海の見える壹

青い海を望む工房。

きりりとした佇まいの器が並ぶ。

沖縄に深く潜り、導き出した色と形。

力強く、繊細で、妥協のない美しい作品はどこか孤高、

まるで、やちむんのイチローだ。

夏の沖縄旅2016リポート、旅の後半は本島編。

石垣島から本島へ移動、那覇初日の夜は

市場の路地裏ビストロで絶品フレンチと

王朝時代の古陶を復元したやちむんの器に感動。

明けて2日目は旅のお約束聖地巡礼(笑)読谷村までドライブ。

沖縄の焼きもの工房が集まる「やちむんの里」へやってきました。

「読谷山焼」「読谷山焼北窯」の勇壮な登り窯に眺め、共同売店を覗き、

やちむんの里の奥にある一軒のギャラリーを訪ねます。

1978年、ゆいまーる(共同扶助精神)のもと、

共同体としての読谷村文化村構想に賛同し、

「やちむんの里」の礎となる「読谷山焼(ゆんたんざやき」を開いた

4人の陶芸家の一人大嶺實清さんの工房兼ギャラリーであります。

現代沖縄の陶芸界の第一人者である巨匠の作品群は

伝統的な沖縄の形をさらに洗練させたものから

イマジネーション溢れる斬新なフォルムの器など

その多彩な表情が数多くのやちむんファンを虜にしています。

沖縄に来たら、まず読谷村、

読谷村に来たら、まず大嶺工房が、旅人のお約束。

今年もやってきました、大嶺詣で(笑)。

一度、ギャラリーで幸運にもご本人にお会いすることができましたが、

白いお髭もお洒落な粋な雰囲気、カリスマ性と人懐っこさが同居した

実に魅力的なお人柄に感激したことを覚えています。

今年は残念ながらご不在、ベテランスタッフがお留守番していました。

さあ、夢のようなやちむんクルージングの始まり。

大嶺工房の多彩な作品群のなかで

特に魅かれるのが鮮やかなペルシャ釉の器たち。

もう一目惚れして以来、訪れる度にコツコツと買い集めているのですが、

これがまた超人気で、なかなか数が少なく、出会えたらラッキー。

おっ、今年も運よく何点かの新作が並んでいます。

あれも、これも素敵だけれど・・・ちょっと縁高の丸皿に決定。

それから・・・あ、この平皿も新しい感じ。

繊細なタッチで絵付けされた藍の唐草文様が印象的。

真ん中に素焼きの肌を残したフラットな形状は

どこか北欧陶器アラビアを思わせるお洒落さがあります。

これはお料理を載せると映えるでしょうねぇ。

うふふお魚のフリットとか、ちょっとした前菜とか。

決めた、この子もお家につれて帰ろうっと。

しかし、この藍の唐草文様、

ピカソのように自由奔放、大らかな大嶺實清さんの作風にしては

ずいぶん、優しく、繊細なタッチだ。素朴な疑問に

「このお皿、奥さまが絵付けされたんですよ」。

応対してくれたスタッフの女性が教えてくれました。

「昔は随分絵付けされていたんですけどね、今は少なくなって、

だから、このお皿、すごく貴重ですよ」。

夫がろくろを引き、妻が絵付けをする。

沖縄の陶房に残る素敵な夫唱婦随、

これもモノ作りのカタチだ。

大嶺實清さんは自身の創作活動とともに、

沖縄芸術大学の教授時代から今日まで多くの後進の指導に当たり、

この工房から優れた陶芸家が幾人も巣立っています。

やちむん聖地巡礼の旅、次なる目的地はその一人。

「あの、陶器工房 壹(いち)さんは、ここから遠いですか?」スタッフに聞くと

「ああ、海の方に走って下さい。眺めのいい素敵な工房ですよ」との答え。

「壹(いち)さんも、ウチで修業されてました。魅力的ですよ~」。

黙々と土と格闘、土と話し、伝統を紡ぐ作り手の系譜だ。

海の見える陶房でどんな作品、どんな人に会えるのだろう。

わくわくする。

読谷村のやちむんの里を降りて、

ナビに従ってレンタカーは美しい青い海が広がる長浜へ。

そのブルーの海を望む高台にきりりとした建物が。

余計な装飾を排したシンプルでモダンな工房兼ギャラリー。

沖縄県立大学卒業後、大嶺實清氏に師事、

98年に独立した壱岐幸二さんが営む「陶器工房 壹」であります。

なんて端正な器だろう。

ある雑誌に載っていた壱岐さんの作品にこれまた一目惚れ。

伸びのあるタッチで描かれた端正な唐草模様の器。

多くの沖縄の器が持つおおらかさ、テーゲーさとは

一線を画した端正な佇まいがなんとも印象的だったのですが、

なるほど、工房の建物からして、すでにきりりとしている。

「こんにちわ、お邪魔します」。

海の見える工房で出会ったのは、

沖縄に深く潜り、伝統を継承した先に見えた

新しく、しなやかで、美しい色とカタチ。

「壹」。

やちむん界の「壹」イチロー話はまた明日。

(写真は)

はっとするほど美しい白土に

繊細なタッチで描かれた唐草文様。

ぽってり、おおらか、テーゲーとはちょっと違う。

どこか孤高で美しい「壹」の作品。

また恋に落ちちゃった。