんばる)島豚は琉球在来種あぐーとデューロック、
バークシャーの三品種の特徴を生かした高級豚肉。
麦や与那国島産化石サンゴ、ヨモギ、ニンニク、海藻、糖蜜など
栄養豊富な餌をたっぷり与えて育てられいます。
独特の旨み、甘い脂、濃厚で心地よい噛み応えだけど柔らかい。
薪火との出会いに感謝。