電話線の向こう

「えっ?ひく、ですか?」

「そう、電話をひいたのよ」

「・・・電話をひく・・・???」

スマホ世代と黒電話世代。

かくも深き分断(笑)。

先日、大学のサークルの大先輩が来札され、

在札幌の後輩たちが集まり、秋の宴が開催されました。

ほぼ同世代の後輩にこの春入社したばかりの超フレッシュな後輩という

実に年齢幅の広いメンバー構成でしたが、

それぞれの青春の思い出話に花が咲き、それは楽しい宴となり、

いつしか座の話題は「電話」に。

そこで冒頭の???会話が(笑)。

「大学に入った頃は電話も呼び出しだったよねぇ~」

「そうです、そうです、ボクも大家さんの呼び出し電話でした」と

懐かしの電話トークで同世代の後輩と盛り上がる。

「でさ、さすがに不便だから、親に頼んで電話ひいてもらったんだよね」

「僕も2年生の時に、電話ひきました」。

・・・気がつけば、フレッシャーズ組がきょとん・・・。

「え?電話、ひく・・・ですか?」

「そうだよ、電話はひくもんだったんだよぉ~」(笑)。

そうだよねぇ~、息子と同じ年頃の彼らは

小学生時代から携帯デビューするような世代。

電話=携帯電話、いやいや、スマホがすべての世代、

黒い固定電話なんて見たこともないし、

ましてや呼び出し電話なんて想像もつかないでしょう。

超便利な通信手段が生まれた頃から当たり前にあった世代にとっては

「電話をひく」、そりゃあ、意味わからんわなぁ(笑)。

友達や彼氏や彼女と自由に青春するために

「電話をひく」ことが憧れだった時代があるのよ。

電話にはさ、電話線があってさ、電話機を設置するってことはさ、

「電話をひく」って言ったわけさ。懐かしいねぇ~。

狭いアパートの部屋にはじめて黒い電話機がついた時の嬉しさ。

時には鳴らない電話機をうらめしく見つめたこともあった。

お風呂場の前まで長い線をずるずる伸ばして電話を引っ張ってきたりね。

電話線は、ドキドキ、キュンキュン、甘酸っぱい思いとつながっていた。

そういえば、息子の彼女の電話を取り次いだことなんてないしなぁ。

固定電話が恋を取り次いだ時代はとっくに終わっている。

な~んて、「電話をひいた」時代を懐かしく思い返していたら、

今朝の天声人語に面白いエピソードが描かれていました。

大正の初め、夏目漱石は自宅にひいた電話から

勤め先の新聞社へかけようとして失敗、

同僚に電話のかけ方を尋ねた書簡があるそうです。

当時は交換手に「どこそこの何番に」と頼む方式で

どうやら、新聞社にはたくさんの部局があって挫折したらしい(笑)。

文豪も当時の新しいテクノロジーには頭を抱えていたと思うと

何だか漱石先生にぐんと親近感を感じます。シニア世代の皆さま、

スマホを使いこなせないなんて嘆く必要ございません。

かの漱石先生だって、せっかくひいた電話に難儀していたのですから。

「だれしも15歳の時までに接したテクノロジーにしか

適応できないという話をどこかで聞いた」とは天声人語の呟き。

そうか、15歳がテクノロジー適応における分水嶺か。

15歳までに慣れ親しんだ長い電話線。

電話をひいた先につながっていたのは

指先で会話できる未来(現在)だったんだな。

進化するスマホの先にはさらに何が待っているのだろう。

使いこなすのが大変そうなことだけはわかる(笑)。

(写真は)

那覇のお菓子屋さんで見かけた

超レトロなバタークリームケーキ。

電話をひいた時代、

ケーキと言えばバタークリームだったなぁ。

時折、無性に、食べたくなる。