春待ちあんぱん

あんぱん。

文字で書いても

声に出しても、もちろん食べても

なんだかほっこり嬉しくなる。

春を待つ気分と似ている。

春まだ遠い日のおやつは

銀座木村屋総本店の小倉あんぱん。

全国うまいもの展で夫が姫路のゆず団子と共に仕入れてきました。

大変気の利いたお土産ではありますが、

「ごめん、うっかり、2個とも粒あん買ってきちゃった」。

こしあん党の妻に慌てて陳謝する粒あん党の夫。

我が家は今日も平和です(笑)。

あんぱんは日本が誇る和菓子。

リスペクトをこめていつもの京都宇治の焙じ茶を淹れて、

こぶりなあんぱんを朱色の漆盆にそっと載せます。

う~ん、明治7年生まれの木村屋のあんぱん、

やはり西洋の食器よりは「JAPAN」=漆によく映える。

ふっくらした表面の切れ目からのぞく濃い紫がかった粒あん。

目で見て観賞するに値する美しさがある。

ゆっくり眺めたのち、あんぱんを手に取る。

あらかじめ10秒だけレンジで温めておいたので

ほんのり春のひだまりのような温もりが。

ぱくり。潔くぱくりと頂くのがあんぱんに対しての礼儀(笑)。

ふわり・・・何とも懐かしい酒種酵母の香りが鼻腔をくすぐり、

ほど良い甘さのつぶあんと自慢のパン生地が

「春よ、来い」と口の中で仲良く合唱しているかのようだ。

あんぱんは、春の気配がする。

正岡子規の研究者で俳人の坪内稔典氏は

子規に負けず劣らずのあんぱん好きとして知られ、

著書で伝統的な季語に加えて現代の新しい季語を提案するなか、

あんぱんを春の季語と認めてはどうかと仰っているそうです。

大賛成!もろ手をあげて、あんぱんを春の季語とする法案?に挙手。

春夏秋冬、いつ食べても美味しいあんぱんだけど、

優しい音の響き、文字の和やかさ、心がまぁるくなる味わい、

春の言葉、春を待ちわびる季語に実にふさわしい。

な~んて物思いに耽る間もなく

手にした木村屋のあんぱんはものの三口でなくなりそう(笑)。

だって、ほんと、やっぱり美味しいんだもん。

春が近いせいか、いつにもましてそのパン生地の風味にうっとり。

明治7年から現在まで受け継いできた門外不出の酒種発酵種。

米、麹、水からできてる酒種をどのように伝承していくのか、

HPによると社内で酒種伝承会議を開催し、

産地、材料の選定から作り方まで常に試作と試食を繰り返し、

もっともおいしいあんぱんを探求し続けているのだそうです。

明治7年ってことは1874年、143年間受け継がれてきた酒種。

米食文化である日本独特の酒酵母は生きる食の遺産。

イーストとの違いは増殖するために食べる栄養源だとか。

一般的なイーストは糖蜜を栄養源として

化学的に管理された機械ラインで大量生産されますが、

米と麹と水から作られた酒種は米が栄養源。

空気と水がきれいな自然の中で麹を手助けとして

日数をかけて増殖するとHPに詳しく紹介されていました。

そうか、どこか懐かしい風味がするのは

日本人と同じお米好きの酵母でできたパン生地だからだ。

お米を食べてどんどん増殖する酒種でつくられたあんぱん。

そうだ、パン作りに適した米粉の開発が進む昨今、

米粉と酒種酵母の相性もいいような気がするんだけどな。

酒種酵母の米粉あんぱんなんて、どうなんでしょう。

想像するだけで、にんまりしちゃう。

お米の国が生んだ世界に誇るあんぱん。

文字で書いても、発音しても、見ても、食べても

ほんのり優しい心持になる平和主義なパン。

あんぱんを食べながらケンカする気にならないもん。

春を待ちわびる人に、おひとつ、どうぞ。

あんぱん、食べる?

(写真は)

朱色の漆盆によく映える。

明治7年生まれの木村屋総本店のあんぱん。

春本番になったら桜あんぱんだね。

あんぱん=春の季語。

今一度、大賛成。