孤高の祭り寿司

飴色に輝く大東寿司と

黄金色に包まれた祭り寿司。

それは厳しい開拓の歴史と

人々の労苦をねぎらう味。

「ハレ」の祝い寿司だった。

絶海の孤島で江戸文化に遇う。

天高くすっきり突き抜ける秋の青空。

今日の札幌の予想最高気温は23度。

朝から澄み渡る爽やかな空気に包まれ、

ああ、とうとう(笑)北海道は秋本番、沖縄の夏は遠くなりにけり・・・

ですが、今しばらく、沖縄旅の思い出にお付き合い下さいまし。

旅の後半・本島編も後半戦、夏の沖縄旅2016リポートを続けましょう。

本島中部・南部・北部(やんばる)とレンタカーで本島をほぼ制覇、

本島旅4日目の夜は珍しい大東島の味が楽しめる「割烹 喜作」で

島名物の幻の魚にノックアウトされました。

沖縄本島から400km離れた絶海の孤島、大東島諸島。

北大東島、南大東島、無人島の沖大東島の3島からなり、

本土からも沖縄諸島から遠く隔絶された大東島は

大陸の一部になったことがない典型的な海洋島。

独特の自然環境ゆえ、動物や植物もこの島にしかいない亜種が多く存在、

ほんの少し沖合に行っただけで1000m級の深海が広がる島では

見たこともない珍しい深海魚が水揚げされます。

その代表格が「ナワキリ」。

那覇でも数少ない大東島の味を楽しめる「割烹 喜作」のカウンターで、

頭でっかち&ぎょろ目のインパクト抜群のお姿を拝見、

そのヴィジュアルからは想像できない脂ののった美味にノックアウト。

離島好きの私もいまだ未踏の絶海の孤島、大東島、

食文化の一端に触れただけでタダものではないと確信、興味は募るばかり。

ちなみに「ナワキリ」」の和名は「クロシビカマス」ですが、

何と大東島以外に伊豆諸島でも「ナワキリ」という言葉が残っているそうです。

絶海の孤島と伊豆諸島・・・?

驚異の大東島食体験に翻弄される旅人に

「せっかくだから、大東寿司も食べてみてね~」、

女将さんがまたナイスタイミングで声をかけてくれました。

そうだ、赤提灯に書かれていた「大東寿司」「まつり寿司」の文字の謎。

「大東島名物のお寿司なのよぉ、まつり寿司もね」

どちらも那覇ではこの店でしか食べられない超レアお寿司らしい。

祭り寿司・・・さっきの伊豆諸島といい、何やら江戸文化の匂いがする・・・。

「く、下さい!大東寿司とまつり寿司!」。

ええ~い、大東島グルメ、食べ尽くすぞぉ。

大賑わい満員御礼の店内、カウンターの中では

女将さんから注文を受けた例のいなせな板前さんが

またまたリズミカルな手さばきでお寿司を握り始めました。

ほよ?何やら「づけ」にした魚をさっと網にとって水分をとり握り寿司に。

興味津津の旅人の前に「はい、お待たせしました」と

美しい大東寿司とまつり寿司の盛り合わせがやってきました。

「大東寿司はマグロとサワラ、まつり寿司もみんな、

そのままお召し上がり下さいね」。

おおお~、江戸前寿司を彷彿とさせる「づけ」の大東寿司。

特製のたれに漬けたマグロとサワラが飴色に輝いています。

ぱくり・・・う~ん、にんまり。美味しくて幸せな気持ちになる。

甘めのシャリともっちりといい具合に「づけ」にされたマグロとサワラが

実に良い相性、やばい、お腹いっぱいなのに何個でもイケる。

一方、黄金色の卵焼きで巻かれた「まつり寿司」は、

ぱくり・・・う~ん、おめでたい。晴れやかな祝い寿司に嬉しくなる。

島ではおめでたい時に食べられると聞いて納得。

しかし・・・絶海の孤島で、なぜ、江戸前的なお寿司が?

旅人の疑問は大東島の歴史と深く関わっていたのです。

その昔、沖縄諸島の人々は遥か東の海上に

「うふ(大)あがり(東)じま(島)」なる孤島があると信じていました。

でも、大海原のはるか彼方の島、誰も、上陸したことはない。

そもそも深海と断崖絶壁に囲まれた島だもの、近寄れないよねぇ。

そんな伝説の島に人が入ったのはわずか114年前、

最初の開拓者は八丈島の人々で、その後製糖業を営むために

沖縄からも人々が移住してきたという歴史があったのです。

戦後のアメリカ統治を経て、現在は沖縄県となった大東島ですが、

沖縄でありながら、沖縄ではない独特の文化、

八丈島をはじめ江戸文化が色濃く残っているのでした。

江戸前寿司の風情を残す島寿司「大東寿司」「まつり寿司」も然り

南大東島の豊年祭は大東太鼓や江戸相撲、神輿に山車なども繰り出し、

江戸文化の影響を色濃く感じると同時に

沖縄角力(すもう)や沖縄民謡の舞台も賑やかに行われる様子は

大東島独特の江戸と沖縄のミックスカルチャー、チャンプルー文化を

雄弁に物語ります。凄いぞ、ユニークだぞ、大東島。

沖縄本島から飛行機で1時間。

週1便の船だと14時間かかる遥か遠い絶海の孤島。

独特の歴史を物語る島自慢の大東寿司を食べながら

まだ見ぬ島々へロマンと旅情をかきたてられるのでした。

断崖絶壁に囲まれ、船が接岸できないため、荷物も人も

クレーンで「荷上げ」される大東島。

沖縄なのにシーサーに出会うこともめったなく、

赤土にサトウキビ畑が風になびく風景は異国情緒が漂い、

どこか南米の国のようだとも聞きます。

う~ん、聞けば聞くほど、知ればしるほど、興味が湧いてくる。

これだけ旅しても、沖縄は、奥深い。幅広い。

黄金色の卵焼きにくるまれた晴れやかなまつり寿司。

大東島では卵が貴重品だったので、

祭りのハレの時だけ、卵でお寿司を巻いて祝ったと言います。

どこの大陸からの隔絶され、故郷の文化を大切しながら、

絶海の孤島で生き抜いてきた先人の労苦が偲ばれる孤高の祭り寿司。

それは晴れやかで、少し甘酸っぱく、滋味に満ちていた。

ごちそうさまでした。大東島。

いつの日か、私もクレーンで「荷上げ」されてみたい、な。

(写真は)

那覇で数少ない(ていうか、ここだけ?)

大東島の味を楽しめる「割烹喜作」の女将さん。

大東寿司はあまりの感激で写真撮り忘れたので、

後ろのポスターでご勘弁(笑)。

サトウキビ畑が風になびく南大東島。

どこか南米の国のような風景とも聞きますが、

女将さんのカリオカ~な陽気な笑顔もどこかラテン系。

この店を訪れるだけで大東島的ミックスカルチャーを楽しめます。