えらかったえらかった
えらかった、えらかった。
いつでもどんな時でも
そう言って迎えてくれる。
お腹と心の居場所。
ばっちゃんのご飯。
年末年始、華やかな番組が続く中、
心に残るドキュメンタリーを観ました。
NHKスペシャル「ばっちゃん~子どもたちが立ち直る場所」。
社会に居場所を失い非行に走る少年少女に寄りそい、
30年以上立ち直りを支えてきた元保護司の82歳の女性、
「ばっちゃん」こと中本忠子さんと子供たちの8年間の記録です。
「非行の根っこには『空腹』がある」。
だから、ばっちゃんは今日も台所に立ち、ご飯を作る。
広島市内にあるばっちゃんの家の玄関先。
無雑作に脱ぎすてられたたくさんのスニーカーを
80歳を過ぎたばっちゃんが腰をかがめて揃えている。
「お~、○○、来たんか、えらかった、えらかった」と言いながら。
6年前に保護司を引退した後も自宅を開放し、
子ども達の相談にのり、手料理を振舞っているのです。
集まってくるのは貧困や親の虐待、ネグレクトなどで
家で満足な食事もとれない子どもたち。
ばっちゃん手作りの親子丼やカレーライスを頬張る少年少女。
「お腹がすくと、どうでもよくなる」「何も考えられなくなる」と
あどけなさを残した面持ちで絶望的な心情を訥々と語ります。
そんな彼らにとって本当のおばあちゃんじゃないけど、
親戚のおばさんよりずっと身近な「ばっちゃん」の家は唯一の居場所。
ドアはいつでも開いていて「ただいま」と迎えてくれる。
ここで温かいご飯を食べることで非行が収まる子もいれば、
長い年月かかる子もいるという。
小学3年生からばっちゃんの家に通っていたある少年は
高校入学後、少年院送致に。
1年9カ月後、退院して一番先に電話をかけたのは、ばっちゃん。
深夜バスで会いに行った彼を待っていたのは
変わらないばっちゃんの「おかえり」と好物の親子丼。
支えても支えても道をはずしてしまう子供もいる。
勤め先をクビになった、寝る場所がない、困った、どうしよう・・・
夜中の3時に電話で叩き起こされることもある。
ばっちゃんの30年間は生易しいものではない。
取材班は何度もばっちゃんに問います。
何故続けられるのかと。「う~ん・・・」首をひねるばっちゃん。
「喜びがあるからですか?」と続けた問いに即答した「ない!」。
苦労と気苦労ばかり。でも・・・取材の後半にばっちゃんはこう呟いたそうだ。
「子どもから面と向かって助けてと言われたことのない人にはわからない」と。
ガンと心に突き刺さりました。
社会は大人は私は、居場所のない子供たちにちゃんと対峙しているのだろうか。
そもそも、そういう子供たちの存在すら見えていないのではないだろうか。
ご飯、ちゃんと食べた?
そんな社会のお節介が圧倒的に足りてないことを知らされた。
いや、ばっちゃんの言葉はもっともっと現実を捉えていた。
「それで、あんた、いつからご飯食べてないの?最後に食べたのいつ?」。
一回二回の欠食どころじゃない現実があることを知っている。
居場所のない彼らが自暴自棄になる前にばっちゃんのところに来てくれた。
だから、「えらかった、えらかった」。
おかえりと、温かいご飯と、えらかった。
この三つがあれば人生はきっと立ち直れる。
子育てで最も大事な三つ。
ばっちゃんに教わった。
(写真は)
愛らしいピンク色した口取りの鯛。
お正月やクリスマス。
世間が華やぐ時が一番辛い子もいるんだ。
愛されるために生まれてきたのに。
お腹いっぱい食べてほしいのに。

