リヨンの春

ガガガ~、ゴゴゴ~。

虫が起き出したにしては

ずいぶん派手な音。

雪解け道を一掃する除雪車が

啓蟄の朝を告げる。

今日は二十四節気の「啓蟄」。

冬の間、暗い土の中でじっとうずくまっていた虫たちが

春の気配を感じてもぞもぞと動き始めるころです。

あれ?いつのまにか明るくなってきたなぁと

虫たちが寝ぼけまなこをこすりながらもぞもぞ起きだす、にしては

ガガガ~、ゴゴゴ~、朝から除雪車の音がかまびすしい。

住宅街のざくざくの雪解け道を一掃する大きな音。

これも北国ならではの春の音。

春野菜に菜の花、春キャベツなどなど

野菜売り場にもそろそろ春の食材がお目見えする頃ですが、

同時に味わい尽くしたいのが冬を越したじゃがいも。

みずみずしい新ジャガが出回る前のひととき、

糖分を蓄え甘くなった越冬じゃがいもも忘れず味わっておきましょう。

ってわけで週末ごはんに久しぶりに登場したのが

「リヨネーズ・ポテト」(リヨン風ポテト)。

パリに次ぐフランス第二の都市「リヨン」。

世界遺産が溢れる美しい街は「絹の街」、「映画生誕の地」、

そして古くから「食の都」として知られています。

ブレスの鶏やシャロレ種の牛、ローヌ川やソーヌ川で獲れる淡水魚、

近隣の農村や南の地中海地方などから届く新鮮な野菜、果物、

チーズなどの乳製品、羊などなど豊富な食材が

大消費地リヨンへと出荷されたおかげで多様な料理が生まれ、

美食の都と呼ばれるようになったのでした。

そんなリヨンの郷土料理として有名なのが

「リヨネーズ・ポテト」(ポテトのリヨン風)。

薄切りにして飴色になるまで炒めたたまねぎとじゃがいも、

ベーコンなどを炒め合わせた庶民的な一皿で地元ビストロの定番料理。

我が家でもレギュラーメニューのひとつでもありますが、

今回はベーコンの代わりにスパム、舞茸も加えてボリュームアップ。

たまねぎの甘さと舞茸の香りをまとった越冬じゃがいも、

まじ、最高っす、美味いっす。

ちょっと多めに作ったので、

昨夜は二日目のカレーならぬ二日目のリヨネーズポテト。

春が近いせいか、卵が恋しくなり(笑)、目玉焼きをトッピング。

カリカリの白身、とろとろの黄身にお醤油をほんの一滴。

やちむんの大皿に盛った目玉焼きのせリヨネーズポテトに

取り分けスプーンをざっくり入れて、まぜまぜ。

半熟の卵黄がとろりと絡み、もうたまりません。

リヨンの春にお醤油一滴、桜一輪ほどの美味しさよ。

フランス料理で「リヨネーズ・・・」(リヨン風)と名がつけば、

飴色に炒めたたまねぎを使っているのが特徴。

サラダ・リヨネーズとかステーキ・リヨン風とか、ね。

西フランスではエシャロット、南フランスではにんにく、

北と東フランスではたまねぎを小さく炒めて料理の基本としますが、

リヨンはこの「たまねぎ文化圏」に属しているため、

素朴なじゃがいも炒めはリヨン風ポテト、となるわけです。

でもさ、居酒屋メニューにある「ジャーマンポテト」と同じじゃない?

そんな疑問がふと浮かびますが、実は基本的に大きな違いはないようです。

ただ「ジャーマンポテト」という料理はドイツもフランスにもないらしく

日本生まれの料理名とか。ま、ルーツはリヨン、ってことで。

春近し。越冬じゃがいもと北海道のたまねぎと目玉焼きと。

身近な食材でまだ見ぬリヨンの春を想像する。

お料理で簡単に世界を旅することができるのです。

ボン・ボヤージュ♪

(写真は)

目玉焼きのっけのリヨン風ポテト。

ほんの一滴たらしたお醤油がポイント。

リヨネーズポテト・ア・ラ・ジャポネ?

春ビールにもロゼワインにも合います。

春の晩酌メニューにどうぞ。