花とマンボウ

市場の路地裏ビストロ。
赤いチェックのクロスの上に
美味しい花が咲いた。
沖縄の魚とやちむんの美味しい出会い。
それは新たな旅の始まり。

夏の沖縄旅2016リポート、旅の後半は本島編。
4日間の充実八重山旅を終えて、夕方の飛行機で那覇へ。
グルメタウン那覇の初日の夜は
とびきりの隠れ家ビストロ「プチット・リュ」へ。
牧志公設市場にほど近い路地裏にあります。
シェフとマダムご夫婦二人が切り盛りするお店は
席数14席のまさにプチで居心地の良い空間。

「そこに市場があったから」。
お店の場所を決めた理由は実に明快。
毎日、市場で新鮮な沖縄食材を仕入れ、
確かな技で仕立てられたお料理の数々は
二人揃ってソムリエであるご夫婦がセレクトした
美味しいワインと相性抜群。
カジュアルに気取らずにわいわいと
楽しめる極楽ビストロであります。

力強い味の島豚や牛肉、
太陽の光をしっかり浴びた野菜やフルーツなど、
滋味豊かな沖縄の食材たちの力を生かし、
フランス料理の伝統的な調理法で
化学調味料は一切使わず、スープからすべて手作り。
本日の前菜盛り合わせの最初の一口で
美味しいノックアウトを食らいました(笑)。

そして伊江島小麦のガレット~島豚ベーコン添えに続いて
テーブルに登場したのが
「マンボウのフリット・グジョネット仕立て」。
マグロに負けない味で沖縄で人気の魚「アカマンボウ」を
小魚のような細長いスティック状(グジョネット)にして
からりと揚げた一皿。
ちなみにあの大きなマンボウとは別のお魚です。

「うわっ、美味しそう!可愛い!」
黄金色に揚がったフリットと同時に目を奪われたのが、その器。
どっしりとしたやちむん(沖縄の焼物)の大皿は
それは愛らしい大輪の花を象ったもの。
花弁のひとつひとつにマンボウのフリットが収まり、
お花の真ん中に特製タルタルソースが添えられています。
白釉で仕上げらた花型やちむん。
一目で恋に落ちました。

沖縄旅の大きな目的の一つが窯元めぐり。
これまでかなりのやちむんを見てきましたが、こんな美しいフォルムは初めて。
一体、どこのどなたの作品なのでしょう。
ハフハフ揚げたてのフリット頬張りながら、
「この器はどちらのものなんですか?」とマダムに勢い込んで尋ねると
「大宜味村の玉城さんの作品なんです」とのこと。

「大宜味村の玉城さん?」
「はい、ご夫婦で開かれている窯元さんですが、
このお花の器は奥さまの方の作品なんです。
同じ形の古陶が沖縄県立博物館にあるそうですよ」。
へぇ~っ!博物館の所蔵作品とな、これは驚いた。
愛らしい花型のこのお皿
雑貨ショップにディスプレイされていそうな、
ポップな現代的フォルムをしていますが、
何と琉球王朝時代のやんごとなき古陶がルーツとは。
古の陶工もカワイイもの好きだったのかしら。

「あの、玉城さんの窯元はお訪ねできるんでしょうか?」
テーブルから前のめりで尋ねる旅人に
「大丈夫・・・と思いますけど、遠いですよ、大宜味村」と
お優しいマダムに心配顔で気づかって下さる。
確かに本島北部やんばるにある大宜味村は
那覇からはロングドライブになりますもんね。
でもね、本島北部は既に以前の沖縄旅で走破済み。

「いえ!行きます!絶対行きます!大宜味村、全然大丈夫です」。
鼻息荒く宣言する旅人に、
「いや、凄いね~、ホントに行くの?大宜味村まで」と
お隣のテーブルの地元のお客さんが思わず嘆息(笑)。
そうなんですよねぇ~、
那覇ー大宜味村なんて北海道感覚で言えば
大したことない日帰りドライブ距離なんだけど、
那覇の人からすると、すっごく遠いらしい。
まあ、札幌の居酒屋で隣の観光客が
これから知床まで走るって騒いでるみたいなものか(笑)。
そうなんです、やちむんには、目がない旅人なんです。

夏の沖縄旅2016、旅の後半本島編、
石垣島から那覇に到着した初日の夜に
早くも楽しみな目的地ができました。
大らかな花の形をした古陶を再現した窯元を訪ねる。
ヤンバルクイナが棲む自然豊かなやんばるの森の中、
いったいどんな作家さんなんだろう。
この花型のお皿にはどんな歴史ロマンが
秘められているのだろう。
旅の想像はどこまでも広がっていく。

始まったばかりの沖縄本島の旅2016夏。
またまた思い出いっぱいの旅になりそう。
嬉しい予感と絶品ビストロフレンチで
胸もおなかも大満足の那覇の夜でした。
さあ、お楽しみは、これからだ。

(写真は)
大らかで可愛いやちむんの花型皿。
博物館の古陶の再現とは驚き。
マンボウのグジョネットフリットが
花びらにちょうどいい具合におさまる。
首里の王様たちが使ったのだろうか。
どんなご馳走を盛り付けていたのだろう。
那覇の路地裏ビストロでの
素敵な出会いに感謝。