どこへ下がる?
マッサンの夢の原点。
豊かな水と澄んだ空気、
美しい山と海に恵まれた余市。
微かな潮の香りが漂うウイスキーに
ぴったりのおつまみを探しに行こう。
来道した友人夫妻とともにめぐる
初夏の余市方面への半日大人の遠足ドライブ。
朝の新千歳空港で賓客をピックアップ、
高速に乗ってダイレクトに小樽経由で余市へ。
まずは人気の柿崎商店の海鮮丼で早ランチ後、
メインのニッカウヰスキー余市蒸留所をじっくり探訪。
1934年竹鶴正孝が設立した理想郷は今も現役。
手間を厭わず挑戦を忘れないウィスキー造りが続けられていました。
超お宝、世界遺産級の超レア原酒「シングルカスク余市」も試飲、
一期一会の深い味わいに言葉もないほど感動、
蒸留所でしか手に入らないシングルモルトも入手、
マッサン&リタさんの偉業に別れを告げて、
絶品ウイスキーのお次はおつまみ探し(笑)。
大人の遠足、限られた時間は有効にね。
ノンアルドライバーの夫の運転でめざすは
「燻製屋 南保留太郎商店」。
前浜の海の幸で作る手作りの燻製が評判のお店。
ニッカのモルト原酒は潮の香りがすると言われますが、
余市は日本海を望む積丹半島に面し、
ソーラン節にも唄われている鰊漁で発展した地。、
カレイ、イカ、甘エビ、鱈、鮭、ウニにシャコ等々、
ぴちぴち、ピカピカの海の幸に恵まれています。
潮の香りがするウイスキーに余市の海の幸で作る燻製、
完璧だ。
地図を見ると・・・
蒸留所から余市川沿いに日本海へ向かい、
海沿いの229号線を積丹方面へ走る途中・・・ね。
と、順調に車は走り始めたのですが、
「あれ?229号線左へ曲がってるよ・・・?海から離れるよ?」
手元のガイド本のアバウトな地図ではどうもよくわからない。
どんどん山側へ向かう車、違う、絶対違う。
燻製の匂いがしない(笑)。
「どこかで聞こう!」「どこかって、人、いないよ?」
土曜日の昼下がり、確かに誰も歩いていない。
「あ、あそこ、お肉屋さんっぽい、止めて止めて」。
ぽつぽつと民家が並ぶ道沿いにお肉屋さんらしきお店発見。
助手席を降りて、お店の扉を開ける。
「ごめん下さ~い」・・・し~ん。誰もいない。
ガラスケースの中には肝心のお肉が一切なし。電源も入っていない。
今日はお休み?それとも開店休業状態?
・・・と、あきらめかけたその時、
「は~い」、奥の方から声が聞こえ、
70代とおぼしきが出てきてくれました。。
このお肉屋のおかみさんなのでしょう。
空のショーケースが気になりながらも、無礼を詫びつつ道を尋ねる。
「すみません、ちょっと道をお聞きしたいんですけど」
「はいはい、どこ行くの」
「あの、南保留太郎商店っていう燻製屋さんなんですけど」。
「あ~はいはい、すぐそこすぐそこ、ここ下がったすぐそこ」
「・・・?ここ・・・下がる・・・?下がるって・・・?どっち?」
?だらけの私。
「下がる」って?どっちへ行くの?
するとおかみさん、親切にお店の外に出て教えてくれる。
「あのね、この横の道下がると、すぐ海に出るから、そのすぐ角」。
お店の横の細い道を海へ「下がる」という意味だった。
「あ~、わかりました。海へ下がるとすぐ左角ですね?」
「そう、下がってすぐ」。
土地には土地の生きた言葉がある。
三方を山に囲まれ、北に日本海を望む美しい湾を抱えた余市。
ここに暮らす人々は海へ向かうことを「下がる」と表現するのだった。
となると、山の方向へ行くことは「上がる」って言うんだろうなぁ。
豊かで美しい山と海が暮らしの骨格になっているのですね。
なにげない言い回しに土地の暮らしを感じる。
「上がる」「下がる」。
何だかちょっと京都に似ている。
京都の市街地の地名には「上ル」「下ル」「西入る」「東入る」といった
特殊な表記があって、京都以外の人はちんぷんかんぷん迷子になる(笑)。
「上ル」は北へ行く、「下ル」は南に行く。
「西入る」は西に、「東入る」は東へ行くことを指すのですが、
その中心は御所。
京都は御所を中心に碁盤の目に町作りされているため生まれた言い回しで、
現代では御所に関係なく、市内では北=上る、南=下るという意味で使われていて
日常生活でも道案内のときなどは
北へ行くときは「上る」、南は「下る」と言うそうです。
ん?北にある海へ向かって「下がる」余市とは反対。
余市を訪れる京都人はご注意ください。
「下がる」と言われたら、北方面の海へ向かって下さいね(笑)。
さて、おかみさんの道案内通り、
海へ下がってすぐ左角、
古民家を改装したまさに燻製色の味わいあるお店が。
海沿いの道道385号線に面していたのね~。
「燻製屋 南保留太郎商店」。
さあ、シングルモルトに合うおつまみを買おう。
明日へと続く。
(写真は)
スモーキーな風合いの古民家。
お隣には燻製創作料理が楽しめる茶房も併設。
海に面した燻製工房。
期待度満点。

