見果てぬ夢の味
これぞ道民御用達。
一匙食べれば
昭和へタイムスリップ。
懐かしいセピア色の味。
ただいま、
あまとう。
「あまとう」。
これほど甘党にふさわしい店名があるだろうか。
英語でもカタカナでもなく平仮名で「あまとう」。
甘いお菓子への憧憬を清々し直球で表している。
昭和4年創業の小樽の老舗洋菓子店は、
北海道民に愛される道産子御用達の名店であります。
小樽に行ったら立ち寄りマストスポット、
「あまとう」寄らずに帰れません。
洋菓子・喫茶の「あまとう」は
昭和4年、食堂と小樽名物ぱんじゅうの店として創業。
都通りの創業地にある本店の喫茶室は
赤いビロードのソファが並ぶ昭和レトロ感満載の空間
ここで味わう「クリームぜんざい」は不動の人気ですが、
嬉しいことに今では札幌でも
セピア色のおやつを楽しめるようになりました。
先日、久しぶりの映画鑑賞の帰りに立ち寄ったのが
大通ビッセ1階にあるあまとうの札幌大通り店。
アカデミー賞で話題の「ラ・ラ・ランド」に背を向け、
原作の重い読後感に惹かれて、あえての「愚行録」鑑賞、
予想を裏切らない重~い後味のまま、家に帰れず(笑)、
地下鉄大通駅へ、で、ビッセを通りかかった瞬間、
「あ~、あまとうのクリームぜんざい食べたい!」と
衝動的な欲望にかられたのでした。
人間のダークサイドから、あまとうで気分転換、ね。
息子が小さな頃、小樽ドライブの際は
あまとう本店で家族そろって食べたものですが、
お持ち帰り用のカップ入りの固いタイプじゃない、
本店と同じ柔らかいクリームぜんざいは超久しぶり。
おお、ちゃんとSとM、サイズも二通りある。
ま、ここは大人しくSサイズを選択。
ほどなくお店のスタッフが席まで届けてくれる。
わぁ~ん、懐かしい。昔のまんま。
真っ白で柔らかいアイスクリームが
雪山のように美しいうずまきを作り、
その脇に小豆あんとぷっくりした求肥がひとつ、
おしとやかに添えられている。
なんとも情緒あふれるその景色。
銀のスプーン、いやあえて、ここは銀の匙と呼びたい。
そっとひと匙すくって口へ運ぶ。
う~ん・・・懐かしい甘さ。
時計の針が一気に昭和に巻き戻る、ような気がする(笑)。
これよ、これこれ、
決しておしつけがましくない、
一歩下がったような、
控えめで優しい甘さ。
コクがあるのにあっさりとしていて
ふくよかな後味がまぁ~るく広がる。
まさに和のアイス、日本のアイス。
十勝産小豆をふっくら炊いた粒あんと
上質な米粉でできた求肥餅との相性がまた絶妙。
アイスクリームを三匙、あんこを載せて一匙、
またまたアイスを一匙を含んだのち、
ようやくおもむろに求肥をそっと口へ運ぶ。
このペース配分が「あまとう」クリームざんざいの黄金比率(笑)。
道民たるもの、間違ってもあんこや求肥をパクパク一気食いしてはいけない。
アイス、あんこ、求肥、バランス良く食べ、
この三位一体を同時にフィニッシュすべし(笑)。
あまとうの「クリームぜんざい」を食べるたび、
いつも同じ欲望と葛藤する。
求肥がふたつあればいいのに・・・と。
いやいや、もうひとつ欲しいなと思わせるこの配分こそが
昭和から愛される由縁のひとつかもしれない。
求肥もうひとつ・・・手が届きそうで届かない。
届いてしまわない方が多分幸せなんだろう。
「見果てぬ夢」とはこのことか。
歴史浪漫あふれる港町が生んだ
道民御用達のセピア色のアイス。
あまとうの「クリームぜんざい」は
まるで「見果てぬ夢」。
醒めない夢の味がする。

